ルーペを比べてみようじゃないか
さて、唐突にルーペを持ち出してみる。
自分が愛用しているのは、基本的にリネンルーペと呼ばれる大型のもので、三倍のNikonのルーペ(どうも現在売られていない)をよく使っている。
職業柄(色々あってヒミツ)、ルーペをよく使う仕事をしていたこともあり、そんなに倍率を上げたものは使っていない。ミリ以下のモノを見ているものの、長時間、しかも集中して見る必要があったため、倍率よりもストレスフリーなモノを求めていた。だから、結局卓上の手のひら大ほどもある大型なルーペの方がありがたかったワケだ。
そんなんだから、片目を閉じずに両目を開けたまま見るとか、なるべく明るいところで使うとか、目に負担のかからない見方だけは身についた。
で、そういう職業を離れ数年経った。新しい仕事も落ち着き、趣味というものに打ち込む時間が増えたわけだ。
そうすると最近、欲のようなモノが出始めた。
鑑定士の資格を取りたい…
あんまり言ってないが、鉱石や岩石を見るのが趣味なのだが、そっち方面の資格とかは今まで全く目に入っていなかった。
ところが時間が出来て色んな店や研究所を回ってみて、そういう資格を取ってみても良いなぁ、と思うようになったわけだ。
で「鉱物鑑定士」という資格がある。
どういうものか、というのに対してそんなに興味を持たない人もいるだろうから、ここはサッと流すが、この資格を取るために行われる実技試験の中に、必要物として挙げられているモノがある。
約10倍のルーペ
ほう?10倍とな?
今まで扱った事もない事もない、そんな倍率である。
というのも、僕は今まで鉱物を眺めるのに使っていたのは、100円均一で売られているプラスチックのルーペだったのだ。
うん、これはナメてると思われても仕方ない。
仕方ないけど使いやすいから仕方ない。
目を凝らす系のちっさなルーペを嫌っていたので、そもそも高倍率のルーペには目もくれていなかったのが、ここに来てアダに。
仕事で使っていたNikonのルーペだって3倍程度だぞ。どうせぇと?
ならば、良いルーペってのを探りたくなるわけだ。幸い、今まで仕事で使っていたので、負担が少ないとか見やすいという基準は言葉にして表せるだけの能力がある。あとは、さまざまに試せば、皆さんももしかして「良いルーペ」を探す参考になるのでは?と思った次第。
という事で、大人が有り余る時間と金をかけて、Amazonやらカメラショップで色々見て買ってみた結果がこちら。
10倍レンズは右の三つ。左のモノは20倍である。コレはちょっと理由があってそうしたが、おそらく10倍のものも同じような特性を備えていそうなので、ここで並列して扱う。
スマホのカメラで擬似的にレンズを除いた結果を撮影しているが、基本的に肉眼で使った感じというのを書くので、あくまでイメージとして考えてもらいたい。
1 Amazon最安値の10倍ルーペ
Amazonで小型のルーペを漁っていると、大体1000円から2000円台の所で引っかかってくるのがコイツだ。
多分中華製なのだが、存外作りがしっかりしている。レンズもこの型にしては大きめで21mmと広い視野がある。
値段に幅があるのは、実は出しているメーカー名で振れ幅があるので、多分ルーペ本体は同じでサービスがちょっとずつ違うと思われる(ケース付きとか、ケースの材質違いとか)。Amazonにありがちな中華製品あるあるなのだ。
で、見え方について
レンズの仕組みとしては虫眼鏡と同じ凸レンズなので、当然と言えば当然なのだが、こうして周辺部の像が歪んでしまう。
視界が大きいので、サッと使う分には気にならないものの、集中して内包物なんかを見ようとすると…この歪みが途端にストレスになってしまう。
レンズの中央を用いて観察するなら、コレでも問題ないかと思う。
しかし、中華製品にありがちな個体差を考慮すると、安物買いの銭失いになる可能性がある。
レンズの個体差は以外と大きいと思うし、このレンズも大して良い物ではない。
大きく見られる、というだけに過ぎないし、実は性能が上のものがちゃんとあるので、初心者には逆にオススメはしない。
こういう物だ、と理解している必要がある、ということだ。難しい?要は買うなってコトよ。
2 池田レンズ製ルーペ
いきなりド本命である。
金の派手なケースに、黒色の鏡胴。見た目がもうド派手すぎる。
お値段8000円前後。高い所なら12000ってのもあった。
いきなりAmazonの安い奴の4倍以上しているが、これ、実はメチャ使える。
視界が広い上に、歪まないのだ。
いや厳密に言えば歪みはあるが、全然許容できる範囲に収まっている。
トリプレット、と銘打たれているので、おそらく三枚レンズで構成されているのだろう。それだけレンズを使っているので、この値段というわけだ。
派手派手しいし、携帯ルーペとしては嵩張るのだが、それでもこの性能は破格である。メイドインジャパン、やはりお前はすごい。
3 Nikonのルーペ
僕にとっての愛用ルーペメーカー(いやカメラメーカーでしょうよ、というツッコミはさて置く)、Nikonの登場だ。
上二つと比べて、圧倒的に小さい。
何というか、携帯性は確かに良いんだけど、レンズもなんだか頼りなく思えてしまう。しかし、このルーペも7000円超と、良いお値段がするわけである。ホントに大丈夫か?小さすぎない?
