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【高校物理】磁気分野⑦「電磁誘導」            <大幅増補改訂>

磁気分野で一番重要な現象「電磁誘導」
入試問題では最もよく取り上げられるテーマです。
「電磁誘導」とは,導体棒やコイルに起電力が発生する現象。
この講義で,発電の原理を学びましょう!

基本的には,私がTwitter でつぶやいたものをまとめました
(たまにYouTubeの動画もあります)。
Twitter で1ページずつツイートを見ていってもいいですが,
その下にPDFファイルを置き,
問題と解説をまとめて見ることもできるようにもしておきました。


【電磁誘導1】
(講義1)誘導起電力の導出
(講義2)電磁誘導とエネルギーの変換

●●●(講義1)●●●
エネルギー的な考察も含めて,必要な事柄を網羅していきます。
添付ファイルの問題を解いて,講義動画を観てください
この問題を解けば,
誘導起電力の大きさをエネルギー的に導出できます。
動画内では,異なる視点で誘導起電力の大きさを導出しています

●●●(講義2)●●●
電磁誘導の本質である「エネルギーの変換」を押さえておきましょう!
磁気・電気・力学が融合する瞬間をとらえてください
(感動したとき用の)ハンカチの用意はいいですか?(笑)


「 𝒗𝑩𝒍 公式」について

電磁誘導で「誘導起電力を求めよ」とあれば,
まずは下の (【電磁誘導1】で導いた)「 
𝒗𝑩𝒍 公式」
で解くことを勧めます

30 電磁誘導7(練習問題6)応用問題 図3

 棒内部の正電荷が受けるローレンツ力の向きが電池の向き
(起電力の向き=電流を流そうとする向き)

この公式で対応できない問題は次の2つ。
・ ベータトロンの原理
・ 回路を貫く磁場が変動する問題

注: 「回転する導体棒問題」は何とか対応できます。
   これについては後ほど【電磁誘導16】で扱います。

「 𝒗𝑩𝒍 公式」で対応できない問題は,
「ファラデーの(電磁誘導)の法則」で解きます。
(【電磁誘導8】以降の問題で扱います!)


【電磁誘導2】
(練習問題1)
   一様磁場中,水平面斜面上を動く導体棒

マーク式問題です。
典型問題ですが,
最後の問5をスラスラ解ける受験生はほとんどいないと思います。
「誘導起電力の仕事率」と「アンペール力(電磁力)の仕事率」が
相殺することから,
電磁誘導の本質は「磁場を介したエネルギーの変換である」
ということができるのですが,今回の問題は,
相殺する事実をうまく利用すると計算が楽になります(問5)。
装置全体で考えると,
磁場自体はエネルギーを生んだり消費したりはせず,
変換を媒介する役割
を持ちます。
即ち,化学反応における「触媒」みたいなもの
と考えていいでしょう。


【電磁誘導3】
(練習問題2)
   一様磁場中,波形レール上を動く導体棒
 筑波大学(2014年) 過去問解説

レールの一方が波形でしかもサインカーブなら,
誘導起電力はどんな形で表されるのか,
「瞬間値(瞬時値)」という言葉に惑わされないように。
回路において,君たちが立てられる式は,
キルヒホッフの法則,一択です

「位相のずれ」や「リアクタンス」など暗記する必要はありません。
ただし,電流は定義どおりに求められるようになってください


【電磁誘導4】
(練習問題3)
   一様磁場中,導体棒2本 その1
 神戸大学(2014年) 過去問解説

最近よく見かけるようになった問題です。
導体棒が2本になっただけで「もう無理!」と言ってしまう者がいます。
イヤ,あきらめたらアカンで。一つひとつ考えていけば大丈夫!
小問は,その直前の小問がヒントになっている可能性があります
一つの物体にだけ注目するのではなく,系(システム)で考えます。
部分 → 全体 へ視点を移動させるのです


【電磁誘導5】
(練習問題4)
   一様磁場中,導体棒2本 その2

 結局は,
キルヒホッフ第2法則と運動方程式(力のつり合い)
を立てているだけ

ツイートの中でも述べていますが,
導体棒のどちらの端が高電位かを調べる方法を載せておきます。
これは本当に受験生がよく引っかかるところです。

<導体棒 cd のどちらの端が高電位かを調べる方法>
1.導体棒 cd のみを考える(他から切り離す)
2.導体棒 cd を動かす
3.端cとdを導線でつないだとき,「導線」を誘導電流が流れる向きを確認
4.導線を c→d の向きに流れたならば,c が高電位(正極側)である


【電磁誘導6】
(練習問題5)
   一様磁場中,導体棒2本 その3
 東京工業大学(2013年) 過去問解説

「導体棒2本問題」の総仕上げ。
【電磁誘導4】の神戸大学の問題に似ていますが,もう少し


「エネルギー収支の式(完全版)」講義動画

電磁誘導の問題で頻出の「エネルギー収支の式」を導いておきましょう。
ここ20年分の大学入試問題から電磁誘導の問題だけを抜粋して
眺めてみると,
最後にエネルギー収支を考えさせる問題がほとんどでした。
本来はコイルについて学んだ後に考えるべき式なのですが,
ここで導出しておきます。
コイルをまだ習っていない人は,
コイル(素子)の部分を無視しても構いません。
最後まで観てください。
最後に導出された「エネルギー収支の式(完全版)」は覚えてください


