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【日記】漬物

閉店間際のスーパーに寄る。五連勤真ん中、普段より2時間くらい早めに上がったのでギリギリスーパーが空いている。廃棄寸前の棚に直行し、廃棄寸前の生野菜とサーモンの寿司2艦(日本円において50円相当)を入手する。ついでに賞味期限近づいてますマーク付きのものをいくつか拾い上げて帰路についた。

私の本業は学生だ。1日勉強できるだけして、そこからバイトに行く。6時間くらい働く。もっとのときもある。要は基本常にやることがある。社会人になれば本業は労働者になり、1日の8時間だか10時間だかを過ごす訳だけど、それ以外の時間は睡眠と虚無が広がっているわけで、そこに価値を見出すのに趣味か家族か自己愛というものが必要なのだろうな、と思う。同時に、自分が生きるために自分の時間を使ってお金を稼いで自分が生きるために使うのは、意味がわからないな、とも思う。妙な話だ。

そんなことはどうでもよくて、本業の話をしよう。いや、数年後の日常を占める虚無に思いを馳せた方が良いのだろうが、ちょっとそんな元気はない。

日本の友達に「来週までにエッセイ書かないといけないんだよね」とぼやいたら、どういうこと?と言われた。英国の大学においてエッセイは、コースワークの形式で3000単語(学部の場合)くらい書く小論文課題のことである。断じて毎日感じたことを書き連ねているわけではない。

エッセイは漬物みたいなものだな、と思う。具体的に言えば、糠漬けだと思う。

まず、糠が要る。大学のリーディングで背景情報は頭に入っているはずだけれど、やっぱり自分が書こうと思っているテーマの周りにどんな人が論文を出していて、ケース・スタディーがどんな感じなのかを理解しなければならなかったりして、自分が納得できるまでには途方もない時間がかかる。糠がなかなか成熟してくれない。

ほんで、中身を漬け込むのにも結構時間がかかる。材料は手元にあるのに、うまくそれぞれから主張を導けない。段落を丸ごと消したり入れ替えたり捨てたりを繰り返すので、数回睡眠を挟んで何回も向かい合うことになる。材料自体も使えなかったり、下処理が必要だったりする。

最後に、味が濃い。単独だとどうしても進まないので、横に飲み物を置いたり音楽をかけたり何かで気分を高揚させながら書く。その割に買い物に行ったりするのが面倒になって、家の食べ物をイナゴのように食い尽くすことになる。

私は糠漬けというものが好きではないが、エッセイを書くのは好きだな、と思う。あと、これを時間をかけてじっくりやるのがエッセイで、超短時間で、それこそ3分とかでやるのがケース面接である。最初に前提を展開して、その前回と本編をつなぎ合わせて理解していく感じ。

と、私は数日前から食べ続けていたキャベツの味噌汁の残骸を見つめながら思う。15時の締切20分前で提出して、ピンチヒッターで呼ばれたバイトに出勤する。時間をかければかけるほどよくなる、漬物。

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