ネタバレになりうる内容を含みます。
韓国の短編集だ。韓国国内で大ヒットだったらしい。
若き頃の忘れられない記憶の話だと思った。少年期の記憶や経験や葛藤や悲しみを全て抱えて、人は社会に出ていくのだろうか。大人と言われる人たちは、そういうものを全てひっくるめて大きなつづりの中に詰め込んで、社会の中で個として歩んでいくのだろうか。そこにジェンダーとかマイノリティみたいな社会課題も織り交ぜられていて、しかしうるさいな〜〜と思うほどではなくて、そこがすごいなと思った。
二人のレズビアンの物語。
別れる男に花の名前を教えるのと同じだな、と思う。ジェンダーも国籍も飛び越えて人間の根底に流れるもの。
二人のなんとなくうまくいかなくなってしまった姉妹の物語。
それはなんとなく、コナリー「失われたものたちの物語」に出てくる兄弟愛のような、小さいものを慈しむことを良きとする倫理とダブって見えた。誰かを守れることで得られる幸せ。
仲良し3人組のお話。
人には人の地獄があるとさっきも書いたが(日曜日の朝にまとめて読んでいるので)、そうなのだと思う。下手に登場人物が死んだりしないから、ますますそうなのだと思う。何をすれば正解だったのかわからない中で、正解を考えもがかねばならぬ。
かつての自分の育ての親に再会して。
でかいステージに立ってスポットライトを浴びると、客席の方は見えなくなる。ついでに言うと、スポットライトは熱い。だけど客席が見えないと言うのは、あなたがスポットライトを浴びていると言うことで、幸せなことなのかもしれない。
結局、一番こころに残ったのは著者の序文だったかもしれない。
全てを分解して行ったとき、根底にあるのは何を基盤にした集団でもなくて、社会の中でもがき苦しみながら生きる個々人なのだと思う。