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「中露そして反欧米連合の未来」(フォーリン・アフェアーズ・リポート2024年6月号)一言感想

グローバリストの動向を掴む目的で読んでいます。(私は、”行き過ぎた”グローバル主義には反対で、国家(国民)主権を尊重します)




中露そして反欧米連合の未来

①強大化する反欧米枢軸 - 中露・イラン・北朝鮮の目的は何か

アンドレア・ケンドール=テイラー 新アメリカ安全保障センター シニアフェロー
リチャード・フォンテーヌ 新アメリカ安全保障センター 会長

ロシア、イラン、China、北朝鮮に「反欧米枢軸(axis of upheaval)」というワードを使う事が、強烈なプロパガンダに感じます。

抜粋
『(自由、平等、人権などの)普遍的価値を否定する枢軸国は、欧米が民主主義ブランドを擁護するのは「自国の正当性を損ない、国内の不安定化をあおるためだ」と解釈し、むしろ、「それぞれが、民主主義を定義する権利をもっている」と主張している。結局、アメリカと一時的に和解できても、「国際社会で自分たちの台頭や復権を欧米が受け入れることはない」と考えている。彼らは、内政干渉、米同盟関係の拡大、米核兵器の外国配備、強制的制裁の発動に反対している』

文書の序盤はちょっと難解ですが、中盤・後半は、中露北イランの主張の通りだと思います。米国および西側は、どう対抗するかでは無く、どう協調するかを考えて欲しい。

②ロシアの未来と米中露関係 - 五つのシナリオに備えよ

スティーブン・コトキン スタンフォード大学 フーバー研究所 シニアフェロー

ロシアの5つの(考えうる)シナリオとして
・ロシアはフランス化する?・・・帝国から民主国へ移行するシナリオ
・衰退するロシア・・・人口減少と技術の停滞に伴い衰退する
・中国に隷属するロシア
・中露と北朝鮮・・・ロシアの行動を、Chinaがもて余すようになるシナリオ
・「多極世界の一極を担い、ユーラシア大陸を支配し、世界情勢の重要な裁定者の役割を果たす」シナリオ
を挙げています。

結論として、
・米国とロシアは和解できない
・反プーチンのロシア人による、アメリカ型への回帰を支持する
としています。私は、内政干渉宣言に感じました。

③ピーク・チャイナという幻想 - 中国パワーの現実

エヴァン・S・メデイロス 元米国家安全保障会議 アジア上級部長
序文抜粋
『経済的に衰退する中国には、もはや「かつてのような力はない」のか。現実には、中国共産党は、大方の予測を覆して、危機をうまく切り抜けることが多く、習近平は現在の経済状況について心配していない。むしろ、現状は、より強く、持続可能な経済になるための成長痛を経験しているようなもので、近代化目標に向かって突き進めるように、経済を再構築するための厳しい選択をしていると北京では考えられている。中国の指導者たちは、自国がピークアウトしたかどうかは心配していない。たとえ成長のペースは鈍化しても、米中間のギャップは縮まり続けていると確信している。』

現実的な論文だと思います。

著者が気になったので調べたら、下記記事が見つかりました。

著者の書籍


人口と地政学

④東アジアの少子高齢化と地政学 - 世界政治はどう変化するか

ニコラス・エバースタット アメリカン・エンタープライズ研究所 政治経済チェア

東アジアの主要4か国(China、日本、韓国、台湾)は、これから人口減少によって国力が低下するので、米国のパートナーとしての魅力が下がるという論文。
日本は、人口減少はその通りですが、国力についてはやり方次第でしょう。AIの時代に、労働集約的な考えに縛られる事もありません。私は、日本の国力低下は政治の失敗の影響が大きい(不況なのに緊縮財政する、内需国なのに円安を容認してきた、とか)と考えています。政治の失敗は、政治家および有権者の責任。

