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浪江女子発組合のこれまでと、これから

佐々木彩夏さんが立ち上げたアイドルグループ、浪江女子発組合のことを自分なりに振り返りたいと思います。

浪江町は福島県の浜通り、太平洋に面する漁業の盛んな町です。
東日本大震災で地震と津波の甚大な被害に遭い、更に原発事故により全町民が避難を余儀なくされました。現在は避難指示が解除された地域への帰還が進められています。
そんな浪江町からももクロへオファーが届いたのが2年前。町役場からスターダストプロモーションへ1通の招請状が送られたのがきっかけでした。2019年の震災の日に浪江の小学校へサプライズ訪問したことから始まり、秋のお祭りに出演、2020年開催の春の一大事を浪江町と共催、とつながりを深めていったのです。
残念ながら春の一大事はコロナの影響で延期を余儀なくされましたが、浪江町との関わりを持続していくためのプロジェクトとして立ち上がったのが、浪江女子発組合(以下JA浪江)です。
JA浪江は佐々木彩夏さんがプレイングプロデューサー(略してPPP)を務め、メンバーはアメフラっシから4人全員、B.O.L.Tから内藤るなさん、高井千帆さんの総勢7人。所謂3bjr直系です。

JA浪江の成り立ちは新しい地域振興や被災地支援のあり方を示していると思います。
ももクロが浪江町からお誘いを受け、ももクロとして浪江町とどう接していくべきかを考えた時に、ももクロ本体としても勿論のこと、別動隊での関わりを模索することになったといいます。
グループ立ち上げ当初から浪江町の全面バックアップを得て、定期公演(JA浪江では「定期大会」と呼びます)を町役場隣の町営施設で無料で毎月開催。定期大会では町役場の仕掛け人の登壇から始まり、地元コミュニティFMの公開取材や産業振興事業の紹介を行うなど、浪江町を知ってもらうための仕掛けを次々に打って出てきました。
定期大会の様子は公式TwitterやYouTubeでのライブ配信を行い、浪江町に行けなかった人にもお届けしてきました。いま気づきましたが、コロナ前から配信に注力していたのはなかなかのものではないでしょうか。
そしてこのJA浪江を率いるのがももいろクローバーZの佐々木彩夏さん。JA浪江の楽曲、企画、グッズ展開などをプロデュースしながら自らもメンバーとして活動しています。プロデューサー佐々木彩夏の手腕は自身のソロコンサートやアイドルフェス主宰でファンの間では知られていますが、JA浪江では地域振興という新しい局面で実力を見せつけています。


JA浪江は2019年11月の「復興なみえ町十日市祭」でお披露目されました。当時のお祭りの告知ページはこちら

  ◆午後3時~午後3時30分:ご当地アイドル「浪江女子発組合」
   浪江町の新しいご当地アイドルのお披露目です♪

まさしくこれが、浪江女子発組合爆誕の瞬間になろうとは。

お披露目で初めて歌ったのが「なみえのわ」。
浪江町の情景を歌いこみながら、みんなで少しずつ歩いていこうと優しく語りかけてくれる、素晴らしい楽曲です。
浪江町の現状を目の当たりにして、ももクロの楽曲のようにエールを送ることすら躊躇ってしまうことに直面した佐々木PPPが、敢えてももクロとは一線を画す曲づくりに振ったとのこと。
NHK WORLD「J-melo」出演の際にPPPから語られていたこのエピソードには、ももクロとしてではなく、浪江の名前を冠するグループとしてどう携わっていくか、浪江女子発組合がどうあるべきか、というPPPの思いが込められているように感じたのです。

2019年12月からは町役場敷地内の「サンシャイン浪江」を拠点に、毎月無料の定期大会を開催。

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会場で配られたチラシ。手づくり感が溢れています。

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サンシャイン浪江は普通の学校の体育館っぽい建物です。定期大会は撮影可タイムがありました。


しかし2020年3月よりコロナ蔓延につき、観客を入れる公演を休止し、配信による情報発信に切り替えました。
JA浪江のコンセプトのひとつに「メンバーと組合員(ファンの呼称)みんなで浪江に行って、美味しいものを食べて浪江を堪能しよう」というものがあります。人の移動が禁忌される昨今の事情を踏まえると、現地での定期大会開催を避ける判断は残念ながら妥当でした。
次善策として、浪江町を知ってもらう、浪江町に興味を持ってもらうことを活動の軸に据えての展開が始まります。3月には高城れにさんの配信ライブに参加、6月にはやついフェス、10月にはTOKYO IDOL FES.へ出演、と徐々に活動を広げ、10月末には立川ステージガーデンで初の東京公演を開催しました。(立川については別掲します)

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立川でも撮影可タイムがありました。3階席だったので微妙な遠さ。

年が明けて2021年。
立川で発表されていた1月の定期大会は緊急事態宣言の煽りで延期になり、3月、紆余曲折を経て浪江での定期大会を仕切り直します。とは言え首都圏から組合員を連れていくのは時期尚早との判断から、現地観覧は東北地方在住者に限定、会場は町役場の駐車場での開催となりました。が、当日はまさかの大雨(JA浪江メンバーは雨女が多いとPPP自己分析)により客入れは急遽中止、サンシャイン浪江からの無観客配信に切り替えを余儀なくされます。
次いで4月、奇しくも「ももクロ春の一大事」が延期開催される筈だったこの時期に、浪江に組合員を集めての定期大会がやっと実現できました。観覧は3月よりさらに絞って福島県在住者限定。会場は駐車場なので天気が心配されましたが、当日は防寒の心配すらなくなる勢いの好天に恵まれたのです。

