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中小企業にも求められるサステナビリティ経営

サステナビリティ情報の有価証券報告書への開示が義務化へ

6月13日、金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告が公表されました。この中で、気候変動、人的資本、多様性など企業のサステナビリティ情報について有価証券報告書(以下、有報)に「記載欄」を新設することが明らかになりました。

また、サステナビリティ情報が、自社の中長期の企業価値や投資家の投資判断において重要である(以下、重要性がある)場合には、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)のフレームワークである4つの柱(ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標)に基づいて開示することが求められます。

これは、ISSB(国際サステナビリティ基準審議会)が策定を進めている開示基準の考え方を参考にしたものです。有報への具体的な開示内容については、ISSBの動向などを踏まえ決定されることになりますが、早ければ2023年3月期から適用となる可能性もあり、注視が必要です。

中小企業でもサステナビリティ経営への取り組みが必要

有報にサステナビリティ情報の記載が求められるということは、取りも直さず、企業によるサステナビリティ課題への取り組みの実践が求められていることを意味しています。

また、TCFDの4つの柱に基づいた開示が求められるということは、その取り組みが自社のガバナンス、戦略、ビジネスモデルなどと密接に結びついたものであることを意味しています。

今後、有報の提出企業(4000社超)では、大企業はもとより中小企業でも、長期視点で組織的・戦略的にサステナビリティ課題に取り組む経営(サステナビリティ経営)が実質的に求められます。

サステナビリティ経営では以下のような取り組みを基本軸とします。

  • 適切なガバナンスの下、サステナビリティ課題に関連するリスク及び機会への対応を統合した経営戦略の策定・実行

  • サステナビリティ課題に関連するリスク及び機会の識別、評価、管理

  • KPIに基づく取り組みの進捗や成果(インパクト含む)のPDCAマネジメント

  • 投資家を始めとするステークホルダーへの情報開示と対話・エンゲージメント

自社の強み・独自性を活かしたサステナビリティ経営の実践を

サステナビリティ経営が求められるのは有報の提出企業に限りません。
企業が持続的な価値創造を実現するためにはサステナビリティ経営への取り組みを避けて通ることはできません。

その際、経営資源が限られる中小企業において重要なことは、取り組むべきサステナビリティ課題の絞り込みです。

自社の価値観(企業理念、パーパスなど)や重要性の判断に基づき、自社の強みや独自性を活かせるサステナビリティ課題を組織横断的な検討を徹底的に行った上で特定し、経営資源を重点的に投入することが重要です。

また、中小企業にとって、バリューチェーンの連鎖における顧客企業からのサステナビリティ対応要請は優先度の高い経営課題です。
EUで早ければ2023年にも適用されるCSRD(企業サステナビリティ報告指令)の影響はバリューチェーンの連鎖を通して国内の中小企業にも及ぶことが予想され、留意が必要です。

中小企業の強みは、経営者の決定事項に対し、組織横断的に迅速かつ一丸となって取り組むことができる点にあります。その意味でも、経営者のサステナビリティに関する見識リーダーシップ及び従業員エンゲージメント(従業員が会社の方向性に共感し、自発的に貢献したいと思う意欲)が鍵を握ります。

中小企業の経営者は、サステナビリティ課題と自社の経営との関連性について深く洞察すると共に、自社の価値観やメガトレンド(外部環境変化の大きな潮流)を踏まえた自社の進むべき方向性を長期ビジョンとして明確に示し、対話などを通して従業員の共感を得ていく地道な努力が求められます。


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