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【今日の論文】バルカンの記憶とバルトの記憶とEUの記憶

この論文について話しています:
Radonić, L. (2017). 'Post-communist invocation of Europe: memorial museums’ narratives and the Europeanization of memory', National Identities, 19 (2), pp. 269-288. DOI: 10.1080/14608944.2016.1264377


EUとバルカン諸国とバルト諸国の持っている記憶というものを、歴史博物館のナチズム(ホロコースト)展示および共産主義の歴史の通常展示から比較した論文だ。

「記憶」という観点から見ると、EUはホロコーストの記憶(もしくはナチズムのような人道への犯罪を再度犯させてはいけないという確固たる決意)に基づいて形成されたと言われることが多い。しかし、EU拡大とともに、ソビエト統治の記憶を持つバルカン諸国と、ユーゴスラビアの記憶を持つバルカン諸国がその記憶に参入するとどうなるのだろうか?という検討だ。

結論としては、記憶のヨーロッパ化とコミュニズムの記憶の強調がともに見られるというものだ。前者はEUに加盟するために、後者はコミュニズムの記憶もホロコーストと同じレベルで非難されなくてはいけないのではないか?という意識につながっていく。

記憶レジームみたいなものに興味がある人にはめっちゃ良い論文だと思った。私が大学教授だったら学生に読ませる。

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