この定期大会で、佐々木PPPより重大発表がありました。以下、その時の書き起こしを掲載します。

(コロナの影響は)浪江女子発組合だけじゃなく、全アイドル、全アーティストの皆さんが受けていると思うんですが。私たちは浪江に皆んなで来るというのが一番のコンセプトで、そんな中で県を跨いでの移動が出来なくなったりして。
今日も421日ぶりに浪江で組合員さんとのライブになったんだけど、やっぱり私たちの軸っていうのは浪江に他県の皆さんと一緒に皆んなで来て、私たちのライブを観て美味しいもの食べたりして、浪江町のあったかい、良いところを感じてもらえれば、というのが一番大事な軸の部分なので、浪江町に来て距離の近いライブをするってのが勿論一番大事なことでこれからも大切にしていきたいことなんですが。
私たちも「浪江女子発組合」というグループとしてもっともっと成長していきたいというところがあります。いつもはアメフラっシ、B.O.L.T、ももクロという3つのバラバラのグループで活動してる皆んなですが、「浪江女子発組合」というこのグループで、目標を立てて、大きな目標に向かって進んでいきたいと思います。
なのでここでその目標を発表させていただきたいと思います。

私たち浪江女子発組合は、2021年、今年中に、日本武道館でライブができるようにしたいと思います。

コロナももうちょっと収まって、浪江町の皆さんも東京に足を運んでいただいて、ライブができる状況になったら良いなと思います。勿論浪江町のライブは大切にしつつも、もっともっとパフォーマンスも上げてって、ひとつのアイドルグループとしてもみなさんから認めていただけるように頑張っていきたいなと思います。
これからも浪江町の皆さん、組合員の皆さん、この浪江女子発組合をよろしくお願いします。
という意思表示でした。

(メンバーの)みんなにもね、こんな具体的な目標、こういうグループになっていこうってのはなかなか話したことがなかったじゃない?
ただ、モノノフさんの中にはももクロ春の一大事までの限定ユニットなんじゃないかと思ってる方々も多かったと思うけど、春の一大事も来年の春に延期になったのもあり、別にいつまでって期間を決めてるグループって訳でもないので、みんなで頑張っていけたらと思うんですけれども、どうですか?
(メンバー一同)頑張ります!
軸になるアメフラっシやB.O.L.Tがあっての浪江女子発組合だと思うので、各グループも頑張りながら浪江女子初組合も頑張っていきたいと思いますので、よろしくお願いします!


【要約】
コロナで活動の制約を余儀なくされてきたが、皆んなで浪江に行って浪江を楽しもうというコンセプトはこれからも大切にしていく。
同時に、グループとしてのこれから、目標を明確にしておきたい。
そこで、今年中に武道館に行くことを宣言。
もっとパフォーマンスを高めて、アイドルグループとして認められるようになりたい。
春一まで、というように期間を定めての活動ではない。
アメフラっシ、B.O.L.TがあってのJA浪江。各グループを頑張った上でJA浪江でも頑張りたい。



まさかの武道館宣言。

佐々木PPPの中で、浪江町を広めるという役割とは別に、グループとしての浪江女子発組合のビジョンが確立していたのが何より嬉しかった。
春一を告知するための期間限定ユニットではないのか。自分自身も最初の頃はそう思っていたのですが、活動を見ているうちにPPPがもっと先を見据えていることに気づきました。そしてそのことをはっきりと言葉で伝えてくれたのが「武道館宣言」でした。
後輩グループが各々しっかり成長していくことを前提に、JA浪江も育っていきたい、という言葉が聞けたのも嬉しかったです。
本人はあまり声高にはしていませんが、後輩たちに自分が見せられる景色や経験を伝えていきたいというPPPの思いが込められていると受け取りました。JA浪江とともに成長していく後輩たちに、期待と希望がつのるばかりです。

JA浪江が旗揚げしなかったら、ももクロさんが浪江町を訪れなかったら、浪江町のことも原発被災地の現状も、ほとんど知ることがなかったと思います。
事実、2019年の春まで、福島県浜通りについて見知っているのはれにちゃんのソロコンでお世話になったいわき市までで、その先はニュースを通じての漠然とした印象だけしか無かったのでした。
しかしJA浪江を通じて、ゆるキャラGPで浪江町のうけどんに毎日投票したり、町役場を出て国道沿いのお弁当屋さんを推したり、道の駅なみえの新商品が気になったり、と自分でもびっくりするほど浪江に親しみをもつようになりました。
震災と原発事故は現在進行形ながら日常も取り戻しつつあるという現状は、もっと多くの人に広めていってほしい。そのためにJA浪江が果たす役割は大きいと思います。
アイドルファンの習性として、推しが行った場所、食べたものは自分もトレースしたいという特徴があります。
浪江には既に沢山の足跡があり、たくさんの物品や美味しい食べものがメンバーから紹介されています。「被災地を応援しよう」などと構えることなく、ファンがどんどん訪れることで新たな広がりが出来ていく、それこそが「なみえのわ」なのかも知れません。

なみえのわ、どんどん広がっていきますように。

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JR浪江駅に、ももクロとJA浪江のサインが飾られています。イラストはメンバーの小島はなさんによるもの。

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