【電磁誘導7】<解説動画あり>
(チャレンジ問題)
   一様磁場中,水平面上を動く導体棒
 早稲田大学理工学部(2010年) 過去問解説

早稲田大学の物理は,60分で3問,
すなわち解く時間は1問あたり20分しかありません。
この問題を20分で解ける受験生はいないでしょう。
自分が解ける問題を瞬時に判断し,
制限時間内に解くのが難しいなら次の問題に移る必要があります。
すなわち,満点は目指してはいけないのです。
物理が得意な受験生は,捨てた問題に後ろ髪を引かれながら,
次の問題を解く辛さを味わうのです。
特に力学が得意な生徒は,
「解けるはず!」と力学問題に時間をかけすぎる傾向があります。
要注意です。

受験生にはもう少しゆったりと
(時間をかけて)解かせてあげればいいのに,
と早稲田大学の問題を見るたび,私は毎年思ってしまいます。

解説動画もつくってみました!


【電磁誘導8】
(講義3・例題)
  「𝒗𝑩𝒍 公式」とファラデーの法則
 筑波大学(1986年) 過去問解説

●●●(講義3)●●●
まずは講義動画を観てください。
「ファラデーの電磁誘導の法則」をまともに使える受験生が
ほとんどいないという事実に私は危機感を覚えています

問題集を見ても,誘導起電力の大きさを求めるときには,
ー𝒅𝜱/𝒅𝒕  に絶対値をつけて,
起電力の向きは「レンツの法則」で求めているものがあります。
本来,「ファラデーの電磁誘導の法則」は,
誘導起電力の大きさと向きが機械的に求められるのですが,
そのことを強調している本が少ないのです。

具体的な入試問題(筑波大学の問題)で,
同じ問題を「 𝒗𝑩𝒍 公式」と「ファラデーの電磁誘導の法則」
の2つの方法を使って解いてみましょう


【電磁誘導9】
(練習問題6)
   左右で異なる磁場中を動くコイル
 共通一次試験(1989年) 過去問解説

2021年共通テストでは,
一次試験としては難しめの電磁誘導の問題が出題されました。
センター試験や共通一次をさかのぼってみると,
こんな問題を見つけました。
この年(1989年)は物理の全国平均が化学に比べて低く,
得点調整が行われたのですが,
おそらくこの問題の得点率も低かったと思います
出題者の頭の中には「ファラデーの電磁誘導の法則」があったはずです。
問1(1)→(2)の流れを見れば明らかやね。
ですが,
「ファラデーの電磁誘導の法則」は符号ミスをする可能性がある
ので,私はまず「 𝒗𝑩𝒍 公式」を使用することを勧めます。


【電磁誘導10】
(練習問題7)
   一様でない磁場中を落下するコイル
 東京工業大学(2018年) 過去問解説

「エネルギー収支」は電磁誘導の問題では避けては通れないものです。
通常は最後の問題でエネルギー的な議論となるのですが,
この東工大の問題はいきなり1問目からエネルギー収支を考えさせます。
いや,
常にエネルギーのことを頭の片隅に置きながら
問題を解かなければならない

と言った方がいいかもしれません。
【電磁誘導6】にもはっておきましたが,
下は「エネルギー収支の式(完全版)」の講義動画のリンクです。
是非!


【電磁誘導11】
(練習問題8)導体円筒中を落下する磁石
 東京大学(2007年) 過去問解説

この問題,いや,この実験が好きなんですよね。
共通テストの試行テストでも取り上げられていました。
この実験は毎年生徒に見せています。
最後に「IV マナブ問題」も追加しておきました
選択問題ですが,理由も答えよう(力学との融合問題。
私がよく使う手です)。
東京大学にはここまで出題してほしかった。

【補足】 ローレンツ力でレンツの法則を説明してみました

Ⅱ(1)は様々な考え方があります。主な解答を2つ示しておきます。
ポイントは,
磁束が変化している時間に注目するか,
磁束が変化しているリングの数に注目するか
,です。
Ⅱ(2)は,「エネルギー収支」。
今回も「重力による位置エネルギーの変化量」ではなく,
「重力のする仕事」で考えました。


【電磁誘導12】
(練習問題9)誘導電流(うず電流)
   関西大学(1989年) 過去問解説

レンツの法則を使う問題です。
私は,これから入試問題で,
このタイプの問題(「簡単にできる実験」の考察)
が増えていくと予想しています。
ただし,定性的に答える問題は基本的に難しいです。
この問題のポイントは「作用・反作用の関係」であること
も強調しておきます。

