いま、思うこと。
朝起きたら、全部元通りの世界になっていたらいいのに。
お花見も稽古もできない春。どんなにお天気がよくても、出掛けられるのはせいぜい家の近所だけ。
いつも使っていた品々はことごとくお店の棚から消えた。お酒と生鮮食品は変わらずにあったのでありがたかった(みんな自炊しないの?ってくらい、生鮮食品は豊富でした(笑))
行きたいとこに行けず、買いたいものが買えず、会いたい人に会えない。
とんでもないことが起きている。
誰もがそうだと知ってはいても、分かってはいなかったんじゃないかなと思う。きっと、今も。
夏を迎え、春よりは色んなことが緩和されてきた。
出掛けることもできるし、お店の棚はいつも通りの品揃えに戻りつつある。会いたい人にも会えて、稽古も再開できた。
それでも、消えないこのモヤモヤはなんなんだろう?
ぼんやりと、じわじわと、染みのように広がるなにか。
名付けようのないこの気持ちに気がついたのは、ごく最近。晴れた朝のこと。
とろとろとまどろみながら、珍しく私より早く起きた夫とぽつりぽつりと話していた時。
(前日にちょっとしたケンカをしていましたが、それとは関係ございません)
カーテンの隙間から、明るい陽射しが見えた。空の色は見えなかったけど、きっと、澄んだ青。
そう思ったら、勝手に涙溢れてきた。それはもう面白いくらい。
「今まで、大丈夫だって、乗り越えられるって思っていたけど、でも、本当はね、朝起きたら、全部元通りの世界になっていたらいいのにって」
そこでやっと、平気だと言いながら私は、ずっとずっと耐えていたんだと気づいた。
なにが平気なものか。ちっとも平気じゃない。返してよ、私たちの世界を返せ。
どこにもぶつけられない悔しいや悲しいがどんどん溢れていた。そんな私を夫は、余計なことを言わずに抱き締めてくれていた。
どうにもならない。なんにもできない。ガラリと変わった世界は、私たちの気持ちなどお構いなしに動いていく。
もうなにを喚いても元の世界には戻らない。それならば、新しい世界で生きていくしかないじゃないか。
分かっている。でも、本当のところは、まだ気持ちが追いついていない。そのことに、気がついた。
これからどんな風になるのか。誰にも分からない。
変わる世界の中で、変わらないものに救われたり絶望したりしながら生きていくということ。
「大丈夫。そばにいるよ」
確かなことは、この先の世界でもあの朝の夫の言葉が私を支え続けてくれるということ。それがある限り、きっと、私は大丈夫。
明日の世界を怖がらずに受け止められるようになりたい。
そんな風に、いま、思うのです。
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