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【病理学】パラフィン包埋について

 このアカウントでは二級病理検査士や臨床検査技師の資格取得を目標にされている方に向けて、ゴロや表など交えながらわかりやすさを意識して情報を発信しています。

 病理検査室では大まかに組織の切り出し、組織のパラフィン浸透、包埋、薄切、染色、スライド標本の鏡検といった流れで標本作製をしています。
 
 近年の国家試験でパラフィンや包埋についての問題を見かけるなと思ったので、今回はパラフィンの性質や包埋についてまとめていきたいと思います。

 【パラフィンとは】

 ▶水に溶けず、水をはじく性質を持つ
 ▶融点の違いで軟パラフィンと硬パラフィンに分類
 ▶切片からの除去が有機溶剤などで簡単にできる
 ▶染色に影響がなく様々な染色法に使える
 ▶パラフィンブロックの保存が簡単でほぼ永久的に保存できる

 パラフィンは非親水性非水溶性です。水をはじくので、パラフィンに水が混じると水は気泡のような状態になります。
 
 パラフィンは融点の違いで軟パラフィン硬パラフィンに分けられます。一般的に硬パラフィンがよく使われています。
 【硬パラフィンと軟パラフィンの融点】
 ▶軟パラフィン : 融点45~52℃
 ▶硬パラフィン : 融点54~58℃

 【ゴロ:硬パラフィンの融点】
硬くてコシのあるごはん
硬くて(硬パラフィン)コシ(54℃)のあるごはん(58℃)
 
 硬パラのゴロを覚えておけば、融点54℃を入れ替えて45℃~軟パラフィンって覚えておくだけでいいので簡単だと思います。

 また、一度パラフィンブロックにしてしまえば半永久的に保管できますし、何年後かに必要であれば保管ブロックからスライド標本を作製することも可能です。このように利点が多いのでパラフィンは広く一般的に使われています。

パラフィン包埋剤まとめ


 【包埋剤の種類】 

 パラフィン以外にも包埋剤はありますので、まとめておきます。

 【包埋剤:非親水性・非水溶性】
 ▶パラフィン
 ▶セロイジン
 ▶エポキシ樹脂
 ▶メタクリル樹脂

 エポキシ樹脂は電子顕微鏡標本作製時に用いられていますね。

 【包埋剤:親水性・水溶性】
 ▶OCTコンパウンド
 ▶カーボワックス
 ▶ゼラチン

 OCTコンパウンドは凍結切片作製時に一般的に使われています。

 【パラフィン包埋ブロック作製の流れ】

 ▶組織の固定
 ▶脱水
 ▶脱水剤の除去
 ▶パラフィンの浸透
 ▶パラフィンブロック作製

 流れを簡単に説明します。
 ホルマリンなどで固定された組織には水分が残っています。水分があると水に溶けないパラフィンは組織に染み込まないので、親水性のあるエタノールで組織の水分を除去します。
 アルコール脱水後はエタノールが残っているので、エタノールを除去するためにクロロホルムキシレンといった有機溶剤を使います。
 エタノールが除去されればパラフィンを浸透させられるので、組織片を溶けているパラフィンに数時間浸けます。

 検査室では一連の流れをティシュー・テックVIPという機械で処理してもらい、処理後パラフィンブロック作製を行っています。


 【補足:現場でパラフィンを使う理由】

 検査室に送られてくる医療施設からの検体は、そのままの状態で薄く切ることが難しいからです。
 
 病理検体は数ミリ程度の小さい検体から、内臓や乳房を摘出した大型検体も送られてきます。
 薄く切る際にはそれに耐えうる適当な硬さがあり、適当な大きさがあり、どこで切っても硬さと柔らかさにムラが少ない状態でないと綺麗に切る事が出来ません。
パラフィンを始めとした包埋剤は硬さや大きさなどの問題を解決して適切な標本作製が出来るようにするための必須アイテムです。
特にパラフィンは扱いやすさの面も含めて検査室では重宝していることから広く使用されています。 


 今回はパラフィンの性質や包埋剤についてまとめました。私の勤めている検査室の話も交えながらでしたが、いかがでしたか?
 
 少しでも参考になれば幸いです。

 【練習問題】

Q1.水に溶ける包埋剤はどれか。
1.キシロール
2.クロロホルム
3.OCT-compound
4.セロイジン
5.エポキシ樹脂

答え.3
【解説】
1.キシロールはパラフィンを除去できる有機溶剤の一つです。
2.クロロホルムは脱アルコールに使用されます。
4.5.どちらも非水溶性の包埋剤です。エポキシ樹脂は透過型の電子顕微鏡標本作成で包埋剤として使います。

Q2.パラフィン包埋について正しいのはどれか。
1.包埋に使うピンセットは冷やしておく。
2.一度固まってしまうと再度包埋できない。
3.融点が45℃~52℃のパラフィンを使う。
4.薄切面を下に向けて包埋する。
5.パラフィンは水溶性である。

答え.4
【解説】
1.ピンセットは温めておきます。溶かしたパラフィンの温度は60℃前後になるので、ピンセットが冷えていると組織がピンセットに張り付いてしまいます。
2.固まってしまっても溶かせば再包埋可能です。
3.教科書的には硬パラのみでよいと記載があります。
4.観察したい面を下に向けて包埋するのは正しいです。下に向けた面が表面に出てくるので、観察や診断しやすい標本に仕上げることが出来ます。
5.パラフィンは非親水性です。


わかりやすかったり、ためになったよって方、スキボタンやフォローいただけると嬉しいです。これからもコツコツ配信していきます。一緒に頑張っていきましょう。


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