しかし、やはりNikonはNikonであった。
この性能である。おそらく、Nikonも複数枚のレンズを使っているのであろう。
光学系の技術で世界シェアを争うメーカーだけあって、こういうレベルでのクオリティも凄まじいものがある…
…んだけど、やはり小さい。何だろう、池田レンズの広さに比べてしまうと、この小ささがやはりストレスなのだ。
解像度や正確性はピカイチだが、こう…もっと大きかったらなぁ!っていう願望が口をついて出て来てしまう。
レンズ径は10mm強。分かるだろうか。この小ささ。
池田レンズの方が…個人的にはストレスが無い…
4 アクロマートレンズのルーペ
アクロマートレンズって何や?となる人も多いだろう。
細かい説明してもサッパリだろうから、ザックリ説明すると、色調がとても正確に見えるレンズ、という話だ。
光の三原色、とかいうのを耳にしたことはあるだろうか。光は分解すると虹色に分けることが出来る。理科の実験でプリズムを通したら、虹色の光に分かれてるのを見たことがあるだろうか?アレだ。アレを思い浮かべてくれ。
このように光が左から差し込み、右に抜けると虹色になっているのは、実は色ごとに屈折する角度が微妙に違うために起こる。
さて、ここでレンズの役割を思い出そう。レンズで大きくモノが見えるのは?屈折を上手く使うからだ。
では、上の「プリズム」を思い浮かべてから話そう。
レンズで見た時、色は果たして、僕たちに正確に見えているのか?
こうした「不安(色収差、と言ったりする)」を取り除くため、アクロマートレンズというのがある。
言うなれば、どの色も均等に屈折する。つまり色が正確に見えるレンズというわけだ!
…ザックリ説明なので、正確な物ではない。大雑把な理解で良いのでこの辺りで説明を終わろう。
つまり、このアクロマートレンズは、観察をするには最適のレンズなのだ!
…なのだが。
ヤベェのよ、これは。
色は確かに正確なのかも知れないが、いかんせん像が…像が歪んでいる…
オマケに、レンズ径も小さいのでストレスマッハである。
これは…ちょっと使いづらい…コレで10000円は…辛い…(モノタロウで購入)
おそらくだが、これの10倍ルーペも似たような特性なのではないかと踏んでいる。
色は正確なんだろうけど、像がヤバい。視界が狭い。色の正確性はこの際気持ち程度にしか感じないくらいに、見え方が辛い。もっと高額なのを買えばマシなのかも知れないが、流石にそこまで出すと…ってなる。
さて、ザックリ四つの小型携帯ルーペを見て来た。
僕自身は歪みが無く視界が広い方が良いので、どうしても池田レンズかな、というところになる。
携帯性を追い求めるならNikonだろうけど、小さすぎて不安になる。ガワも樹脂製なので、耐久性はともかくとして軽すぎて無くしそう、というのもある。池田レンズは良くも悪くも目立つのだ。
僕の個人的なレビューなので、非常に偏っているとは思うが、もしルーペ探しで迷っている方に参考になるならば有難いし、あんまり比べているサイトもなかったので、どうせならやってやろうと開き直って、アクロマートレンズのルーペにまで手を出した次第。まさかこんな結果になるとは思わなかったが、これで〆と致します。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?