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ヤングケアラー-介護を担う子ども・若者の現実【読書感想】

家族の介護を担う18才未満の子どもであるヤングケアラーについて、その現状や支援のあり方について考える一冊です。

この本を読んだ感想として、大きく3つのことを書きたいと思います。

1.ヤングケアラーとは何か
2.気持ちをわかってもらうことの大切さ
3.公共政策としてのヤングケアラー支援

1.ヤングケアラーとは何か

 ヤングケアラーとは、家族にケアを要する人がいるために、家事や家族の世話を行っている18才未満の子どものことを指します。
 ケアを要する理由は様々ですが、親に障害や精神疾患がある、あるいは一人親家庭である等の理由により、親の介護や食事などの家事を行ったり、兄弟の面倒をみたりしています。
 現代の日本の社会では、子どもをケアの担い手となることを想定した制度となっていません。それにも関わらず、子どもにケアを担わせることにより、進学や部活を断念したり、友人との関係が希薄になったり、子どもにとって様々な影響が出てしまっています。
 ヤングケアラーの問題は社会課題として考えていく必要がありますし、自治体としてどのような支援ができるのか検討を進めていく必要があると感じました。

2.気持ちをわかってもらうことの大切さ

 この本を読むまで、ヤングケアラーに対する支援は、介護や福祉など適切なサービスを用いることで、子どもの負担を軽くすることだろうと考えていました。もちろん、サービスを必要とする人に適切なサービスがつながっていないときに、つなげていくことも大切なことです。
 しかし、ヤングケアラーにとって自分の大変さを、周囲の人にわかってもらうこともまた非常に重要な支援の一つであるということが、本書を読んだ上での気づきです。
 ヤングケアラーに対する支援は、子どもに対する支援でもあることを配慮する必要があります。子どもにとって、家庭と学校・友人関係がその世界の多くを占めます。しかし、家族のケアをする大変さは、そうした経験を持たない学校の友人たちにはわからないし、先生に話をしてもわかってもらえない。ヤングケアラーは、そういうつらさを抱えています。
 例えば、介護のことは一般的な高校生にとっては縁遠いことです。また、家族の介護のためにやむを得ず宿題ができないこともあり、遅刻をしてしまうこともあります。それを一つ一つ説明するのにも気後れしてしまう。こうして自分のつらさを打ち明けられずに抱え込んでしまって、ますます疲弊していき、学校生活もうまくいかなくなってしまう。だからこそ、大変さを周囲に伝えられることが大切な支援となるのです。
 ヤングケアラー支援について先駆的な取り組みをしてきたイギリスでは、ヤングケアラー同士の交流の場が設けられています。そこでは、ヤングケアラーである子どもたち同士だからこそ共有できる大変さが分かち合われるし、大人のスタッフに対して相談することもできます。そこから公的なケアへとつながることもあります。その意味で「気持ちをわかってもらう」ことは本当に大切なことだと思います。

3.公共政策としてのヤングケアラー支援

 一般に社会課題の解決は、個々の課題が社会課題として認識され、社会の注目を浴び、実態が把握され、解決するための仕組みが検討され、実施されていきます。公共政策が実施されていくプロセスともいえます。この本を読む限り、日本におけるヤングケアー支援は、公共政策として展開したわかりやすい事例であるように感じられました。
 ヤングケアラーについてのシンポジウムが開かれ、マスコミによって取り上げられます。シンポジウムに市議会議員が参加していたことから、その市でヤングケアラーについての調査が行われることになります。調査は、日常的に子どもと接する機会が多い教員に対して行われます。その調査結果をもとに、自治体において学校、保健担当部署、児童福祉担当部署等が連携してヤングケアラーについての情報を共有する体制が検討されていきます。本書では、そういった流れについてわかりやすく紹介されていきました。
 ヤングケアラーの問題に限らず、地域や課題の現場において連携しやすいことが自治体の強みです。そして、一つの自治体で検討され、実施された施策はほかの自治体にも広がっていきます。そういう意味で、この本で紹介されたヤングケアラー支援の在り方は、全国的に広がっていくのではないかとも思いました。

 最近、ヤングケアラーに限らず、ケアラーをケアすることが注目されています。子どもの福祉やケアラーの問題に関心がある人に読んでいただければと思います。

追記:このnoteでイラストを使わせていただいている、いらすとやさんですが「介護をする学生のイラスト」というズバリのイラストがあって、すごいなあと思いました。

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