戻る場所を愛することができるとき[38/100]
旅をするから、日常を愛せる。
馴染みのないの文化に触れ、慣れない味のご飯を食べる。ホテルの部屋や旅館、ドミトリーで”ゲスト”気分を味わう。そして、普段の家の安心感を思い出し、自分好みに料理することの贅沢を感じる。
この気持ちがわかるようになったのは、いつからだろう。
大学時代は暇さえあれば旅に出た。お金がない時は、野宿やヒッチハイクだってした。当時の旅は、私にとって「苦労をわざわざしに行く行為」だった。
帰宅すると、次の旅へ想いを馳せた。どこにいこう、何をしよう……と。今いる場所のことを「当たり前」だと思っていたのかもしれない。
いつの間にか、旅先で日常を想い、戻っていく場所を愛せる自分になっていることに、さとゆみさんのコラムで気付いた。
いつからだろう。そう考えてみると、社会人になってからだと思った。自分で自分の生活を支えていかねばならない、社会人としての責任。1人暮らしをしたときに、トイレットペーパーの価格に驚いた。電気ガス水道代の引き落とし後の残高に驚き、カードが不正利用されたかと思った。それまで「あって当然」と思っていたものは、父と母が用意してくれていたものだった。
「戻ってきた場所を愛することができる旅」ができるようになるのは、もしかしたら自立できた時なのかもしれない
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