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夕立のさかな
街はもう 夏将軍 雲がくれの季節
今年の夏は、自分で休む期間と医療へお世話になる時期とが混ざりあったものになる。
自分で休み時間は、生活リズムを一定にしながらも身体を必ず動かすことにして過ごしている。そのために、夕方にお出かけすることにした。お目当ては少々歩いたところにある本屋さんだった。
何となく雨が降りそうな香りがした。でも、晴れに関して自信のある僕は、「大丈夫だろうなぁ」と高を括っていた。
ほくほくで選んだ帰り道、とんでもない雨が降ってきた。バケツをひっくり返したような雨が、容赦なくTシャツを濡らす。日傘をさし直したけれど、斜めの風が辛い。
辺りが真っ白になってきた。風が暴風へ進化してきた。諦めて傘を畳んだ。その瞬間、恐らく開いていた口が水でいっぱいになった。「雨で溺れるとしたなら、素敵な死因かもしれないな。」と思った。髪も顔もぐしょぬれになった。段々と洋服の重さを感じる。ズボンの裾から、ぽたぽたと垂れている雫がつながって、雨樋みたいになった。
街中が爛々と鳴ってる
太陽の触覚が 俺に伸びてる
永遠の存在を 今、確かめる
夏の雨はこんな気持ちになる。雨で溺れながら、夏の思い出が永遠の存在であるのを確かめている気がした。
せっかく買った本は、半分くらい濡れてしまった。悲しいけど、3日くらい干してみようと思う。お気に入りの靴もびしょ濡れだ。お散歩に行くのに明日から困ってしまいそう。
でも、いいやと思った。夕立のさかなになった気持ちで清々しかった。また蝉が再開している。
「なんだ、夏だったのか。」
気づいたら、俺は、何となく夏だった。