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もしかすると、1つの初恋。

うわ、懐かしい。蓋を開けた瞬間、思うまもなく言葉が口をついた。
その日は彼と一緒に夜ご飯を食べに出掛け、帰りがけにドラッグストアに寄った。「何か必要?」と問い掛ける彼に「マニキュア買おうと思って」と言葉を返す。
10年以上ぶりで買って帰ったマニキュアをお風呂上がりに早速開封すると、瓶先から漏れ出す特有のシンナーの香りがぶわっと過去の記憶を呼び起こした。初めてマニキュアを買ったのは私が小学5年生の時だった。

小学5年生といえば女の子が文字通り「女の子」になる時期である。
男子との違いを意識し、自分が女子であることを意識し、自分の人からの見え方を意識し、人の見え方を意識する時期。まだそれとは名前のつかないマウント合戦も始まり、人間関係の複雑さが一気に表面化してくる時期でもある。ジャニーズ、Myojo、月9、歌番組、あいのり、etc……。口を開けば出てくるのは芸能ネタか女の子同士の秘密の恋愛話かウワサ話。そんな中、思春期に差し掛かった女の子たちはオシャレにも興味を持ち始め、人気のアイドルグループやアーティストがポスター起用されたプチプラコスメにもこぞって注目していた。

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