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東京の休日 174 〜【江戸時代の美術─「軽み」の誕生@出光美術館】「つまらない」美しさが心に沁み入る秋のひと時でした〜

江戸時代の美術
─「軽み」の誕生
2023年9月16日(土)~10月22日(日)

出光美術館(丸の内)


秋の七草
美しい季節に

訪れたくなる
展覧会でした。



その見どころを
さっそくご紹介してまいります。



・「づくし」と「軽み」の対比/狩野探幽(かのうたんゆう)

画面にぎっしりとモチーフのつまった
「づくし」は室町時代、桃山時代の絵画

一方で、この展覧会で
スポットライトが当てられているのが

画面に余白のある
「軽み」の意識された
江戸時代の絵画
です。

江戸時代を代表する絵師の集団
「狩野派(かのうは)」。

その基礎をつくった
狩野探幽(かのうたんゆう)

「絵はつまりたるがわろき」という
言葉をのこしています。

絵画は、つまらせることがよくない

余地がないほどに
たくさんのモチーフで
画面を埋め尽くすことは
好ましくない

ゆとりや隙を感じさせる
配慮をすべき

と考えていたのです。

つまりは、
「つまらない」方がよいということ。


館内では
次の二つの作品が隣同士で
展示されていて

これを見比べることが
とっても面白かったのです。


紅葉と桜が画面いっぱいの
大迫力で描かれた豪華な

作者不詳
《吉野・龍田図屏風 》桃山時代
9月16日〜10月1日展示


背景の余白、緑や流水とともに
上品に紅葉と桜の描かれた

狩野 常信(かのう つねのぶ)
《吉野・龍田図簾屏風 》江戸時代

まったく同じモチーフの作品が
「つまる」か「つまらない」かの違いで

ここまで異なる印象になるということには
驚かされます。



・目で愉しむ五七五/松尾芭蕉(まつおばしょう)

「つまらない」表現といえば
俳諧(はいかい)
忘れてはいけません。

松尾芭蕉は「軽み」を追求し、
身近な事象をさらりと
五七五にのせることを目指しました。


例えば
「みちのべの木槿(むくげ)は
馬に
くはれけり」

意味:
道端の木槿が(美しかったのに)
馬に食べられてしまった


挿絵とともに
認められた句。

文字、絵、余白の
醸し出す雰囲気も
味わい深いものでした。



・秋の草花の彩り/酒井抱一(さかいほういつ)

酒井抱一(さかいほういつ)

俳諧に親しみ、
弟子の鈴木其一(すずききいつ)とともに

その抒情性を絵画に投影させた画家です。


酒井抱一
《十二ヵ月花鳥図貼付屏風 》江戸時代

《四季花鳥図屏風(裏・波涛図屏風) 》
江戸時代


鈴木其一
《秋草図屏風 》江戸時代


「つまらなさ」が
草花の美しさを引き立てる
これらの作品。

都会にいるとなかなか
目にすることのできない
「秋の七草」を愛でることができました。



秋の七草といえば

狩野探幽
《源氏物語 賢木・澪標図屏風
(げんじものがたり さかき・みおつくしずびょうぶ)》
寛文9年(1669)

も見惚れるような作品で。

金色の雲が画面全体をおおい
醸し出される優美な雰囲気。

浮かぶ三日月に、
しっとりと咲き乱れる秋の草花。

そして、捉えられた
一瞬の光源氏の姿。

見れば見るほどに魅了されていく
作品でした。



ということで今回は
江戸時代の美術を
「つまらない」「軽み」
というキーワードで読み解く

『江戸時代の美術
─「軽み」の誕生』展

をご紹介いたしました。


また、出光美術館のロビーは
皇居を眺めながら

緑茶、ほうじ茶、お水(無料)などで
休憩ができるようになっています。

秋のお出かけの参考に
なりましたら幸いです。

写真・文=Mana(まな)


江戸時代の美術
─「軽み」の誕生
会場:出光美術館
 東京都千代田区丸の内3-1-1 帝劇ビル9階(出光専用エレベーター9階)
会期:2023年9月16日(土)~10月22日(日)
開館時間:10:00~17:00(入館は16:30まで)

休館日:毎週月曜日(ただし9月18日、10月9日は開館)、9月19日(火)、10月10日(火)
http://idemitsu-museum.or.jp/exhibition/present/

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