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Papa Doo Run Run(PPDR)『Dead Man's Curve』(Classic Memories #201)

 1970年代の終わりにジャン&ディーンのバックバンドを務めていたパパ・ドゥー・ラン・ランのアルバム。サウンドとしては完全に初期ビーチ・ボーイズのフォロワーで、一応現在も活動中らしいです(少なくとも2019年までは)。のちに本家ビーチ・ボーイズやブライアン・ウィルソンのソロ作品を手厚くサポートしていたジェフリー・フォスケットもメンバーだった時期があるらしく、60年代カリフォルニア・ミュージックのリバイバルを支えた重要なバンドと言えそうです。1975年からはカリフォルニア・ディズニーランドのハウスバンド(ハコバン)も15年ほど勤めていて、その後も断続的に演奏しているようです。ディズニーランドで『フルハウス』の俳優ジョン・ステイモスを迎えたライブの2010年の写真が検索で見つかりました。彼もまたドラマーとしてビーチ・ボーイズをサポートしてました。どこかで聴いたことのあるようなグループ名はジャン&ディーンの「The New Girl in School」(ステキな新入生/イカした新入生)のコーラスからとったものです。

 曲目としては基本的にジャン&ディーンのレパートリーです。で、ときどき「Pipeline」「Wipe Out」のようなエレキインストが入ります。フィーチャリング、ディーン・トレンスということでヴォーカルはジャン&ディーンのディーンです。

 で、B面になるとちょっとドゥーワップのカヴァーも入ってきます。最初期のジャン&ディーンもホワイト・ドゥーワップ色が強かったですからね。最後のあまりなじみのない「One Summer Nite」という曲はザ・ダンリアーズのカヴァー。のちにブルース・ジョンストン「Slow Summer Dancin’ 」と改作して、ビーチ・ボーイズの『Summer In Paradaise』に収録しています。

 レーベルをご覧の通り、「PROMOTION COPY、NOT FOR SALE」ということでほとんど自主制作盤、あるいは海賊盤みたいなものです。裏ジャケットには記載がありませんでしたが、実はアルバムの冒頭に「Intro "Thank you" for buying our album」なる謎のトラックがあり、ジャン&ディーンの短いアカペラを聴くことができます。ジャン・ベリーが参加しているのはおそらくここだけかも。

 そんなわけで、音質的にはかなり海賊盤に近いものがあります。おそらくカセットテープをそのままレコードに起こしているんじゃないでしょうか。ちょっとにごったステレオのミックスで、ときどき音がヨレたり、片チャンネルが聞こえなくなったりします。B面1曲目の「Little Deuce Coupe」に至ってはモノラル。彼らの売り込みように吹き込んだデモテープを営業用にプレスしたものなのかもしれません。

 で、裏ジャケットの解説文を読んでみてビックリ。ちょっと訳してみました。

 1977年、パパ・ドゥー・ラン・ランはファルセットのリード・ヴォーカルとすべてのコーラス・パートを歌うディーン・トレンスともに、ジャン&ディーンについての同名TV映画『夢のサーフシティ』(Deadman's Curve)のサウンドトラックを録音しました。パット・ルーニー(註:映画のプロデューサー)の挑戦は、この作品をアメリカのレーベルで発売することにありませんでした。アルバムはオーストラリアでのみ短期間のうちに出回り、すぐにコレクターズ・アイテムとなりました。
 そして今、このアルバムがジャン・ベリーの特別参加した数曲とともに、あなたのもとに初めてやってきます。コレクターであるあなたこそ、ジャン&ディーン・コレクションを完全なものにし続けてほしいものです。
―― ゲイリー・キングスレー

Papa Doo Run Run『Dead Man's Curve』裏ジャケットより

 ゲイリー・キングスレーが誰かは不明です。興味深いことに、どうやらこのアルバムはジャン&ディーンのTV向け伝記映画『夢のサーフシティー』(日本では松竹富士配給で1981年10月17日に公開)のサウンドトラックらしいのです。この映画を観ていないので本当にそうなのかはわかりませんが、いずれチェックしてみたいと思います。

 そして謎がもうひとつ。日本だけでリリースされたらしいディーンのソロアルバム『Music Phase II 1977-1981』と、曲目がほとんど同じなのです。
「Drag City」「Ride The Wild Surf」は向こうにだけ、「Deadman's Curve」と「Little Old Lady from Pasadena」はこちらにしか入っていません。あとは同じ。もしかして、このアルバムの音源に手を加えてディーンがソロアルバムに仕上げたのかもしれません。日本限定発売だったというその経緯もよくわかりませんが……。

https://www.discogs.com/ja/release/7301062-Dean-Torrence-Music-Phase-II-1977-1981

 今後の新事実にご期待ください。

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