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未勝利の馬でもダービーに出走できるのか ─エコロネオのBCジュベナイル挑戦から考える─


はじめに

ブリーダーズカップも近づき、徐々に遠征馬の情報も報道されるようになってきました。そんな中で興味深いニュースが。

森厩舎から、ジャスパークローネ・エコロネオの2頭が遠征するというニュースですね。まぁBCスプリントだけで過去に4頭、BCダートマイルに2頭、BCジュヴェナイルにも2頭の遠征歴のある森厩舎らしい挑戦だなぁと思いますが、興味深いのはエコロネオのBCジュヴェナイルへの出走。
先日取り違え事件も起こり話題に事欠かない本馬ですが、今度は海外遠征だそうです(おそらくジャスパークローネの帯同馬という側面が強いですが)。

そんなエコロネオ、前走は2着ではあるもののまだ未勝利馬なんですよね。森厩舎の2歳馬遠征自体は先述したように時折行われますが、未勝利馬の海外遠征は史上初なんじゃないでしょうか。
流石はヘヴィータンク事件の首謀者・森秀行調教師ですね。

一応海外では未勝利の馬でもレーティングさえあれば重賞・GⅠ出走は可能で、過去に初勝利がダービーなんて馬も存在しています。今回のBCジュヴェナイルもまぁフルゲートになるレースではないので、出走自体は確実に行えるかなと思います。

では「未勝利馬のまま海外GⅠを勝った場合どうなるの?」という疑問が浮かぶ方も多いでしょう。
今回はJRAの規則に目を通しながら、実際にこの事例を検討していきたいと思います。

未勝利馬の定義

まず覚えてほしいのが
未勝利馬=0勝の馬
ではないということです。厳密には
未勝利馬=収得賞金が0の馬≠0勝の馬
です。

どういうことかというと、JRAの収得賞金のシステムはこうなっています。

日本中央競馬会『競馬番組一般事項 』より

この表にあるように、重賞競走を除くと1着以外では収得賞金は加算されないんです。そして、この収得賞金が加算されない馬というのがよく言う「未勝利馬」なんですよね。
未勝利戦に関する規定ではこう書かれています。

未勝利競走とは、競走(地方競馬および外国の競馬の競走を含む。)に出走したことがあって、上記(3)の収得賞金に算入する額がない馬(以下「未勝利馬」という。)が出走できる競走をいう。

“競馬番組一般事項 I 定義 4.出走条件(5)未勝利競走” より

そして、上の表にもあるように、重賞で2着以上なら収得賞金を加算することができます。まだ実例自体はありませんが、同じ森厩舎のデュガなんかは2021年に小倉2歳Sに未勝利のまま出走し4着ですし、そのうち未勝利のまま「未勝利馬」ではなくなる馬も出てきそうです。


海外の重賞レースに関しても2着以上で(本賞金の半額ではありますが)収得賞金が加算されるので、今回エコロネオがBCジュヴェナイルで2着以上だった場合、「未勝利馬」ではなくなります。
というか、BCジュべナイルは2着賞金でも日本円で約5000万円程度はあるので、1勝馬どころかOP馬です。
なんならダービーの出走ボーダーが例年2000万円程度と考えると、ダービーでも出走できます。

余談ではありますが、2025年からダービーの出走の収得条件は芝レースに限られる…いわゆるサクセスブロッケンローテが出来なくなりますが、「パート1に定める外国の競馬の競争で獲得し収得賞金」に関しては対象内なので引き続き大丈夫です!馬主の皆さん、どしどしBC遠征送りましょう!

ということで、未勝利の馬でもダービーに出走できるのか
という疑問に対しては
「BCジュベナイルのような高額2歳重賞で収得賞金を加算できれば可能」
という結論になりましたが…
海外遠征だけでなく国内の事例も考えてみましょう。

ロイスアンドロイスの話

最近ウマ娘化もされたと話題の伝説的ブロンズコレクター、ロイスアンドロイスですね。競争成績を見るとわかるように、彼は未勝利で青葉賞に挑戦しています。
先ほど少し触れましたが、未勝利馬は2歳重賞、クラシックトライアル競争であれば出走可能です。デュガの小倉2歳Sやヘヴィータンクの弥生賞が過去の例として知られていますね。既にブロコレ街道を突き進んでいたロイスアンドロイスも同様に青葉賞に出走しました。
しかし、当時の報道やwikiを見ると「2着でも優先出走権は得られるが未勝利ではダービーには出られない。1着でないといけない」といった風な書かれ方がされています。確かに、ダービーの出走条件には未勝利馬は出走できないとあります。
しかし、これまでこの記事を読んだ方なら疑問に思われるのではないでしょうか。

あれ?青葉賞ってGⅡだし、2着でも賞金加算されて未勝利脱出扱いにならない?

答えはNOです。なぜなら青葉賞のGⅡ格上げは2001年から。当時はOP戦だったので、1着以外では「未勝利馬」扱いだったわけですね。

ということで、現代であればロイスアンドロイスも2着以上でダービー出走がかなう訳です。(結局3着でしたが...)

未勝利の馬でもダービーに出走できるのか

この問いに対する答えは

・海外なり国内の重賞で2着に入り続け、賞金ボーダーを満たす
・青葉賞2着で収得賞金と優先出走権を獲得する

この2つになります。
とはいえ例年のダービーの出走ボーダーを考えると、弥生賞やその他クラシックトライアルレースの2着賞金では厳しい感じがしますね。朝日杯やホープフル2着でもギリギリだと思います。(皐月賞に出て優先出走権獲得すればいいだけですが)

一撃で、なおかつ未勝利で、となると
2着賞金が4000万円以上はある

・BCジュベナイル
・BCジュベナイルフィリーズ

この2つくらいでしょうね。サウジダービーも2着賞金は$30万程度ありますが、サウジがパートⅡ国なので、おそらく2025年度からはダービー出走の際の収得賞金には加算されないと思います。
あと世界最高額の2歳レースであるオーストラリアのゴールデンスリッパーなんかもありますが、これはそもそも開催が4月とかなので北半球生産馬ではほぼ不可能ですね。門別ですら新馬戦始まってませんよ。

なにはともあれ、万が一このnoteをご覧になった頭のおかしい馬主の方がいらっしゃいましたら、BCジュベナイル→日本ダービーのローテーションを御一考下さい。
そしてエコロネオに関してはここで好走して、全日本2歳優駿にレーティングを還元するなり、UAEやサウジへ転戦するなりといった活躍を期待したいですね。


余談

今回細かいところを調べるため、JRAの規則を詳しく読んでいたんですが、こんな項目がありました。

アラブ系馬に関する規則、まだあるんですね。
というか極めて限られてはいますが、一応中央のレース出られるんですね...

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