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【病理学】電子顕微鏡について

 このアカウントでは二級病理検査士や臨床検査技師の資格取得を目標にされている方に向けて、ゴロや表など交えながらわかりやすさを意識して情報を発信しています。

 今回は電子顕微鏡についてまとめていきたいと思います。
電子顕微鏡に関する問題は国家試験でも二級病理試験でも1.2問出題されているので確実に正解できるようにしていきましょう。


 【電子顕微鏡とは】

 ▶光学顕微鏡よりも更に微細な構造を観察できる
 ▶透過型走査型の電子顕微鏡がある
 ▶透過型は組織の断面構造、走査型は組織の立体構造を観察できる

 電子顕微鏡の大きな特徴といえば分解能の高さが挙げられます。
分解能とは、観察対象が二つあった場合に、対象を正確に識別できる最小の値の事で値が小さければ小さいほど分解能が高い、ということになります。

光学顕微鏡の分解能は0.2μm(1μmは1mmの千分の1)です。
今回のテーマである電子顕微鏡の分解能は1~2Å(1Åは1μmの1万分の1)です。光学顕微鏡よりも遥かに微細な細胞構造まで観察することができます。

電子顕微鏡


 【透過型電子顕微鏡の作成過程】

簡単に表にまとめましたのでそちら参照してください。

透過型電子顕微鏡の作成過程

 透過型電子顕微鏡標本は、腎臓の糸球体の観察に主に用いられます。 

 作成過程の中でのポイントは二重固定と二重染色でしょうか。
試験問題では固定液や染色液の種類、固定液の濃度、細切りした組織の適切な大きさを問われる傾向があります。
ちなみに、唯一エタノールによる脱水は光学顕微鏡標本作製と同じなので覚えておきましょう(臨床検査技師第65回PM46にて出題されています)


 【走査型電子顕微鏡の標本作製過程】

走査型電子顕微鏡の作成過程

 走査型電子顕微鏡標本は、リンパ球のT細胞とB細胞の表面像の違いの観察などに用いられます。

 作成過程でポイントとなるのは透過型と固定液が同じ事、後固定前の導電染色や臨界点乾燥、金属イオン蒸着などの過程があることです。
 走査型は細胞の表面を立体的に観察するのが目的なので超薄切は行わないことも大きなポイントです。


 【練習問題】


Q. 電子顕微鏡標本作製過程で誤っているものはどれか

 1.後固定には四酸化オスミウムが使用される。
 2.走査型では脱水後、酢酸イソアミルで置換する。
 3.走査型では金属イオン蒸着を行う。
 4.透過型の電子染色は二重染色を行う。
 5.ウルトラミクロトームで厚さ0.2µmに薄切する。

答え.5
【解説】
透過型の標本の切片厚は60nm~90nmでしたね。
0.2µmは光学顕微鏡の分解能です。


2015年度 病理二級試験より
Q.電子顕微鏡による検索のための組織固定について正しいのはどれか。二つ選べ。

 1.5m㎥程度に細切する。
 2.鋭利なカミソリで細切する。
 3.固定液に浸しながら細切する。
 4.10%グルタールアルデヒドを用いる。
 5.細切した組織はピンセットでつまんで固定液中に入れる。

 答え.2.3
【解説】
 細切は組織を固定液に浸した状態カミソリを用いて行い1m㎥程度の大きさにします。
5の選択肢が誤りなのは、
 ▶液に浸けて細切することで組織が飛んでしまわないようにできる
 ▶小さい組織のためピンセットで摘まむとロストする恐れがある
 ▶摘まんだ圧で変形する可能性がある
などの理由が考えられます。


今回は電子顕微鏡について要点をまとめてみました。
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