ひとり遊びの予兆


「すみません、立ち読みはご遠慮ください。」
ブレザーの制服に赤のリュックを背負った俺はついにこの時が来たかと素直に終わりを受け入れゲオの漫画レンタルコーナーを後にした。高校時代は部活もやらずバイトも出来ず学校終わりはほぼ毎日漫画を立ち読みして相当な量の漫画を読んだ。迷惑極まりない。刃牙シリーズ、GANTZ、etc...確か注意された時は空手小公子 小日向海流を読んでいた時だと思う。恐らくこれが自覚した上での最初のひとり遊びだった。友達は割といたけれど4:6くらいの比率でひとりの時間の方が長かった気がする。


 高校に行けば天才的にスポーツが上手い奴がいたり、こいつこの世で一番かっこいいんじゃないかと思うほどのイケメンがいたり、どんだけ度胸あんだよって同い年の不良が街にいたりする。その頃は勉強など興味は無く、話は飛ぶが先日FMの生放送でパーソナリティの方に話の流れで「勉強は出来ましたか?」と聞かれ、「それが、結構エリートでしたねぇ」と答えたところオカンから連絡が届いた。オカンは雑誌、ラジオ、その他俺の発言のほとんどを聞いてくれていて俺が適当に答えた話などには事細かに連絡をしてくる。正直俺は昔の自分のことを人に聞かせたりする事にあまり興味が無いから面白ければ良いと思っている。ジョークでエリートぶってみようと思ったところオカンから本当のことを言いなさいとお叱りが来た。ああここが話のオチだったんだなと思った。次聞かれたら怒られたことまでを話そうと思う。


 話を戻そう。高校が俺の取捨選択の時期だ。残ったのは漫画と音楽だった。中学まではいわゆるクラスの一軍にいたけれどここで無所属になったなって気がする。ただ色んな人と満遍なく仲良くなれてはいたからそれはそれで楽しかった。親友も出来るのだがそいつ話は次の機会にしようと思う。

 ひとり遊びに時間を使うのは親父の影響が大きいなと最近気が付いた。時間を使うことだけでは無く内容もそうで遺伝とは恐ろしくも偉大で不思議だと思わされる。SF映画でよく見るあの螺旋状のDNAの中に「あなたは歴史とDIYと植物を育てることが好きですよ」と書かれていて遅かれ早かれ確実にその効果が発揮されるのだろう。実際にあったことを元に作られた映画や歴史物のドラマ、自分で作って自分でニヤっと出来るような事、自分の庭を持つ事、親父が息子に自慢するでも無くただただ興じていた趣味なのにすっかり今は俺の趣味となっている。


 ひとり遊びはひとりで充分楽しいけど仲間が出来たらみんな遊びになるとヒロミさんが言っていた。本当にその通りだと思う。実家に帰れば親父が作った家具や庭を見て話が出来る。そして音楽なんてもっと分かりやすい。作る側が作るまではひとり遊びのようなものでライブではみんな遊びになる。汗まみれになって雨のフェスじゃ泥んこになって時には一生酒を酌み交わす友人も出来たりして、凄すぎる。何なんだ一体。そして広がるからこそ近くにいる人との約束は守らなければ全てがバラバラになってしまうのだとも思う。これはまるでDNAが連なっているかの如く、現象という形の生き物だ。

、、、考え過ぎた。が、これを読み返してニヤっとする。まぁそういう事だ。