参考 映画「プラン75」を引用していました。


⑤イギリスと世界 - 労働党の世界へのアプローチ

デービッド・ラミー 英労働党・影の内閣外相

英国労働党(二大政党の一つで、現在野党)の影の内閣(Shadow Cabinet)外相の決意表明です。

序文抜粋
『次の選挙で、われわれ労働党が政権を手に入れば、国家再生の時代を「進歩主義的リアリズム」という原則で状況を切り開いていく。進歩主義を現実主義的に実施すれば、世界を変えられるだろう。進歩主義的リアリズムとは、何が達成できるかに関する誤った思い込みを排して、理想を模索することを意味する。』

選挙前に、一方の政党の論文を掲載する事=フォーリンアフェアーズ(グローバリスト)の支持表明と見ていましたが、台湾選挙では、フォーリンアフェアーズに論文掲載した方が負けたので、絶対的な影響力があるわけでも無いようです。

参考:リフォームUK(元ブレグジット党)が躍進しそうです


中東アップデート

⑥アラブストリートの反乱 - 民衆の怒りが米外交を揺るがす

マーク・リンチ ジョージ・ワシントン大学 教授(政治学)

ワシントンは、アラブの世論に注意する必要があるという論文。
抜粋
『政策決定者が用いる「アラブストリート」という言葉は、「中東世論を、不合理かつ敵対的で感情的な民衆の不満として矮小化する」言葉だ。そうした感情は特定の政策や思想には基づいていないため、なだめすかしたり、抑圧したりできると考えられている。
英仏の植民地支配に深く根ざす、この言葉は、「教育と資本主義で中東を西側のイメージに即して変化させられる」と考えるようになった冷戦期のアメリカによって採用された。このような認識が「民衆を管理できるアラブの独裁者に協力する」というワシントンの政策を支えた。一方、アラブの指導者たちも、民衆蜂起やイスラムの厄介者の脅威を指摘することで、イスラエルや民主化問題などへの対応を求める西側の圧力をかわせた。』

『ロシアやシリアの行動を批判しつつも、それと同じ行動をとるイスラエルを、アメリカが擁護していることを彼らは知っている。こうした民衆の怒りの大きさは、米系の非政府組織で働いてきた多くの若者が組織を離れ、数十年にもわたる米広報外交のなかで築き上げられてきたアメリカのプロジェクトやネットワークから活動家が離れていることからも明らかだろう』

情報操作はアメリカ(CIA?)の十八番だと思っていましたが、上手くいっていないようです。なお、日本では充分機能していると思います。


⑦イスラエルの次なる戦線? - レバノンをめぐるイラン、ヒズボラとの戦争

マハ・ヤヒヤ カーネギー中東センター所長
「軍隊を含む国の弱体化と、暴力的非国家アクターの台頭には直接な相関関係がある」とし、武力でテロ組織(ハマス、ヒズボラ)を潰すことはできないので、交渉しましょうという冷静な論文。

参考 中東情勢がよく分かる書籍等
2024/4/10 に発売された、佐藤優氏と手嶋龍一氏の対談本

参考②
イラン国営放送「Pars Today」 明確な反西側なのに親日で、日本にエールを送るような記事もあり結構面白いです。
https://parstoday.ir/ja


⑧中東に忍び寄るドラッグの脅威 - カプタゴンからメタンフェタミンへ

バンダ・フェルバブ=ブラウン ブルッキングス研究所 シニアフェロー

序文抜粋
『この10年というもの、カプタゴン(フェネチリン)が中東地域にまん延している。
アンフェタミンとカフェインの混合物で、サウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)で特に人気がある。労働者そしてパーティで空腹や眠気を抑えるために利用されている。カプタゴンは、両国に限らず、アラブ地域全体をまるで嵐のように席巻した。20年前、中東にカプタゴンのドラッグユーザーはほとんどいなかったが、いまや、アルコールよりも安価に広く入手できる。
シリアは世界で流通するカプタゴンのほとんどを生産しており、政府とシリアの独裁者、バッシャール・アサドの重要な収入源とされている。』

初めて知りました。規模等が分からないので、何とも言えない。
シリアへ、言う事を聞かなければ資金源を潰すぞ、というメッセージかも?


まとめページ

おまけ

フォートトーク生成「アラブ民衆の怒りが米外交を揺るがす」

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