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【卒論日記】#1

ヘッダー画像は薬学部(全然自分の学部ではない)のラフェクトリー(学食)のチキンカツカレーの様子です。

はじめに

卒論で書きたいことについて考える【卒論日記】をローンチしようと思う。就活日記が終わったから次は論文日記だ。ローンチ。カタカナで書くとバカっぽいな。

本当は昨年の途中からいろいろな人とおしゃべりしてみてテーマを考えたりしていたのだけれど、本格的に論文手法の授業も始まったし(日本の読者向けに言えば、イギリスの授業はすべてゼミと講義のコンビネーションみたいな形をとるので、論文向けのゼミがあると思えば良い)、これから考えることも増えるだろう、と思う。

アドミン関係

以下に、必要事項を記す。大学の3年次の卒業要件として書くので、ハイパーフリーというわけではない。

【要件】

①私の学科はPolitics, Sociology and East European Studiesなので、東欧・旧ソ連の国々の事象に関係することを書かねばならない。
②完全にPhilosophicalでも(例えば「政治学におけるネオリベラリズム」みたいな)、リサーチエッセイの形でも(例えば「ルーマニアにおける宗教と政治の関係」)良いが、リサーチエッセイの形が推奨されている。
③Comparative Politicsでもあるので、他地域との比較は良い(むしろ推奨される)。
タイトルの提出は2022年4月で、ポロポーザルの提出は6月とかだ。

【私が大事にしたいこと】

①日本を関係させたい→完全に概念的な形式はとらないかも。
②自分の興味のあるコンセプトがあって、そこに深堀・関連させる形にしたい。

今考えられるタイトル

では、今の段階で考えていることを書き出してみよう。

●国際関係・地域主義系

○ロシアのCollective Security Treaty Organisationと中国のShanghai Cooperation Organisationの比較
・興味:NATO体制やUNの集団安全保障体制とどのように相互機能するのか?機能しうるのか?とか
・関連するコンセプト:安全保障の概念(Concept of security)、覇権論(hegemony)
・検討する必要がある事項;何を検討するのか?(実際のオペレーションなのか、NATOやUNとの関係性なのか?)

○日露領土問題と各国国民の相手国への国民感情の差異
・興味:日中韓はいつも揉めている印象があるが、日露はそんなに大きく報道されないような気もする。それはロシアでも同じなのか?
・関連するコンセプト:ナショナリズム、市民社会
・検討する必要がある事項;何を検討するのか?(SHSでの反応なのか、メディアの取り扱いなのか)、ロシアに対して世論調査を期待できるのか?

●政治系(政治機構)

○ポピュリズムの定義は何か
・興味:ポピュリズムはどのように定義されるべきなのか?
・対象:ポーランド・ハンガリーの例と、日本の政治を比較
・参照:Oxford Handbook of Japanese Politics (Chap. Populism in Japan)

○政治腐敗(corruption)における宗教の役割
・興味:政治腐敗は共産党支配のレガシーにつきものなのか?また、「政治腐敗」は世界的に同じ事象を指しめすのに使われているのか?
・対象:ルーマニアと日本の例を比較し、宗教が果たす役割・「腐敗」の概念が差ししめす事象の差異を検討する。
・参照:Corruption, Culture, and CommunismCorruption in Romania

●歴史認識系(教育政策・ナショナリズム・アイデンティティ系)

○歴史教科書における国家建設のストーリーの比較
・興味:ナショナリズム意識は教科書によってどのように強化されうるのか?
・対象:民族・宗教構成が多様な東欧国家と単一民族国家の日本を比較。可能ならば辺境ナショナリズム(Borderland nationalism)も含めたい
・参照:

○共同教科書の比較ー歴史への反省はどうして成功・失敗するのか?
・興味:共同教科書作成の取り組みは世界各国で見られるが、どのような時に成功するのか?失敗するのか?
・参照:ドイツ・ポーランドの例日中韓の例
🌟これが実は一番興味を持っていて、すごく深掘りしたい。高校の時にちょっと齧った教科書問題の延長にある、というところもある。

