特別授業

「理科室に、こんなものが落ちていました」
授業が始まると武者先生が唐突にそう言いました。
落ちていたのは、誰かをいじめようとしてるのが分かる内容の紙切れでした。
武者先生は心底呆れた表情をしていました。
「誰が書いたのかは分かりませんが、恐らくこのクラスの誰かだと思われまーす」
敬語を使っていましたが、言い方は全然丁寧ではありませんでした。
先生はそのメモを書いた人を炙り出すかのように一言二言なじり、それから黙ってゆっくりと全員を見渡しました。その間、皆はまるでクラス全員で悪いことをしてしまったかのように沈黙していました。
「全員目を瞑って机に伏せろ」
唐突にそう言われて、みんなで机に伏せます。
「これ書いたやつ正直に手を挙げろ」
これで手を挙げる人はいないだろうと私は思っていました。
「まあ、そうだよな」
先生はそう呟いて、全員に顔を上げさせました。やっぱり、誰も手を挙げなかったようです。
「今から授業内容を変更します。全員、いじめについてどう思うか5分間考えてください。周りと相談しても良いです。はいスタート」
全員、最初は黙って考え込みました。少しずつ相談する人が出てきて教室がざわつきましたが、誰が何を話しているのか聞き取れるくらいには静かでした。
妙な緊張感の中、私もいじめについて考えました。
当時、いじめで自殺した人のニュースは見た事がありました。いじめのせいで自殺するのはいじめっこに殺されてるようなものだから、いじめをする人は人殺しと同じくらいひどい事をしているんだ、という感じのことを考えていました。

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618字
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