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陸上にハマっている娘に「ほかのこともしてみたら」と言った先生の話[85/100]

「娘さんの成績や勉強について、なにかご希望はありますか」
長女の担任の先生が、私に向かって聞いた。

「自分で考えて取り組んでいるようですので、何もありません。素晴らしいと思っています」と答えたら、「あ、なるほど」と苦笑いされた。

長女の三者面談での出来事だ。

その後の会話は、基本的に長女と担任の先生とで繰り広げられ、わたしはほとんど話さなかった。
黙っていたけれど、言いたいことはめちゃくちゃあった。

長女は中学から陸上部に入り、朝も昼も夜も、家族旅行中でさえも四六時中陸上のことを考えている。
2023年になったとき、東京代表になると言っていて、それを達成した。溶けるように暑い日も、お布団から出られない寒い日も、練習にいく姿を見ているから、自分の子どもとしてではなく、人として彼女を尊敬している。

陸上に時間をつかうために、勉強も短時間集中で頑張っている。
顧問が「成績の結果が悪くなった時に、陸上のせいにするな。それは、自分のコントロールができてないからだ」みたいなことを言い、スケジュールの立て方や時間の使い方までアドバイスしているので、その辺りも抜かりない。

っていうか、そこまでやりたいことあるだけで素晴らしいので、それ以上のことは求めませんけど、というのがわたしの本音だ。

だけど、担任は「そんな陸上ばっかりやってないで、ラボ(中学にある理科の研究)とかボランティアとか、英検とかいろいろと経験してほしいな。そしたら、もっと先生褒められるんだけど」と言った。

さすがに言い返そうかと思ったが、後で絶対娘から怒られる。なんたって三者面談の1秒前まで「先生とママは合わないと思うけれど、何を言っても黙ってて、めんどくさいから」と釘をさされていたのだから。

めちゃくちゃ苦痛の30分だった。終わってから6時間経ったのに、まだイライラしている。

ライティングのお師匠である川内イオさんは、稀人ハンター。「何かにハマりすぎた人」の人生を伝える人だ。その人たちの魅力を知っているから、わたしは娘が「ハマれる」人で嬉しいと思っている。邪魔しないでほしい。

と、ぷんぷんしていたら、ほらね、もう1人のライティングのお師匠さとゆみさんも、今日のエッセイでこう書いていた。

上手くなるためだけではなかった。手に息を吐きかけ温めながら、それでも毎朝ラケットを振り続けた。その自分だけは揺らぎなく信頼できた
(略)
あの時に得た自分への信頼は、47年の人生をずっと支えてきてくれた。今となっては、効率が悪いどころではないと思っている。

マイナス25度のすっぽ抜け【さとゆみの今日もコレカラ/053】

「そのまま、自分の考えた通りに、すすめばいいよ」と娘には伝えた。

「わかってるよ、〇〇先生、めんどくさいから、はいはーいって聞いておけばいいから」と言われた。

娘の方が大人だ。

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