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リアル脱出ゲームに出逢った日のこと

7月7日は、「リアル脱出ゲームの日」でした。
2007年の7月7日に史上初のリアル脱出ゲームが開催されたことにちなんで、昨年 制定された記念日です。

個人的なことですが、2024年の今年は、私がリアル脱出ゲームに出逢ってからちょうど10年目になります。

初めて遊んだのは、2014年10月の「夜の遊園地からの脱出」。
当時の私、厄年というかなんというか、大変なことが立て続けに起きて、たぶん人生でいちばん心がへちょへちょになっていて。本当は遊びに行くのもちょっとためらうくらいダウンしてたんですが、友達がキラキラした目で誘ってくれるもんだから、その熱に乗せられてついて行ったんです。

昼間のうちはやっぱり、気を抜くと悩み事が頭の片隅でグルグルしてしまう瞬間も多かったように思います。けれど、開演時間になって 大きなホールでストーリーの導入を聞いているうちに、物語の世界にぐんぐん引き込まれていくのを感じました。なぜかは知らないけど、私はいま いつもとは違う世界にいて、目の前には助けたい人がいる。難しいことはさておき、どうやら謎を解いていくと世界を救えるらしい。……やってやろうじゃないか!と。

お恥ずかしながら、今となっては詳しい内容はほとんど覚えていないんですが、細かい書類を落とさないように大事に抱えて夜の遊園地内をがむしゃらに歩き回っている私の頭の中には、もうあの世界の登場人物のことしかありませんでした。

歩いて歩いて、解き続けること約1時間。
初めてのリアル脱出ゲーム、挑戦の結果は脱出失敗!(たしか、惜しいところまでもぜんぜん辿り着けてなかったはず)
ヘロヘロになりながらホールに戻り、頭の上にハテナをいっぱい浮かべた状態で謎解きの解説が始まりました。エンディングで徐々に物語の真相が明らかになっていき、もはや「はーっ!」とか「ウワーッ!」とか言うことしかできない私の反応を見て、自分も失敗してるのになぜだか嬉しそうにニヤニヤしている友達。いやぁ、うまいこと 沼にはめてくれたもんです。

きっとあの日もフォトスポット的なものはあっただろうに、私のカメラロールには終演後の記念写真が一枚も残っていません。たぶん、それどころじゃなかったんだと思います。それくらい衝撃的だったんだよなぁ。

もちろん、物語の世界から現実に帰ってきて、「悩み事がキレイさっぱり消えた!」なんてことはまったくありません。リアルな世界での大変な状況は変わらなかったし、その後も苦悩の日々はしばらく続きました。
それでもやっぱり、あの異世界で知らない誰かのために汗だくになって駆け回った60分間は、確実にその後の私の支えになっていました。そして、その冒険の中で手に入れた宝物は今でもずっと、心の奥深くで静かにあたたかく光り続けています。

軽々しく「人生が変わる」なんて言えないですが、やっぱりどう考えてもあの日が私の大きなターニングポイントだったんだと思います。
(そのあと、想いが積もり積もって「ここで働かせてください!」っていうメールを原宿店に送るのはもう少し先のお話……)

時は流れて、ありがたいことに、いま私はリアル脱出ゲームの司会の仕事をさせていただいています。
公演ごとに規模感や世界観、キャラクターは違いますが、ステージに立つ私の根底にある信念はずっと変わりません。あの時の私みたいな人が、もしかしたら会場のどこかにいるかもしれない。日常のどこかで息苦しさを感じているあなたが、そういうのいったんぜんぶ忘れて、ほんの少しの間だけでも 違う世界の違う人になれますように。あの日 私がもらったものを、また別の誰かに届けられますように。
そしてこの気持ちがあたたかいまま ずーっと続いているのは、やっぱりいちばん最初に見たあの景色のおかげなんです。

個人的10周年を迎えたいま、あらためて あのときの世界を作ってくださった方々や 届けてくださったみなさんに、いちファンとして ありがとうを伝えたくて、noteを書いてみました。
今でもずっと大好きなリアル脱出ゲームに、心からの感謝を込めて。

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