小西大樹「ルーツはここからかもしれない」#1 柴田芙美香①

小西大樹(こにし ひろき)の母、清子(きよこ)は、生家は本橋家であるが、15歳の時に母親の本橋美代子(もとはし みよこ)の元婚約者であった川崎善次郎(かわさき ぜんじろう)氏の養女となり、そこから小西家へ嫁いだ。

小西清子(こにし きよこ)の母、本橋美代子……もまた、幼い頃、生家を離れて養女となり、柴田家へ引き取られた。

これは、小西大樹の曾祖父母世代の物語である。

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「芙美香、お話があります。お父様がお呼びよ。応接間にいらっしゃい。」

「はい。お母様。今参ります。」

あたくしの名前は代田芙美香(しろた ふみか)。今年二十歳になりました。もう少しで柴田芙美香となります。お嫁入りが正式に決まりましたの。

女学校時代のお友達は、殆ど皆様お輿入れがお済みです。あたくしは皆様より一歩二歩遅れを取っておりますの。

ですがあたくしは焦ってはおりません。何故ならば、お友達が結婚なさった後で……よい便りがあまり無かったのですもの。

次はあたくし?お次はどなた?まるで何かの罰を受ける順番を待っている様な女学校時代でしたわ。お早い方々はご卒業を待たずに学校を退学なさって其れ其れ家の決めたお方の元へ嫁いで行かれました。

幸いあたくしは引き取り手が数多無かったそうですのね?お父様やお母様が大層頭を痛めてらしたそうです。……ずいぶんと後になって笑い種の一つとしてお母様から教えて頂きました。

当時のあたくしは、そんなことよりも、家の外のお話が聞きたくて知りたくて……周囲から変人扱いを受けていたそうですわ。

本人であるあたくしはそんな事とはつゆ知らず、両親からすればやっと、あたくしとしてはとうとう、この人生の門出という祝い事の軒先に入りかけた処でしたの。

結婚は人生の墓場だなんて、ずいぶんと後になって知り得た言葉でしたわ……もっと早くに教えてくだされば、あたくしだって……一応考えがごさいましたのよ。

とにかく、正式に結婚が決まり、後は両家で段取りの細部を話し合う事を残すのみとなっておりましたの。

ですが、人生は……甘い和菓子の様に幸福感を運んではくださらないのね……。

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