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神様、仏様、手羽先様…!

素材からだしを取ったり、丁寧にアクを取ながら何時間も煮込んだり。

ありとあらゆる手間暇をかけて作り上げられた渾身の一品より、時間も手間をかかっていない、品数稼ぎのスピードメニューの方が受けが良かった…。
というのは、家庭料理界においてはあまりにもよくある話ではないだろうか。

間違いなく2時間は煮込んだ牛すじの煮込みより、5分で完成させた中華風の味付けきゅうりの方が、明らかに家族の食いつきが良くて、皿が空っぽになるのが早かった時ときたら。

調子を良くして数日後再びきゅうりを出してみたら、今度はそれほどでもなかったりして。

だから「料理は面白い」、と思えるか、はたまた「料理なんて大嫌い」になってしまうのか。
この差は実は結構大きいのかもしれない。

家庭料理界の番人(笑)と料理のプロは、似て非なる存在である。
前者も後者も「誰かにおいしい料理を届ける」理念だけは確かに一致しているが、言ってみればそれだけだ。

前者は「おいしい」だけではなく、栄養バランス、経済バランス、レパートリーなどなど、あらゆる要素を考慮しなければならない。
少なくとも家庭料理に比べれば時間も予算もある程度潤沢で、「おいしい」を実現するために同じ品を何度も作ったり、食材を費やして試行錯誤を重ねられる後者とは、そのアプローチが全く違うのだ。

私は当然ながら前者の「番人」側であり、そちら側の事情しか分からない。
だから、プロの技は必ずしも必要なければ、どんなに邪道だ、と切り捨てられても「おいしいんだから良いじゃない」と思ってしまえる側の人である。

だから、周りの評価よりも基本的には自分の食べたいものを中心に作ることにしている。
自らの気分で手の込んだ料理をする時もあれば、なるべく時短で済ませることもある。それでも辛いと感じる時は、無理をしない。
番人だからこそ、料理との向き合い方は永遠のテーマでもある。

前置きがずいぶんと長くなってしまった。
ここでようやく、タイトルに戻る。

ついに、私は見つけてしまったのだ。何も考えずに作れるほど容易で、図らずも時短も叶い、いつ出しても家族(ほぼ夫一強であるが)に喜ばれる。
ついでに、作った私も毎回美味しいと思える。
そんな夢のようなメニューが、確かに存在したのである。
それ故に、【手羽先「様」】とまで呼ぶに至る。
今から、その全貌をお伝えしよう。

【手羽先様レシピ】
〈材料〉
手羽先 8本
塩こしょう 適量
片栗粉 適量
醤油 大さじ2(30ml)
みりん 大さじ2(30ml)
砂糖 大さじ山盛り1(お好みで調整)

ポリ袋 1枚
直径24-26cmのフライパンと蓋
(この大きさでぴっちり8本焼ける)

〈作り方〉
①ポリ袋に手羽先を全て入れ、塩こしょうを適量振り(8-10振り、しっかりめに振っても問題なし)、片栗粉を入れる(多めに入れて余っても再利用できるのであまり気にしない)。

②①をガサガサと振り、手羽先全体に粉をまぶす。
(写真参照)

これくらいでOK。あまり難しく考える必要はない

③フライパンに油(米油、サラダ油など)
を適量流し、軽く温まったら②を写真のように並べる。なるべく皮目が下になるようにすると良い。

上手く並べるのは意外と至難の業。毎回パズルを解く気分を味わえる

④蓋を閉めてそのまま中火で5分熱する。

⑤5分後、蓋を取り裏返し、再び蓋をし、5分加熱する。

⑥蓋を取り、砂糖、みりん、醤油を⑤に回しかけて中火で熱する。タレが全体に行きわたり、とろみがつけば完成。

強火にすると焦げやすいので注意⚠️

文字にして書き起こすとなかなかのボリュームとなってしまったものの、作り始めればとても簡単である。
手羽先をポリ袋に入れ、粉と塩味をまぶし、フライパンに並べて蓋をし、両面を各5分ずつ焼き、最後にタレを絡める。
以上である。

