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【高校物理】磁気分野⑩「交流回路」    <大幅増補改訂>

「交流回路」は「磁気」の最後のテーマとなることが多く,
学校の授業でじっくりと取り組むことが少ないと思われます
なので,全国的に苦手としている者が多い。

また,教科書や参考書では,
電流と電圧の位相差について「暗記」させようとする記述が見られます
「物理」と「暗記」というのは最も縁遠い存在だと思うのですが,
なぜかこの「交流回路」では "身近” なのです。

私は,「交流回路」であっても,直流回路と同じく,
キルヒホッフの法則で解けることを示したいと考え,
Twitter でさまざまな「交流回路」の入試問題の解説を行いました。
過去30年分の入試問題を調べてみて,自分で解いた結果,結論は
「交流回路の問題も,やはりキルヒホッフの法則で解ける」
でした。
位相差を暗記していなければならない問題はありません。


【交流回路1】(講義1・例題) 交流発電機
 関西学院大学(1995年) 過去問解説

交流発電機の仕組みを押さえておきましょう。
ファラデーの電磁誘導の法則を正確に使いこなせれば,
符号つきで誘導起電力を求めることができます。


【交流回路2】(練習問題1) 交流発電機
 東京医科歯科大学(2020年) 過去問解説

【交流回路1】の内容をさらに東京医科歯科大学の問題で確認しよう。
誘導がしっかりしているので,取り組みやすい問題だと思います。
また,各自で考察すべきことも残してあり,教育的でもあります。


【交流回路3】(講義2・例題) 交流の基本
 名古屋大学(1997年) 過去問解説<動画>

交流回路で,各素子に流れる電流を求めましょう。
位相の遅れ・進みなどを覚える必要がないことをこの問題で示します。
解説は,下の動画で観てください。追加情報もあります!


【交流回路4】(練習問題2) 交流回路
 関西大学(2021年) 過去問解説

交流回路の問題は増加傾向にあると感じます。
関西大学でこのレベルの出題があったことは,
関西圏の私立大学の出題内容に影響を与えるのではないか,
と個人的には考えています。


【交流回路5】(練習問題) 交流回路
 京都工芸繊維大学(2020年) 過去問解説

私の解法では,結局,
キルヒホッフ第2法則 → 三角関数の合成 → 位相差 (or インピーダンス)
という流れの繰り返し 
なので,難しいとは感じないのですが,
世に出回っている問題集や大学入試問題集などでは「難しい」という
評価が与えられている問題です。


【交流回路6】(練習問題4) 交流回路
 北里大学医学部(2019年)<改題> 過去問解説

基本事項を確認するための問題です。
電位差の与え方がいつもと違いますが対応できるはずです
微積分で解く方法には「慣れ」が必要です。
一度この解法になれてしまえば,
暗記することがバカらしくなってきます。


【交流回路7】(練習問題5) 実効値
 東京医科大学(2012年) 過去問解説<動画>

私立医学部の交流問題は数値計算をさせるものが多く,
また実効値で答えさせます。

この問題で実効値の扱い方に慣れてください。
一般的に,電流も電圧も
実効値同士ではキルヒホッフの法則を立てることはできません。


【交流回路8】(練習問題6) 直列共振
 東京医科歯科大学(2012年) 過去問解説

「直列共振」という物理用語は知っていますか?
どういう状況が「直列共振」なのかは,
通常,誘導がかかっているのであまり心配する必要はありませんよ。

< 独り言 >
入試問題では「コンデンサー」と書かれることがほとんどです。
私は「コンデンサ」という言い方が好きなので,
すべて書き換えています。
しかし,東京医科歯科大学は「コンデンサ」なんです。
個人的にはそこに好感をもっています(笑)
(ただし,「スピーカ」は「スピーカー」でした。残念…)


【交流回路9】(練習問題7) 位相の進み・遅れ
 広島大学(2017年) 過去問解説

「電流(電圧)に対する電圧(電流)の位相の進み・遅れ」を暗記しなくても
入試問題は解けます。三角関数の合成ができれば大丈夫!
問題文に電流(電圧)の時間変化が与えられていなかったら?

「位相のずれ」だけが重要なので,
電流を適当な三角関数( sin か cos )でおいてみればいいのです。
その後の解法の流れはワンパターンです。
→ そこから,コンデンサやコイルの両端の電圧を求める
→ キルヒホッフ第2法則
→ 電源電圧を三角関数の合成で求める
→ インピーダンスや位相差を求める


【交流回路10】(練習問題8) 混合型 その1 

交流回路を分類すると,
①「直列型」:すべての回路素子が直列接続
②「並列型」:すべての回路素子が並列接続
「混合型」:2つが並列,残りの1つがそれに直列に接続
の3パターンがあります。

特に最後の③は,応用問題がつくりやすく,
コイルとコンデンサの並列接続されたものに,
抵抗が直列につながれた形
がもっともよく出題されます。


【交流回路11】(練習問題9) 混合型 その2 

混合型の問題で頻繁に出題されるのは,
この問題の問1です。
抵抗に流れる電流を常に 0 とするための角周波数 ω の条件

これは,直感的には,
「抵抗の両端の電位差が常に 0 」です。
→ 「コンデンサ(コイル)の右側に対する左側の電位 が,
  電源の右側に対する左側の電位 と常に等しい」
すなわち,𝐋𝐂 振動回路の角周波数と電源の角周波数が等しく,
電源電圧の振幅と 𝐋𝐂 振動回路のコイル(コンデンサ)電圧の振幅が等しい
という条件になります。


【交流回路12】(練習問題10)
 交流ホイートストンブリッジ
 九州大学(2000年) 過去問解説 <動画>

<この題名の意味>
インピーダンスを複素数表示すると
(4)の問題が「ホイートストンブリッジの平衡条件」から導かれるのです。
この回路は,自己インダクタンス 𝑳 の測定に用いられます
その利点は下の解説動画で述べています。


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