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推しと推しのお陰で拡がった世界に助けられた話

昨年末から今まで、私の人生が突然波瀾万丈になってしまいました。
簡単にちょっとボカしながら書くと、12月に仕事でお世話になった人と義理の父を立て続けに亡くし、ちょっと落ち着いたかな?と思っていた3月初めに私の父が急逝してしまったのです。
転倒して頭部を強打しそのまま帰らぬ人になる、なんてそんなのアリ?
このご時世でずっと会えていなかったのに、そのまま逝っちゃうなんて事ある?
精神的にも物理的にもバタバタで、ちょっとでも気を抜くと容易に倒れそうな毎日でした。
そんな私を救ってくれたのは、推しと推しによっていつの間にか拡がっていた私の世界でした。
念のために、、、リアルでそして外部から助けてくれたのは他でもない最愛の夫です。
精神的にも物理的にも支えてくれたのは彼でした。

そうではなく。
続けてお世話になった人を亡くして、荒れ狂う自分の内面と1人で対峙しなくてはならなくなった私を救ってくれたのが、思考の手助けとなったのが、推しと推しによって拡がっていた私の世界でした。
吐き出さないと前に進めない気がするので書いてみようと思います。

初めましての方のために。
私の推しはピアニストの塩谷哲(しおのやさとる)さん、愛称SALT(ソルト)さんです。

1. ライブとラジオに救われる


幸運なことに12月にも3月にもSALTさんのライブに行ける機会がありました。
ありきたりな言葉で書いてしまうと本当に癒された。。。
ライブを観ている時間は音楽だけを楽しめて、現実から離れられたから。
ホッと一息つける大切な時間でした。

その中でも特に心に残った曲が何曲かあって。
まず1曲目は12月のSALTさんがホスト役を務めるSaltish Nightで半崎美子さんが歌われた「稲穂」。この曲、途中からAmazing Graceが高らかに歌われるんです。初めて聴いた曲でAmazing Graceになるまでもグッと来ていたけど、Amazing Graceになって状況とも相まってこみ上げてくるものがありました。

https://open.spotify.com/track/3LomVwTltl5j3jWXN4qNiS?si=J8YgY-6jRhWQ2A_HEP-8HA

次にSALTさんがアンコールで弾かれた「Life with you」。元々とても好きな曲ではあるけど、”ライブって生きていないとやれないし、観に来れないんだよなぁ”とライブを観ている最中ぼんやり思っていた所だったので、ど真ん中にきてしまいました。。。SALTさんがこうして生きてピアノを弾いていてくれる、、、その事が本当に貴重な瞬間である、と実感して。そしてLife with you...まだ一緒に生きてくれるんだなぁと思ったら嬉しくて。一緒に生きれる時間は案外短い、と実感したばかりだったから余計に嬉しかったのかもしれない。


3月は若手ジャズピアニストの大林武司さんとのデュオライブへ。そこで一番印象に残ったのはこちらもアンコールで弾かれた「Ode to Liberty」
昨今の状況からSALTさんが作られた新曲。オスカーピーターソンの「Hymn to Freedom」のオマージュとして作られたこの曲。讃美歌のように始まる厳かで静謐な曲。SALTさんの真摯な祈りが込められているように感じて。勝手に祈ってもらった気になって。救われました。本当に救われました。

加えて、3月はラジオへのご出演も多くて。声を聴くだけでも何かホッとした。これが推しかー!!と改めて感激したりしました。
ラジオって温度の感じられるメディアですよね、改めて。それを最初に思ったのは、緊急事態宣言が初めて出されてよく分からないまま在宅勤務に突入した頃。始めの内は音楽を聴きながら仕事をしていましたが、それだと何だか寂しくて。次に映像は観ないんだけど動画を再生しながら仕事をするようになり。でもやっぱり映像を観たい、という欲求と戦うことになり。ふと思いついてラジオを聞いてみました。それが何とも心地よかった。音声だけなのに孤独を感じない、と言いますか。そんな事も思い出したりしました。そしてやっぱり推しは偉大だ、という事も思ったり。

2. セッションしてたら楽しくなった


忌引休暇、という制度があるじゃないですか。実際、葬儀の準備なんかで忙しいので会社には行っている暇はない訳ですが。
それでも何日かあった休暇の中で、ポッと空く時間もあって。そんな時に自宅に1人でいたら、何とも言えない気持ちになって。
その時に救われたのが、オンラインジャムセッションする時間と仲間でした。ずーっと以前から即興演奏というものに興味はあって一度はチャレンジした事もあったけど、仕事が忙しかったり、他ジャンルの音楽へ傾倒していたり、で憧れだけがある状態が続いていた。そんな時にSALTさんの音楽に出逢って。到底あんな風にはピアノを弾けやしないんだけど、少しでも近づきたくて。重い腰をあげてオンラインでジャムセッションできるコミュニティに"えいやっ"と入っていたのです。それにこんなに救われるとは。
そこのコミュニティ、平日昼間もオンラインジャムセッションを開催していて。普段は私、その時間帯のセッションには参加できない訳ですけど。1人で部屋で泣いているより、仲間と楽しく音楽する方が良いと思って参加していました。もちろん父のことは何も言わずに参加していたんですけど、珍しく平日昼間に参加する私も快く迎えて一緒に音楽してくれる。そのことがどんなにありがたかったか。
でもきっと。私SALTさんのピアノに出逢っていなかったら、思い切ってコミュニティに参加することはなかったと思います。SALTさんのお陰で拡がっていた世界のお陰なんです。

