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今まででいちばんタフな

「君はこれから世界でいちばんタフな15歳の少年にならなくちゃいけないんだ。なにがあろうとさ。そうする以外に君がこの世界を生きのびていく道はないんだからね。そしてそのためには、ほんとうにタフであるというのがどういうことなのか、君は自分で理解しなくちゃならない。」

海辺のカフカ、最初の方

今まででいちばんタフな夏を過ごした日記を書いておこうと思う。


喉元過ぎれば全ての熱さは忘れてしまうけれど、今の熱さを記しておく価値はあると思う。

夜勤をしながらこれからのことに思いを馳せた。大学院の説明会に参加しながらこれからのことに思いを馳せた。就職活動をしながらこれからのことに思いを馳せた。

結局何者にもなれなかったと思った。それがいちばんしんどかった。何者かになるということは、Distinctな何かを持つことではなくて、自分のありたい形であれることだと思っていた。だけど同時に、私はいつも「自分のありたい姿(ただし、2番目のオプション)」で、「自分のありたい姿はプランAだったんだけどプランBでどうにかしています」の人にしかなれなかった。だけど、それはそれでMAXやる気に満ち溢れた人生を送ってきた。

タフであるとはそういうことだと思うけど、私はそういうふうに生きたいわけではなかった。

あなたを表す言葉を5単語出せと言われて、私はとりあえず不屈と真面目を挙げた。あとの3つは捻り出した。

この人(私の文章を読んで)生きづらそうだなと思ってたけど、実際しんどいもんですよね、とか、そんなに考えすぎなくていいんだよ、とか、スヌーピーに似てますね、とか、色々な人に好き勝手なことを言われた夏だった。

夏は海を見ないと終わらないので、外出の中にこっそり海を見に行く工程をいくつか紛れ込ませた。好きだった人と遊びに行く時、よく海を見に行こうと言ってくれたのを思い出した。もしくはもう思い出さなかったのかもしれない。いくつかの海を見て、何も言わずに水面に跳ねる魚を眺めて、まだ夏の海だと思った。

海を見たから、夏が終わった。大学院が始まるから夏が終わった。アルバイトも辞めるから夏が終わった。

もうそろそろ海を見なくてはと思ったから、夏が終わった。

就活がうまくいかなかったからってそこまで病むなと思っていると思う。大半の読者は。でもこれは私の人生なので。私は真面目さを自分を表現する言葉に挙げたけれど、それは机に向かって勉強できる真面目さではなくて、自分に関することに、必要があれば丁寧に向き合って考え経験から学ぶことができる姿勢です、と説明した。きっと3ヶ月後くらいには全て風呂敷の中に突っ込んで、また担げるようになっているのだ。

そうでありますように。


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