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【病理学】銀液を使った染色法と大事なポイントのまとめ後編

 このアカウントでは二級病理検査士や臨床検査技師の資格取得などを目標にされている方に向けて、ゴロなどを混じえながらわかりやすさを意識して情報を発信しています。

 今回も銀液を使った染色法についてまとめていきます。
前回のまとめ前編の記事も参照ください。

 前回の記事では渡辺の鍍銀法、PAM染色、グロコット染色、グリメリウス染色をまとめました。
本日は残り5つの染色法をまとめていきますが、その前に改めて9種の染色法を復習しておきましょう。

 【銀液を使った染色法一覧】

 ▶渡辺の鍍銀法
 ▶PAM染色
 ▶グロコット染色
 ▶グリメリウス染色
 ▶フォンタナ・マッソン染色
 ▶ワルチン・スターリー染色
 ▶コッサ反応
 ▶ボディアン染色
 ▶カハール染色

【ゴロ:ググろう、渡辺のカレーパン、酵母でふわふわ】
ググろう(グロコット染色・グリメリウス染色)渡辺の(渡辺の鍍銀法)カレー(カハール染色)パン(PAM染色)酵母(コッサ反応・ボディアン染色)でふわ(フォンタナ・マッソン染色)ふわ(ワルチン・スターリー染色)

 銀液を使った染色法、思い出せましたか?
では本題に入ります。

 【フォンタナ・マッソン染色のポイント】

 ▶メラニンリポフスチン銀親和性細胞黒~茶褐色に染める
 ▶悪性黒色腫のメラニンや内分泌細胞の検索が出来る
 ▶クリプトコッカスなど一部真菌も染められる
 ▶加温が必要な染色法

 フォンタナ・マッソン染色ではアンモニア銀を使ってメラニンやリポフスチン、銀親和性細胞などを検索することが出来ます。

 【銀親和性とは】

 鍍銀染色において、染色対象の物質が好銀性銀還元性のどちらも備えている場合、銀に親和性があると表現します。

 メラニン、リポフスチン、銀親和性細胞などは好銀性と同時に還元性も持っているので、銀液に浸けるだけで黒色に染める事が出来ます。
 フォンタナ・マッソン染色以外のほとんどの鍍銀染色では、対象の好銀性を利用しているだけで対象物質に還元性がないので、還元液に浸ける操作が必要になります。還元液に浸けることで鍍銀反応を起こしているんですね。

 【ワルチン・スターリー染色のポイント】

 ▶ヘリコバクター・ピロリ菌を硝酸銀で黒色に染める
 ▶ピロリ菌は好銀性を持つ
 ▶加温が必要な染色法

  ワルチン・スターリー染色ではピロリ菌を黒色に染め出すことが出来ます。なお、ピロリ菌はギムザ染色では薄い青色に染まります。
現場でのピロリ菌の検出は、検出感度や、特異性などの観点から酵素抗体法を用いるのが主流です。

 【コッサ反応のポイント】

 ▶組織内に沈着したリン酸・炭酸カルシウム塩を黒褐色に染める
 ▶細胞の核はケルンエヒトロート液で赤色に染まる

 コッサ反応は硝酸銀を使ってカルシウム塩を検索する事が出来ます。しかし、カルシウム塩に特異的な反応というわけではないので現場では実施していません。
 そもそも組織内の石灰化部分はヘマトキシリンで濃い紫色に染まるので、わざわざこの染色を施さなくても簡単に見分けられます。

 【ボディアン染色のポイント】

 ▶神経原線維や軸索、樹状突起などを黒色に染める染色法
 ▶老化やアルツハイマー病、ピック病など神経線維の変性の観察に有用
 ▶使用銀液のプロテイン銀には硝酸銀は含まれない
 ▶
加温が必要な染色法

 ボディアン染色は神経原線維などをプロテイン銀で黒色に染める染色法です。

 【神経原線維とは】

 神経細胞の細胞質や樹状突起内に存在する神経細糸よりなる細線維のことです。この線維は病的に増加・減少します。
特に老化やアルツハイマー病、老人性認知症などでアルツハイマー原線維変化と呼ばれる特徴的な線維として細胞内に現れます。


 【カハール染色のポイント】

 ▶主に中枢神経組織の星状膠細胞を褐色~黒褐色に染める
 ▶脳腫瘍や脳の循環障害など疾患の診断にや病変の把握に有用
 ▶ピリジン・アンモニア銀液を用いる

 カハール染色ではピリジン・アンモニア銀液で主に星状膠細胞を褐色~黒褐色に染め出します。


 お疲れ様です。銀液を使った染色法を二つの記事に渡ってまとめてきましたがどうでしたか?
鍍銀染色の種類や、使用銀液の違いを理解しておくだけで簡単に得点出来る分野でもありますので、ゴロなど使って覚え直しておくことをお勧めします。


 わかりやすかったり、ためになったよって方、スキボタンやフォローいただけると嬉しいです。これからもコツコツ配信していきます。一緒に頑張っていきましょう。

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