2035年の日本の実質的な食料自給率が、コメでも11%、青果物や畜産では1~4%に低下する可能性
表1は、現状の趨勢が続くと、最悪の場合、2035年の日本の実質的な食料自給率が、コメでも11%、青果物や畜産では1~4%に低下する可能性を示唆している。
「我々は何を食べて生きたらいいんだ」【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】
国は規模拡大支援政策を追求し、畜産でも超大規模経営はそれなりに増えたが、それ以外の廃業が増え、全体の平均規模は拡大しても、やめた農家の減産をカバーしきれず、総生産の減少と地域の限界集落化が止まらない段階に入っている。
それに加えて、飼料の海外依存度を考慮すると、牛肉(豚肉、鶏卵)の自給率は現状でも11%(6%、12%)、このままだと、2035年には4%(1%、2%)と、信じがたい水準に陥る。さらに付け加えると、鶏のヒナはほぼ100%海外依存なので、それを考慮すると、実は鶏卵の自給率はすでに0%という深刻な事態なのである。
現状は80%の国産率の野菜も、90%という種の海外依存度を考慮すると、自給率は現状でも8%、2035年には3%と、信じがたい低水準に陥る可能性がある。コメも含めて、「種は企業の儲けの源」として種の海外依存度の上昇につながる一連の制度変更(種子法廃止→農業競争力強化支援法→種苗法改定→農産物検査法改定)が行われているので、野菜で生じた種の海外依存度の高まりがコメや果樹でも起こる可能性がある。
コメは大幅な供給減少にもかかわらず、それを上回る需要減でまだ余るかと思われるが、最悪の場合、野菜と同様に、仮に種採りの90%が海外圃場で行われるようになったら、物流が止まってしまえば、コメの自給率も11%にしかならない。果樹では、同様の計算で、3%にしかならない。
つまり、日本の地域の崩壊と国民の飢餓の危機は、2050年よりも、もっと前に顕在化する可能性がある。
地域の種を守ることが国民の命を守る。
鈴木宜弘 東京大学大学院農学生命科学研究科教授