3. カムカムエブリバディが大切なドラマになった


4月初旬に最終回を迎えた朝ドラ「カムカムエブリバディ(以降カムカム)」。このドラマにも救われました。音楽担当は金子隆博さん。SALTさん要素がない??いやいや、そんなこと無くもないんですよ。(え?どっち?笑)
ラジオ英会話とジャズがドラマの大きな軸になっていた事もあり、ドラマの音楽は錚々たるジャズミュージシャンが演奏していました。その中でベースを数多く弾かれていたのが井上陽介さん。陽介さんはSALTさんのレギュラートリオでベースを担当されていたり、他ユニットでも共演があったり、音大でも先生仲間であったり、、、とSALTさんとは交流が深いミュージシャンです。私はジャズに本当に疎かったので、陽介さんは押しも押されぬファーストコールのミュージシャンにも関わらず、SALTさんきっかけで知ったんですけども。本当に失礼な話です。
で、カムカムです。私は基本的に朝ドラは観ない派なんです。感情移入し過ぎてしまうのが自分でもわかるし、観たらどっぷりハマってしまうことを知っているから、「観ない」という選択をいつもしているのです。
それがカムカムについては陽介さんのツイートで、陽介さんが劇伴に参加されている事を知りました。陽介さんのベースを聴ける〜、ジャズも聴ける〜、という事で見始めたのがキッカケなんです。SALTさんのファンになっていなかったら…。陽介さんのツイートを目にするチャンスは限りなく少なかっただろうし、そもそもジャズという音楽に興味を持っていなかったので、カムカムを観る事はなかっただろうと思います。

父が突然意識不明の状態に陥ったのが3月初めで亡くなったのがその1週間後。葬儀はさらにその1週間後でした。(今は本当に火葬場大混雑ですね)

正直に言って父と良好な関係が築けていなくて(今思うと私の側に変な思い込みやワダカマリがあり過ぎた所もあります。もちろんそれだけじゃないけど)、ちゃんと話をできないままに、話のできない場所へ父は旅立ってしまいました。

そんな状況でのカムカムです。

親子3世代100年にわたる物語だったため、全ての事情を俯瞰で見れて知れるのは視聴者のみ。その時代を生きる人たちは、知れない事がたくさんあって、「あー、そんな誤解を」とか「どうしてすれ違うかな」という事も起こる訳です。でも、これ当然ですよね。だって親の本当の気持ちは子どもには分からないし、子どもの本当の気持ちも親は知れない事もある。父の気持ちなんて私はきっとこれっぽっちもわかっていなかったんだろうな、と打ちのめされもしました。

そして良かったのが。
親は最初から親ではなかったということに気付けた事。
親って、目の前に現れた時から親だから、1人の人間であると認識する前に"父親"と"母親"という生き物だと思っちゃって、親になる前の人生があった事想像できていなかったなぁって。もちろん頭では親にも子供の頃があって、青春時代があったという事は理解しているんですけど。心で理解していなかったというか。
でも、3世代の物語であるカムカムを見て、みんな子どもの頃があって、青春時代があって、恋をして結婚して親になるということを見せつけられました。父も1人の人間だったんだ、という事がわかれて良かった。もう少し早く知れていたらもっと良かったけど。

それから。私がとっても救われた台詞があります。

るいちゃんが過去の出来事を謝る雪衣さんに言った「もう自分を責めんといて下さい。みんな間違うんです、みんな。」

そうか、人はみんな間違えてしまうんだ、と少し救われました。
亡くなる少し前に父から着信がありました。だけど忙しくて折り返しできなかった。そしたらLINEが来たからそれでいいやと思ってしまった。また会った時に話せばいいやと思ってしまった。悔やんでも悔やみきれないけど、これも人間だから間違えた事なんだなぁと。ちょっと自分を許せました。

カムカムを観て。父とのことを自分の中で整理するキッカケとなりました。まだ整理しきれないけど、向き合うキッカケとはなりました。物語の中のひなたちゃんが私よりちょっとお姉さんで、るいちゃんとジョーさんは父と母とほぼ同年代、安子さんと稔さんが祖父母世代で、重ねやすかったのかもしれません。そんなドラマに出逢えて良かったなぁと。ドラマの最終週は泣き過ぎて頭痛かったり、これからどうやって出社するの?とひどい顔になったりしていましたが。それもデトックスだったのかもしれません。

