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弁護士の将来設計②~事務所からの報酬のもらい方~

1.事務所からは給与でもらった方が有利

イソ弁時代一度も昇給のなかったまもるくんです。今回は事務所からの報酬のもらい方について書いてみます。

事務所からの報酬は、①給与でもらう、②業務委託報酬でもらう、の二種類があります。これは、イソ弁にとっては、ズバリ①が有利で②が不利です。差額は手残りで数十万くらい。以上。

・・・結論はこれで終わりなんですが、せっかくなので実際の差額とこのような事象が発生する理由について書いてみます。

2.給与か?業務委託報酬か?70万円~80万円の相違

これは例があった方がわかりやすいので、モデル設定をします。今回、単純化するために細かな点は無視し、4点のみの条件設定をします。

パターンA
 ・事務所からもらう報酬600万円
 ・個人受任の売上げ600万円
 ・経費は個人受任の売上げの6割(上納3割、自分の経費3割)
 ・社会保険料等の控除は合計100万円

パターンB

 ・事務所からもらう報酬700万円
 ・個人受任の売上げ300万円
 ・経費は個人受任の売上げの5割(上納2割、自分の経費3割)
 ・社会保険料等の控除は合計100万円

地方だとパターンA、少し都会だとパターンBに近い感じでしょうか。

結果としては、以下のとおりかなりの差ができることになりました。

パターンA→給与でもらう方が71万円ほど有利

パターンB→給与でもらう方が82万円ほど有利

ポイントは給与所得控除が使えるか否かと、個人事業税の課税対象になるか否か。計算根拠は「4.計算根拠」に記載しましたが、ここは興味がある方にご確認いただければ良いかと思います。かなりざっくりした計算で既知の不正確さを含んでいますが、差額を算定するという趣旨からしてあまりこだわりませんでした。基礎的な理解の間違いなどありましたら是非ご指摘いただきたいです。

なお、業務委託報酬でもらう場合では2期後に消費税課税業者になることがありずっと同じ売上げが続くこと及び簡易課税選択を前提とすると2期後からさらに50万円くらいの差(もちろん給与でもらった方が有利)が出てきます。ただ令和5年にインボイス制度導入が予定されており免税業者は益税が得られなくなる取引が出てくる可能性がある等の不確定要素が多いため、今回は計算外としています。

3.なぜ事務所によって異なるのか

さて、このようにイソ弁にとっては給与の方が圧倒的に有利ですが、業務委託報酬の事務所があるのはなぜでしょう。ボス弁がみんな給与で払ってくれれば問題解決なのに・・・。なんでそうしてくれないのか?それは、ボス弁から見た場合、給与だと支払った額が消費税の課税対象仕入れにならないけど、業務委託報酬で払うと外注費扱いになって課税対象仕入れになるからです。簡単に言えば、給与で払うとただ出ていくだけのお金だけど業務委託報酬で支払うとその分消費税が安くなる。ってことです。だからボス弁は業務委託報酬で払った方が一般的には税務上有利なんです(ただし小規模事務所でボスが簡易課税対象だったりすれば関係ないです。)。

就職説明会などでここのところ(給与か業務委託報酬か)をちゃんと説明しない事務所は、だいたい業務委託報酬形式だったりします。だって普通の修習生はこんなのわからないものね。だったら見た目の報酬を上げておいて引きつけた方が有利だものね。でも僕はかつて事務所から給与で払ってもらったことに感謝しているし、今のイソ弁のみんなにもかつての私同様に給与所得控除+経費利用の黄金パターンの利益を得て欲しいので、唇をかみしめながら給与として支払ってます。こういうちょっとしたことで税金が大きく違うというのを早いうちから実感することにも価値があると思っています。

ちなみに、ボス弁が外注費で計上して確定申告しているのにイソ弁がそれを無視して給与所得扱いにして給与所得控除を入れて確定申告する。という荒技を使うとほぼ100%税務調査が入ってしまいます。事務所内でボス弁とイソ弁の悲しい紛争が起きることになるからよい子の当職らは絶対やっちゃダメだ。ちゃんとボス弁と交渉して権利を勝ち取ろう。

4.計算根拠

(1)パターンA

 ①給与の場合
(合計)給与600万円+個人受任売上げ600万円-経費360万円=840万円
(課税前所得)840万円-給与所得控除164万円-控除100万円-青色申告特別控除65万円=511万円
(所得税)511万円×0.2-42万7500円=59万2500円
(住民税)511万円×0.1=51万1000円
(個人事業税)(個人受任売上げ600万円-経費360万円-290万円)→0円以下なので0円。
(最終手残り)840万円-59万2500円-51万1000円=723万6500円
②業務委託報酬の場合
(合計)業務委託報酬600万円+個人受任売上げ600万円-経費360万円=840万円
(課税前所得)840万円-控除100万円-青色申告特別控除65万円=675万円
(所得税)675万円×0.2-42万7500円=92万2500円
(住民税)675万円×0.1=67万5000円
(個人事業税)(業務委託報酬600万円+個人受任売上げ600万円-経費360万円-控除290万円)×0.05=27万5000円
(最終手残り)840万円-92万2500円-67万5000円-27万5000円=652万5000円
(差額)723万6500円-652万5000円=71万1500円

(2)パターンB

 ①給与の場合
(合計)給与700万円+個人受任売上げ300万円-経費150万円=850万円
(課税前所得)850万円-給与所得控除180万円-控除100万円-青色申告特別控除65万円=505万円
(所得税)505万円×0.2-42万7500円=58万2500円
(住民税)505万円×0.1=50万0500円
(個人事業税)(個人受任売上げ300万円-経費150万円-290万円)→0円以下なので0円。
(最終手残り)850万円-58万2500円-50万0500円=741万7000円
②業務委託報酬の場合
(合計)業務委託報酬700万円+個人受任売上げ300万円-経費150万円=850万円
(課税前所得)850万円-控除100万円-青色申告特別控除65万円=685万円
(所得税)685万円×0.2-42万7500円=94万2500円
(住民税)685万円×0.1=68万5000円
(個人事業税)(業務委託報酬700万円+個人受任売上げ300万円-経費150万円-控除290万円)×0.05=28万円
(最終手残り)850万円-94万2500円-68万5000円-28万円=659万2500円
(差額)741万7000円-659万2500円=82万4500円


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