髪にガム事件

私はゲームが大好きで、幼少期にもかかわらずゲーム友達が何人かいました。その一人が近所に住むダニエル君です。
ダニエル君は私の姉と同級生で、その頃は既に小学生でした。私とどういう経緯で仲良くなったのかは覚えていませんが、よく一緒にプレステのクラッシュバンディクーを交代でやって楽しんでいました。
ダニエル君の母親は教育熱心なのか、私と遊んでいるダニエル君に向かって「宿題はやったの?」と部屋まで来て聞いてきました。やたらしつこく聞いてくる日もあって、一度だけダニエル君が「っせーな!分かったよ!!」と言ってコントローラーを床に叩きつけて宿題をやり始めた時がありました。どうしていいかわからず、私はダニエル君が放り投げたコントローラーを拾って、黙ってゲームの続きをプレイしました。

ある時、ダニエル君の部屋にはさみが落ちていました。私はいたずら心で、ゲームに夢中になってるダニエル君の後ろ髪を少し切り落としました。
「ん?何してるの?」
「なんでもないよ」
髪を切られたことに気づいていたのかどうかわかりませんが、面白い反応が無かったことにガッカリして、切った髪をこっそりゴミ箱に捨てました。

家に帰ってから、ヤバいことしちゃったんじゃないかと焦り始めました。
髪を切られたことに気づかないことを願っていましたが、翌日、ダニエル君とその母親がうちに来ました。気づいたんだな、と察しました。
「うちのダニエルがキミに髪の毛を切られたって言ってるんですけど、本当なの?」
普通に腹が立っている様子でした。怒られたくなかったので、咄嗟に嘘をつきました。
「あの、髪の毛にガムがくっついちゃって、それで取れなくなっちゃって、髪の毛を切っちゃいました」
幼い私でも(これは無理があるだろ…)と思いましたが、
「そうなの?」
「うん」
と、何故か被害者であるダニエル君が嘘をつき、母親はそれに納得して去っていきました。

後日。
「先日はどうもお騒がせしました」
と、ダニエル君の母がうちに来て謝罪し、お詫びの品としてメロンを贈呈してくれました。悪いことをしたのはこっちなのに……と、初めて罪悪感を感じました。

ここから先は

0字
他人がどう生きてきたのか覗いてみませんか? 短いエピソードがたくさんある構成になってるので、ちょっと空いた時間の暇つぶしにちょうど良いと思います。小学校卒業までを書いて、文字数は約4万文字です。文字数当たりの価格は一般的な文庫本より少しだけ安く設定しました。

凡人伝

300円

私の自伝(エピソード集)です。小学校卒業まで書いてあります。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?