少年野球をやっていたが野球少年では無かった現野球好き青年

俺は最近になってから野球が好きになった。小学は地元の少年野球チームに入り中学は野球部に入っていたけれど、その頃は他人のプレーに興味など全く湧かなかったし努力が長続きしたことなど一度もなかった。どうすれば鋭い打球になるのか、どうすれば速く正確な球が投げれるのか当時ちゃんと考えたことも顧問の先生に聞いたこともなかった。

 中学の顧問の先生はかなり変わった人で中間テストや期末テスト中は必ずと言っていいほど教卓の横で筋トレをしている。そして一息ついた後に仁王立ちで両手を腰に当ててオナラをする。

「すまん、屁が出た」

と堂々と一言。生徒指導的な位置にいて怒鳴り声をよく聞いていたし俺自身もよく怒鳴られていたため笑おうにも笑えなかった。笑いたくなかったという方が正しいか。笑って許されるやつなどお気に入りのヤツだけだろうと意固地になっている俺だった。色んな意味で変な空気にした仁王立ちの本人は繊細さのかけらもなくまた筋トレを始めるのであった。

 先生はかなり根性論の人だ。とにかく素振り、とにかく走れ、とにかく頑張れ。どんな風にやればいいですか?など学少年は恐くて言えなかった。これだ、俺が野球を好きになれなかった理由は。ゴール無き努力はただ息を吸って吐いてぼーっとしているかの如く退屈なのだ。方や今の俺は努力では無く研究や追求が面白いと思えている。く〜今の俺であの頃に戻ってそうしたい!しかもハイキューを読んだ今の俺のチームプレイへのポテンシャルはかなり高いぞ。ナイスキー!

 あの頃バッティングはヘッドを上から、寝かせるな!ピッチングは上から振り下ろせ!肩を壊すぞ!フィールディングは正面で取れ!と言われていた。軟式と硬式での多少の違いはあるがその大体の理論が昨今覆りつつある。本当に面白い。特にバッティングは衝撃だった。ヘッドは重さに任せて寝かせて良い、ボールの軌道上に水平にバットを出せとあの頃の教えと180度違うホーライスイングという打法をyoutubeで知った。俺はその打法を知って次の日すぐにバッティングセンターに走った。自分のフォームを携帯で録画して、ひとりでブツクサ言いながらフォームを直す様子はかなりキモかっただろう。

 バッティングセンターに通って3回目くらい、明らかに打球の鋭さが変わっているのが分かった。これだよこれ。俺が好きになった野球だよ。ちゃんと理論を教わったり研究して直せばたったの3回で目に見える効果は表れるのだ。そしてその日の最後の打席、ホームランの的にギュインと刺さるそれをお見舞いして「ナイスバッティンっ」とひとり小声でつぶやく。(俺の携帯にこの様子がバッチリ収められている) こういう事をあの頃に走・攻・守それぞれでやっていれば中学三年間でどれほど上手くなっていたことか。この話を兄貴にしたら兄貴も同じような事を思っていて、兄貴は高校で野球部の寮に入っており体をデカくするためにとにかく米を沢山食わされたと言っていた。それが今では寮でのご飯が改善されてより効率良く体をデカくするためにバランスの考えられたものになったらしい。

と、まぁ色々と考えていると後悔も余計に膨らむが、先日ジブリの宮崎駿監督へのインタビューで鬼滅の刃の映画がジブリの興行収入をぶち抜いたけれどどうですか?なんて記事を読んだ。

「そんなことは、どうでもいいよ。世界はいつもインフレになっているんですから。(それよりも)ゴミを拾わないと……」

と宮崎駿監督。痛感。お金の話に限った事だけでなく技術もそして俺自身も昔より良くなっていく事は当たり前なことなのだ。過去がどんな状況であっても、(それよりも)バッティングセンターに行かないと。