塩コショウの代わりにマジックソルトやブラックペッパーを使っても良いし、ニンニクを刷り込んだって良い。
ケチャップやコチュジャンを加えれば、ヤンニョムチキン風の味わいを楽しめるし、粉を使わず、切り込みを入れた肉にごま油やニンニク、昆布茶などを混ぜたものに漬け込んで焼けば、塩焼きにもなる。
バリエーションも可能性も無限大である。
あくまで我が家ではタレ味の売れ行きが良い、というだけの話だ。

手羽先は意外とスーパーでも手に入りやすく、値段もまあ手頃な方と言える。同じだけの予算で牛肉を買うことを考えたら、食べ応えや満足感は段違いだと言ってしまってもいいと思う。

知人にレシピ含めこの話をしたら、
「手羽先は買うものだと思っていた」と驚かれ、
「スーパーで見かけたことはあるが、これまで一度も買ったことはない」という返答がきた。
考えてみれば、私の母も、これまで一度たりとも自発的に手羽先を買ったことはないはずだ。かく言う私も、手羽先様にたどり着くまでは、大根との煮物に時々使う程度であった。
だが、自らが紆余曲折を経てこの手羽先様こと「神」の召喚方法を知りし今、ひとたび手羽先を見つければ、買い占めんばかりの勢いで購入するのが常になっている。

ところで、この【手羽先様】については、こんな話が聞かれそうなのが手に取るように分かる。

「いや、多分美味しいだろうことは分かるよ?だけど、手が汚れるのが嫌なんだよね」

そう。神は神だけあって、やはり扱いに苦労する一面もある。
だが、私(たち)は神を愛するが故、どうしてもこの手羽先様を心置きなく味わいたかった。
その末、ある2つの方法にたどり着く。

【手羽先様の食べ方その①】
ビニール手袋を使う
これは、主人が発案した方法で、手羽先様を食す時は、ビニール手袋を装着して食べるというもの。
確かにこれなら確実に手が汚れない。おかげで我が家には常にビニール手袋の在庫がある(コロナ禍の影響も間違いなくあるが)。
実際、ヤンニョムチキンやチーズタッカルビといった、韓国料理専門店を筆頭に、ビニール手袋を使用して食事をする光景もよく見かけるので、わざわざ書かずとも、常識と言えば常識であるかもしれない。

【手羽先様の食べ方その②】
秘技•ポリ袋を使う
こちらは私が発案した方法である。少なくとも今まで同様の方法は見かけたことがないため、よろしければ神攻略の参考にしていただきたい。

ポリ袋は、アイラップなど、どんなものでもOK。
袋の両サイド真ん中あたりをつまみ、半分ほど折り返した状態で手羽先様をつかむ。

少し分かりづらいかもしれないが、袋ごしに手羽先をつかめればOKだ

そして、後は思うがままにかぶりつく。
写真のように手羽中と先端部分を折り、骨を外して手羽中から味わうのがおすすめだ。
もちろん折らなくても食べられるので、そこはお好みで。

出来立ては当然熱いので要注意。手袋も同様だが、少し冷めてからの方が扱いやすい。

こうして袋ごしに神を思う存分堪能しよう。
少なくとも手の汚れは相当に回避できるはずだ。
さて、この方法最大のメリットはこの後である。
神をしっかりと味わい尽くして骨だけになったら、即座に手を離す。
すると…。

※食べた後の画像が含まれるため、若干閲覧注意⚠️

神の終焉だ

このように、食べた骨は全てポリ袋に吸い込まれるというわけ。
同じ要領で、何本でも食べることができる。
やはり複数食べると多少手に油汚れは付くものの、それでも最小限で済むはずだ。

更に、このまま袋を結べば、そのままゴミ袋に直行させることができ、最後まで後片付けにも困らない。

神を愉しむハードルをいかに下げるか…私の試行錯誤で行き着いたこの秘技、もちろん各店自慢のテイクアウト品でも有効なので、もし、この先神を召喚する機会あらば、是非この記事の戯言を思い出し、お試しいただければこれ幸いである。

ごちそうさまでした。

#料理はたのしい

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