「棺桶に百合の花を入れるな」という母との攻防

「あたしが死んだら棺桶に百合の花入れんとってな!!」

と昔から母は言う。

「菊とかもう、問題外!!なんで死んだら百合やら菊やらが定番なんやろ。あたしは野や山の素朴な花に包まれて行きたいねん。霞草もええなあ。そういう花にしてよ。頼むで」

お寺の事務員のあんたに頼んどけば問題なかろう!
と母は言う。
私は当時お寺に勤めていて
「棺に入れたいもの」
についてちょくちょくお問い合わせを頂いたりしていたので
山野草は大丈夫だよなあと思いつつも
段取りが大変だなあと一応頭の中でシミュレーションしたりしている。

送ること。
送られること。
母はまだまだ若くピンピンしているので全くそんな心配はないのだけれど
リクエストが多いと
いざという時に困っちゃうよなあ。
なんて思いながら
それでも山登りが趣味で山をこよなく愛していて
山野草に囲まれて行きたいという母の気持ちもよく分かる私は
ちゃんとしてあげないとなと考えている。

私は歳の差婚で
夫は13歳年上だ。
夫のお母さんは四年前に
お父さんは去年亡くなって
お二人とも私が勤めていたお寺でしっかりと送らせてもらった。
私がお寺の事務員だったことと
お二人のお葬儀の段取りをさせてもらったことで
母だけではなく
「送られ方」
にこだわりがある人との折衷案が見えてきた気がする。

「棺桶にお葬儀屋さんのお花を入れないで」
というリクエストに関しては
意外と簡単にクリアできるかなと思う。
というのもお葬儀の際に

「お花はどのくらい用意しましょうか?」

と必ずお葬儀屋さんに聞かれるので
ここでしっかりお断りすれば良いだけの話なのだ。

「こちらで用意したものを納棺しますのでお花はいらないです」

と言っておいて
あとは生前から山野草を扱っている花屋さんに当たり付けておいて
予算を立てておけば良い。

ちなみに夫は
「棺桶に積みプラを入れて欲しい」
と言ったりするのだけど
ガンプラは焼いたら有毒なガスが出る場合があるので
おそらく火葬場でお断りされると思う。

ちなみにメロン丸ごと、パイナップル丸ごと
などもお断りされる可能性が高い。
「焼くときに温度が下がってしまうから」
という理由らしい。
焼くときの温度に関係するものと
焼いた時にガスや異臭が発生するものは
断られる可能性が高いということだけれど
山野草はその辺全然問題ない。

「好きなものに囲まれて行きたい」

というお話は
とてもよく耳にする。
私は「火葬場で焼けるもの」「送る側に迷惑をかけないもの」であれば
なんだってOKだと思う。
「死んだらわからないんだからわがまま言わないで」
なんて意見も聞くけれど
個人的にはお葬儀って
「送る側のためにある」
と思っているので
「好きなものに囲まれて行けて良かったね!!」
と送った人たちが満足するとしたら
それはそれで価値があると思うのだ。

送る側が大変な負担を強いられるもの、
例えば札束に囲まれて行きたい!とか
入手困難なものを用意してくれ!とか
それはどうかなあと思うけど
それ意外であればなんでもいいかなあと
個人的には思う。

送った側がしっかり満足して
「さようなら」
を言えて
送られた側も
「みんなの笑顔で送られて良かったよ」
そんなお葬儀がいいなあと
思っています。

ちなみにわたしは
どうしたって自分の勤めていたお寺の本堂で送って欲しいと思っていて
絶対にあの大好きな阿弥陀様の前で成仏してやる!!
と今から息巻いています(笑)
何十年後になるのやら!!
でも、もしものときは
子供たちのために、ちゃんと段取りしとかないとね。

急にそんな話でした。
ちゃんちゃん。

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