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キチキチオムライスでいただいたもの


今週初めは京都でゆるりとお仕事してきました。


毎々月曜日の晩御飯がほぼ唯一と言ってもいい楽しみなのですが、今回はこちら。


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かねてから訪ねてみたいと思っていたオムライス屋さん(洋食屋さん)キチキチオムライスへ。


こちらの洋食屋さん、京都の方はご存知かと思いますがいわゆる京都の飲食店が軒を連ねる先斗町〜木屋町にひっそりたたずむ、お世辞にも決して目立つ立地のお店ではありません。


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しかしながら、お味はもちろんのことフライパンを握るご主人のパフォーマンスが多くのお客さまの心を掴むのでしょう、SNSで情報が多くシェアされていて、私もまた知るところになった次第だったわけです。


今回幸いにも(ほぼ完全予約制で平日でも行列必至!)カウンター席でフライパンを握るご主人のパフォーマンスを間近で拝見し、一人の美容師としても一人の店主としても学びがたくさんあったので、ここにシェアしておきたいと思います。


◇ テンポの良さ


店内のオペレーションまで把握できたわけではありませんが、ライスを炒める手さばきからお仕上げに至るまで一切の無駄もお待たせもない。


全てにテンポとご自身のリズムがある、THE 職人領域のお仕事でした。


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まだキャリアの浅い美容師さんは、先輩たちから

「仕事遅いよ〜〜〜!」なんて叱咤激励を受けることも多いかもしれませんが、「遅い」と映る仕事、そのほとんどはテンポやリズムに欠けているケースです。

確かにヘアスタイルをつくる仕事はスピードレースではありませんから「速い」必要はありません。


でも、「早い」ほうの、「はやい」(わかりにくい汗 お仕事。


見ている方が心地よくなってくるくらいに、テンポのいいお仕事。


カウンターで出来上がりを待つお客様が(私も含めて)ついスマートフォンを向けたくなっちゃうお仕事。


美容師もまた目指すところのひとつなのではないでしょうか。



◇ 実況中継がつくっている価値


チキチキオムライスは、いわゆる主力商品のオムライスが¥2970(税込)。

決して「安い」価格帯の商品ではありません。


それでも、ほぼ完全予約制で平日でも行列必至(私は17時到着の時点で整理券を渡されました)の人気店。

その価格を払ってでもいただきたいという「価値」を認める方がつくる行列です。


不躾ながらもつくってくれている間、スマートフォンでその様子を撮影させていただいていたんですが。


ひとつ、気づいたことがあります。



ふわふわのオムライスをつくっていくそのプロセス、使っている食材、そのすべてをご主人は調理しながらすべて「実況中継」していらっしゃるんです(音声が拾えるようでしたら確認してみてください)。


もちろんそれを聞いてそのままにご自宅でトライしてみようという人もあるかもしれませんが、それを教えて差し上げるためというでもなく、もしかしたらご自身のルーティーンを保持されているだけなのかもしれませんが。


どんなバターを使っているのか、サヤエンドウは、チキンは、炒める火加減は、卵のとき方は、どのタイミングでどんなことに気をつけて何をしているのか。


もちろん耳を傾けずに動画を撮ることに一生懸命なゲストも多くありますが、それでも、ご主人はつくっている料理に対して真摯に、どういう料理を作っているのかを説明しています。


たとえば、

「今日はどこからお越しになったんですか?」

「洋食屋はよく来はるんですか?」


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私たちの仕事でいうところの、

「今日はお仕事お休みなんですか?」

「この後はどちらかお出かけなんですか?」


そんな当たり障りのないお愛想でおもてなしをすることもできるかもしれません。


ただ、自分のお届けしている商品が相対的に高い価格のものであることを自覚しているからこそ、それについての説明を、過程を追いながらお客様に聞かせているということ。


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ここにご主人がつくるオムライスのオンリーワン感、価値を感じることができるのかもしれません。


私たち美容師が、日常に思考を停止させてしまっているひとつひとつのプロセス。

「なぜ今ハサミを持ち替えたのか」

「今髪につけているものは何でどういう効果をもたらすものなのか」

「仕上げをしながらどんなことに心がけているのか」


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対する素材が人間であるという難しさはあるかもしれませんが、「価値」を高めるという視点では大いに学ぶところがあるのではないでしょうか。



◇ エンターテイナーとして、あるということ


ひとしきりお食事が落ち着いたところでわざわざご主人が私のところへ来て、声をかけてくださいました。


「最近は外国人観光客の方が多くてね、みなさん盛り上げてくださるからいいんですけどね。日本人の方は腕組んでじーっと見てるだけ。要は様子を伺うっちゅうやつですよね。正直ちょっとやりにくいなーなんてこともあるんですよ。」


終始調理過程を動画で撮らせていただいていた手前、恐縮してしまうところもありましたが、本音を聞かせてくださったこと。


同じ「つくる」仕事をしているものとして、敬意と感謝の気持ちを伝えました。


ふと見上げると、20年前、30年前のお店の様子、一緒に働いていたコックさんと映るお写真が数点目に入りました。


現在はほぼお一人でフライパンを振りながらつくるオムライス。

これまでの歩みの中でいろんな想いやたくさんのご経験をされてたどり着いた今のスタイルでいらっしゃるのだろう。察するに余りありました。


年長者が一生懸命の、職人仕事。


若いスタッフにテキパキ指示出しして腕組んでいる料理長といった趣に比べると「大変ですね〜〜〜」無責任な哀れみをかけられてしまいがちですが。


失礼千万。

しっかりご自身が看板を背負うアイコンとして1番の人気者であられる覚悟が決まっているような感じがして。


これは今の私にとって、とっても大いに学びを得たところでした。


◇ お客様は予約でいっぱい、働くスタッフはたくさん。


重ねてご紹介すると、本当に平日なのに(月曜の夜なのに!)行列必至。

私がお店を出た後も行列は続いていました。


またその列に並ぼうとするお客様に整理券を配布しに行くスタッフ。


厨房では次のお客様のための楽しそうに仕込みに勤しむ若手女性スタッフが4名ほど(ご主人の手さばきに一緒になって拍手をされています)。


遠のく客足・・・?


人手不足・・・?


飲食不況・・・?



「それ、どこに吹いてる風です?」


なんだろうという印象でした。


同年代以下の美容師界隈、SNSをみていると、


いくつまで現役でできるだろう・・・

この数字を50歳になっても60歳になってもやるのかな・・・

若いお客さん(スタッフ)がなかなか定着しない・・・


こんな発信に触れることも少なくありません。



しかし、どんなもんなのでしょうか。



何が、違うんでしょうか。


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いただいたオムライス以上に、おなかいっぱいになる宿題。


たくさん持って帰ってきた感じがしています。


キチキチ。

また会える時にはもっといい顔していけるように。


ではまた!

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