4. 初めて泣けたのもSALTさんのお陰

これは父が旅立った後、ちゃんと泣けたのはSALTさんのお陰だった、という話です。亡くなる前、病院に駆け付けた時はメソメソ泣いたりしたんですが、亡くなったら"やらなければならない"事に追われて、"ちゃんとしなきゃ"と思っていたからでしょうか。母が予想よりも精神的にやられていたので、"私がしっかりしなきゃ"と思っていたからでしょうか。ほとんど泣いていなかったんですよね。
それがどうした事でしょう。

忘れもしない4/1の夜。
小曽根真さんと2人の若手ピアニスト:壷坂健登さん・武本和大さんのブルーノート東京でのライブ配信を帰宅中に電車で観ていたんです。

アンコールで、SALTさんが飛び入りされました。前日、飛び入りされたことは知っていたので2日連続は無いかなーと諦めていて。なので驚いたし嬉しかった。と、同時にボロボロ涙が溢れてきて自分でも驚いちゃって。
SALTさんがピアノを弾き始める前、画面にSALTさんが映った瞬間にボロボローッ!えーっ!と自分でもなりました。(電車だしねw)

配信鑑賞前、稽古伴奏をしていて。そこで父を知る方が思い出話をしてくれたりしたんですよね。だから感情が昂っていたのかもしれないけど。張り詰めていた私の気持ちを一瞬にして解きほぐしてくれたのかもしれません。

小曽根さんとのピアノデュオもめちゃくちゃ楽しくて。あー、音楽って本当に良いなぁ、楽しいなぁと思えました。

5. ピアノを続けられています

私、会社員をしながら伴奏ピアニストとしてちょこっと活動したりしています。そして父は大学OBで結成された合唱団に所属していた歌好きの人でした。そんな背景もあって、仲間内で開催した演奏会で父の歌に合わせてピアノ伴奏した事がありました。父も失敗していたけど、私もちょっと失敗しちゃって。もう一度できたら、もっと上手く弾いてあげられるのになー、と思っていたりしました。結果としてもう一度の機会は訪れず、それが最後となってしまいました。

以前もあったんですね。とてもお若くてお元気だった方の伴奏をして。80点は取れた伴奏だったけど100点じゃなかったなぁ、という感じでした。次にやる時はああしよう、こうしよう、そうしたら彼女の歌がもっと映えるんじゃないか、なんて自分なりに考えていました。結局、その機会は訪れることはありませんでした。若くして急逝してしまったんですね。
その時に私、伴奏することはとても怖いことだ、と思いました。もしかしたら誰かの最後の演奏を共にするかもしれなくて、私の伴奏のせいで台無しにしてしまうかもしれないんだと思ってしまった。改めて演奏は一期一会だからこそ、毎回毎回悔いないようにしたいとその時も思ったんです。

そして今回。やっぱり振り返ってみれば父の独唱の演奏としては、私の伴奏で歌ったのが最後となりました。そしてまた怖くなった。私がそんな大役を務めていいのか、務めるだけの努力をキチンとしているのか。考え込んでしまった。そうしたら、ピアノを弾くことが、伴奏することが怖くなってしまいました。

でも。SALTさんのピアノを聴いて。歌い手さんと共演されている演奏を観て聴いて。やっぱりピアノを弾きたいと思えました。SALTさんみたいには到底弾けないけど、でもちょっとでも近付けるようにまた頑張ってみたいなぁ、と思えました。

まとめ:推しができると世界が拡がる

以前、アメトーークで勉強できる芸人だったかな?の回で、戦国時代を理解したければ推しの武将を1人作れ、と言っていた芸人さんがいらっしゃいました。推しの武将ができると、その人と関係がある武将を覚えられる。そしてその関係者とどんどん拡げて覚えていける、というようなお話でした。

まさにそれで。SALTさんが推しになったら、SALTさんと関わりが深い方たちの事も知るようになり、お気に入りのミュージシャンも増えていき、SALTさんが弾かれている即興演奏やジャズ、ラテン等の音楽にも興味が沸くようになり、さらにSALTさんが影響を受けたり好きだと仰っているミュージシャンも聴くようになり、そして好きになっていき。自分も即興演奏がしたくて、そんな世界にポチャンと飛び込み。と
気付けば私の世界が拡がっていて、今回はその世界にずいぶんと助けられました。

そんなお話でした。
父の四十九日を迎えるにあたって書いておきたいなーと。取り留めなくなっちゃったけど、書きたかったから書きました。
もしも、ここまでお読みいただいた方いらっしゃいましたら、お付き合い下さりありがとうございました。

私が繰り返し観ていた動画です。特に最後の「星の夜」がお気に入りです。


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