○Commemoration of war crimes: in what circumstances establishing a memorial effective or accepted?
適切な和訳がどうしても思いつきませんでした。戦争犯罪のメモリアルはどのような場合に成功するのか?慰安婦周辺の論争にインスパイアされたことが明らかですね。ナチ・ドイツの侵略や、ソビエトの侵略あたりがよく銅像にされていて、市民運動でアタックされたような経歴を持つものも多い。

○歴史修正主義と博物館の役割
ポーランドで歴史博物館の館長が辞任を迫られることがあったため。ただこれをどうリサーチに落とし込むかが謎。
・参照:ズデンスクの博物館について

○シュレジェン地方における教育政策とアイデンティティの発達
→これだけ日本全く関係していないが、いわゆるBorder nationalismに注目して、割譲と併合を繰り返してきた地方ではアイデンティティがどのように発達するのかを検討する。

●その他

○工業化・政治機構の近代化の過程での東欧における「西」の概念と東アジアにおける「西」の概念
一番最後になっちゃったけど、私はこれも結構良いんじゃ無いかなと思っている。東欧の国々は、ヨーロッパの一員として西に追いつこうと発展してきた歴史がある。一方で、東アジアの国々は西欧化を目指した時期がある。そこに異なる「東と西」のコンセプトがあるのではないか?
参照:日本における西欧の取り扱い東欧における西欧の取り扱い

終わりに

以下、1年前の私のメモを若干中略して抜粋。

私が知っている範囲の政治学においては、何かしらの国の行動や外交政策などを、その背景にある他国の動きや国内の経済・政治・社会状況(就職率、教育、福祉etc)を分析して理解しようとする。一方で、「特定の国」には「その国らしい」行動があって、それは特定のグループのアイデンティティや、談話理論が定義するような「社会の性質」に左右されるとしたら、そこには政治社会学的なナショナリズムが介入したり、教育の内容が介入してきたりするはずだ。 一つ私が思い出したのが、高校生の時にかじった様々な国の教科書比較だ。「調査プロジェクト」という名前を関していながら大した結論に至ることはなかったのだが、そこに見え隠れしていた国ごとの考えやスタンスの違いや、その国の政治要因だけではなくて、社会的な性質などが影響していたのではないだろうか。例えば、「核兵器の使い方をどのように説明するか」ということ一つを取っても、西洋的民主主義(対義語は主権的民主主義、いつか記事にしよう)の国と共産党主義の国と、もしくは大戦で敗北を経験した国としなかった国と、その説明は大きく異なるはずである。同時に、この議論の背景には、「民主主義が素晴らしいものである」という過程が当たり前のように存在することを忘れてはならない。近代化が西洋化の同義語だった時代、日本では積極的に外国に学生を送り、政府の使者を送り、憲法の仕組みを学んだ。

なっげ〜〜〜

だから何?要は、アイデンティティがどうやって作られているのか教育の視点から眺めてみたいな、ということだ。私は教育者になることは興味がないが(教育される側に意欲が無いことが多々あるだろうし、意欲があるべきとする理想と現実の乖離に耐えられないと思うから)、教育制度を考えることには興味がある。

ついでに言うと、ナショナリズムの理論は主に18世紀ドイツ、のち19世紀フランスを通して作られたヨーロッパ製の理論だ。これがヨーロッパ以外の国に成り立つのか、もしくは途中で共産党支配と挟んだ国でも成り立つのか、など理論の普遍性を問うことは、理論に内在するオリエンタリズムに対応すると言う意味でも意義があるんじゃ無いかと思う。

私は大学に入ったのが2020年で、セミナーやレクチャーがオンラインの時代だった。だから、いまだに大学がなんだか大きくでよく分からないインスティテューションに見えることがある。

なのだが、昨年取っていたポーランド人の先生が面倒見が良く、というか話しかけに行くと相談を聞いてくれるような人で、卒論のテーマとか、マスターの選び方とか、MRes(リサーチをするためのマスターコース)とかの話を聞いてくれる。すごく助かる。卒論が楽しいものになるといいな。

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