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一寸の歯 軽んずべからず:#00054歯の話⑥

歯を見ただけでオス・メスを区別できる動物がいます。ウマもそうです。そんなウマの歯にはユニークな名前がついています。なぜウマの歯に独特な名称をつける必要があったのか?それはね・・・。(吉野賢一)

歯でオス・メスが分かる:イノシシの場合、大きな牙(犬歯)をもつ個体がオス、小さな牙しかもたない個体はメスです。ゾウの場合も、長く目立つ牙(門歯)をもつのがオス、見えないくらい小さな牙をもつのがメスです。
ではウマは?
ウマの歯式(上顎のみ)は 3・1・3・3で、上下に門歯が3本、犬歯が1本、前臼歯が3本、後臼歯が3本ずつあります。これはオスの歯式で、メスの歯式は 3・0・3・3、つまり犬歯がありません。ウマの場合は、犬歯の有無でオス・メスを区別することができるのです(小さな犬歯をもつメスもいる)。

歯の名前:哺乳類の歯には名前がついています。上述したように動物の前歯は門歯、牙は犬歯、奥歯は前臼歯と後臼歯、の名称を動物学者や獣医師が使用しています。一方、ヒトの前歯は歯、牙は犬歯、奥歯は臼歯と臼歯、の名称を歯科医療人を中心とする人たちが使用しています。動物の前歯も切歯と呼ぶことが良くありますので、以下は切歯で統一します。

ウマの歯の名前①:ヒトの切歯は上下左右に2本ずつあります。2本のうち、中央に近い方を中切歯、遠い方を側切歯と言います。ウマの切歯は上下左右に3本ずつ。中央から順に鉗歯(かんし)、中間歯、隅歯(ぐうし)という名称がついています。たぶんウマの歯にだけ使用されている名称です。

ウマの歯の名前②:ヒトも一般的な哺乳類にも、犬歯と前臼歯の間には歯がありません。しかし、ウマではこの部分にとても小さな歯が生えることがあります。この歯を「狼歯」と言います。犬歯の無いメスでよく生えるそうです。英語でもWolf toothと呼ばれますが、なぜウマなのにオオカミなのかは知りません。オオカミには狼歯は生えないと思います。ちなみにハミ(手綱と接続した馬具)をつける邪魔になる狼歯は抜かれることが多いようです。

ウマの歯の名前③:なぜウマにだけ、歯に色々名前がついているのでしょうか?それはヒトでも動物でも、歯の管理が健康管理に直結しているからです。そしてウマの歯(健康)をとっても気にする人たちがいるからです。それは競馬関係者、とくにウマの獣医さんたちです。競馬レースで1等賞をとるとがっぽり儲かるし、そもそもウマ自体がとっても高価ですよね。ちなみに狼歯は厩舎用語(競馬用語)で「ヤセバ」とも言います。なぜヤセバなのかも知りません。

01:15 歯でオス・メスが分かる
03:00 ウマの歯の名前①
04:15 ウマの歯の名前②

補足・訂正

私の妻は私に牙を剥きますが、ウマのメスには剥く牙(犬歯)が無い!!
ちょっとウマのオスが羨ましいナ~。でもウマのメスには狼歯生える。
やぱりウマでも牙(狼歯)を剥くのか、ってこれ補足・訂正?

動画クイズの答え

 YouTube動画エンディングのクイズの答えは「親知らず」「智歯」です。
「一番奥の歯」と書きましたが、正確には「前から8番目の歯」です。人によっては「8番目の歯」は生えていないこともあります。この歯が生える時期が、概ね20歳前後なため親知らず(親に知られることが無い)、あるいは智歯(智恵がつく頃の歯)と呼ばれるようです(諸説あり)。


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