(6)では磁石の真下だけではなく,
その近辺の円板に生じた磁場を考えています。
「磁石の受ける力」は,間接的に磁石を回している手に感じられます。

レンツの法則の確認実験

「レンツの法則」の実験をいくつか。(2分程度の短い動画です)
さまざまな素材(状態)の板で傾斜をつくって
ネオジム磁石を滑らせるだけ
の単純な実験ですが,
それぞれの結果の説明ができますか?
元ネタはもちろん関西大学(1989年)です。

実験1 アルミニウム板にうず電流(誘導電流)が流れて…
実験2 アルミニウムと銅の電気伝導率(抵抗率)を見ると…
実験3 うず電流の半径が小さくなると…

< オマケ実験 > 
「U形磁石に銅製円板」はよくある組み合わせ。
今回は「ネオジム磁石にアルミニウム製のフタ」
フタに触れないように手を回転させます。
しかし,フタを回している感触があるんです!
「作用反作用の法則」なんやねぇ。


【電磁誘導13】
(講義4・例題)ベータトロン条件
 横浜市立大学(1991年) 過去問解説

●●●(講義4)●●●
ベータトロン」です。これは「 𝒗𝑩𝒍 公式」が使えない問題。
生徒が苦手としている問題ですが,
ワンパターンなので押さえるべき箇所は限られています
(2)(b)の電場の強さを求めさせる問題が要注意です。
これを「電位の傾き」で求めている問題集が多いのですが,
それは誤りです。
詳しくはツイート(もしくはPDFファイル)を見てください。


【電磁誘導14】
(練習問題10)電気量測定器
 京都産業大学(1987年)<改題> 過去問解説

「電気量測定器」の問題。
いきなり初めて聞く装置が出てきます
それだけでビビってしまう人がいます。
それを出題者はネラッています。
しかし,
「電磁誘導」の講義を読み(観て),例題・練習問題を解いて,
この問題までたどり着いた人は分かっていますね。
電気回路において、君たちができることは1つしかありません


【電磁誘導15】
(練習問題11)ソレノイドと輪
 京都産業大学(1989年)<改題> 過去問解説

またまた京都産業大学の問題です。
相互誘導と超伝導体をテーマにしています。
途中から「考えさせる問題」に代わります。
条件をよく読んでください。
今回は解答欄(文字数制限)が示されていないので,
「どこまで答えるか」を考えながら,解いてみてください。
最後まで解ききることができますか?


【電磁誘導16】
(講義5・例題)一様磁場中で回転する導体棒

●●●(講義5)●●●
一様磁場中で回転する導体棒に生じる誘導起電力です。
「vBl公式」でもいいのですが,
それを使うには少し工夫が必要
です(別法として示しておきました)。
例題では,回転する導体棒の数が増えます。
実際に電流が流れると,
角速度を一定に保つため,力のモーメントを与え続ける必要があります
導体棒にはたらくアンペール力,
そしてエネルギー収支の両面で解いてみてください。


【電磁誘導17】
(練習問題12)
   一様磁場中で回転するコの字型導線
 東京工業大学(2016年) 過去問解説

一様磁場中で回転する導体棒(導線)の問題を1問解きましょう。
回転なので,力のモーメントと絡めてくる問題が多いです。
この東京工業大学の問題もそのひとつ。
ただし,エネルギー収支で解くことができる問題もあります。


【電磁誘導18】
(練習問題13)
   一様磁場中で回転する1巻き半コイル
 慶應義塾大学 過去問解説

私の好きな問題です。
コイルにはたらく力(アンペール力)をどのように求めるか
がポイントになってきます。
ビオ・サヴァールの法則から「直線電流のつくる磁場」を
導出したときに登場した「電流素片」(電流の微小部分)で考えます。
この問題を初見で解ける生徒は,私はちょっと尊敬してしまいます。


【電磁誘導19】
(練習問題14)
   コンデンサ(コイル)と電磁誘導
 東京電機大学(1995年) 過去問解説

誘導起電力を生じている金属棒に,コンデンサそしてコイルをつないだら金属棒はどんな運動をするでしょうか?
コンデンサのとき,金属棒の運動方程式を立てると…面白い現象が!


【電磁誘導20】
(練習問題15)RC回路
 東北大学(2002年) 過去問解説

「ファラデー(の電磁誘導)の法則」
を正確に(定義通り)使いこなせるかどうかを測る問題として,
私は利用しています。
レンツの法則で逃げてはいけません。
ファラデーの法則は誘導起電力の向きも教えてくれるのです
問3と問5を本気で解いてみてください!


【電磁誘導21】
(練習問題16)問題のある問題
 大阪大学(2014年) 過去問解説

電磁誘導の典型問題ですが
途中で「あれ?!」と手が止まると思います。
「そのとき君ならどうするか?」という問題です。
今回は考えられうる別解をたくさん用意しました
どの解法がしっくりくるか,検討してみてください。
ただし,このような問題は実際に入試問題として出題してほしくない
というのが,解いてみての(個人的な)感想です。


以上です。また面白い問題を見つければ追加していきます!

マナブ










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