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【病理学】細網線維の染色法について

 このアカウントでは二級病理検査士や臨床検査技師の資格取得を目標にされている方に向けて、ゴロや表など交えながらわかりやすさを意識して情報を発信しています。

 今まで膠原線維、弾性線維と記事にしてきましたが、今日は細網線維についてまとめていこうと思います。

 【細網線維とは】

 網目状または格子状の線維で、骨髄、リンパ節、扁桃、肝臓、脾臓などに存在しています。肝臓の類洞やリンパ洞に食作用を持つ細胞や抗体を作る細胞が含まれ生体防御に関わっています。

 細網線維は好銀線維とも呼ばれていて、鍍銀染色で染め出します。
組織病理学的には組織の構築を見ることを目的に染色を行います。

 【細網線維のポイント】
 ▶網目状、格子状の好銀線維
 ▶骨髄、リンパ節、扁桃、肝臓、脾臓などにみられる
 ▶生体防御に関わる

 支持組織の線維は物理的な性質や染色性の違いから、
膠原線維弾性線維細網(好銀)線維の3つに分けられています。
 
以前の記事で膠原線維と弾性線維についてもまとめていますので参照ください。


 【細網線維の染色法】

 ▶渡辺の鍍銀染色

 細網線維を染める染色法は渡辺の鍍銀染色が代表的です。どのような工程で染色するのか詳しく解説していきます。(銀を使ったその他染色法は別記事でまとめます)

 【渡辺の鍍銀法の原理】

 ▶酸化:過マンガン酸カリウム
 ▶還元:2%シュウ酸
 ▶増感:2%鉄ミョウバン
 ▶銀アンモニア錯体との反応:アンモニア銀液
 ▶還元:10%ホルマリン・鉄ミョウバン
 ▶調色:0.2%塩化金
 ▶定着:2%チオ硫酸ナトリウム

 渡辺の鍍銀染色は大きく7つの工程に分かれています。
各工程を順に解説していきます。

 【酸化について】
 過マンガン酸カリウムで酸化します。
酸化することで細網線維を膨化させつつ、細網線維からアルデヒドを生じさせる効果があります。

 【還元について】
 2%シュウ酸で還元します。切片が酸化した状態を維持しつつ、付着した二酸化マンガンを還元して洗い流す目的で使用します。

 【増感について】
 2%鉄ミョウバンで増感(媒染)します。組織内蛋白質のアミノ基と銀イオンが結合しやすくなる(化学的親和性)働きがあります。

 【銀アンモニア錯体との反応について】
 アンモニア銀液で反応させます。組織内蛋白のアミノ基とアンモニア錯体の銀イオンが交換反応で組織蛋白と結合します。
 最初の酸化過程で生じたアルデヒドによって銀イオンが還元されて金属銀の微粒子が出来ます。

 【還元について】
 10%ホルマリン・鉄ミョウバンで再度還元します。組織蛋白と結合した銀イオンが金属銀として沈着します。また金属銀の微粒子を中心としてさらに金属銀が沈着していきます。

 【調色について】
 0.2%塩化金で調色します。銀粒子に金を沈着させる事で色調を整えて観察しやすくする働きがあります。

 【定着について】
 2%チオ硫酸ナトリウムで余分な銀イオンを落とします。
また、組織中の銀イオンが光で還元されることで標本が変色するのを防ぐ働きがあります。

 【渡辺の鍍銀法の染色態度】

 ▶細網線維:黒色
 ▶膠原線維:赤紫色
 ▶細胞の核:黒~えんじ色
 ▶細胞質:薄い紫色

 今回は細網線維の染色法についてまとめました。
二級病理検査士の試験では鍍銀法の原理を理解して使用液についても覚えておかないといけないので、自分の勉強がてら記事を作成してみました。
文章ばかりで申し訳ないです(汗)

 国家試験では最低限、渡辺の鍍銀法ではアンモニア銀液が使われていることと酸化処理に過マンガン酸カリウムを用いることを覚えておきましょう。


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