御手洗潔シリーズ「占星術殺人事件」感想

今年の秋、思い立ってフェリー旅に出ました。


丸1日の船旅、電波が入ったり入らなかったりするので何かしらの暇つぶしが必要……となり、久々にミステリー小説を読むことにしました。

某動画でおすすめミステリーをいくつかリストアップし本屋へ。
吟味した結果、「占星術殺人事件」と「世界でいちばん透きとおった物語」を購入。
「世界でいちばん透きとおった物語」は薄すぎてフェリー前に読破。
フェリーでは「占星術殺人事件」を読みました。
その感想です。



この小説、1981年発表なんですね。
この作品も御手洗潔シリーズも全然知らなかったのですが、結論として最高でした。
私の求めてるミステリーだった……。

密室で殺された画家が遺した手記には、六人の処女の肉体から完璧な女=アゾートを創る計画が書かれていた。彼の死後、六人の若い女性が行方不明となり肉体の一部を切り取られた姿で日本各地で発見される。事件から四十数年、未だ解かれていない猟奇殺人のトリックとは!? 名探偵・御手洗潔を生んだ衝撃のデビュー作、完全版!


ここからはネタバレ感想です。






冒頭の手記がヤバイ……


え、これ、メモしないと駄目……?まあ、いいか、と思って読み進めたら
御手洗潔が「電話帳を読まされたみたいだ」とうんざりしてたので、「あ、やっぱそういう認識なんだ」と御手洗が一気に好きになった。


凄惨な事件ではあるけど、40年前の事件だし、御手洗と石岡くんの会話はゆるいし、するする読めた。

3つの事件があって、それぞれでは犯人候補がいるけれど……3つ共通の犯人が見つからない。

初期情報では謎が解けない……そんな中で追加情報が与えられ、第2の事件には共犯にされた人物がいることが分かる。
そして第2の事件が第3の事件へつながっていく……。


いや〜〜〜これは上手い。

40年前の事件、日本中が謎解きに躍起になったが解けなかった……。
そんなことある?!と思うけど、追加情報がないと誰だって「犯人は男」だと思うよな〜〜〜。

追加情報がないから日本中の人が謎解きできなかった。
でも、不完全な情報であってもアゾートの謎単体は解けるというのがこの小説の面白いところだと思う。

このアゾートトリックは過去に金田一少年に模倣されていて、私は過去にそれを読んでるはずなんだがまったく思い出さず、御手洗が一万円札詐欺の話をしだしてから思い出しました。あ〜〜〜〜〜!!

島田先生が一万円札詐欺から思いついたトリックだから当たり前だけど、このヒントが本当にフェアだから、挑戦状叩きつけられてもぐうの音もでない。
本当に見事なトリックである。

この小説では「事実を見る」ことの大切さを御手洗が説いていて、手記に惑わされず起こった事実だけを見ていくと犯人が自ずと浮かび上がってくるんですよね。

ここまで鮮やかな完全犯罪を行ったにもかかわらず、犯人が望む結果が得られなかったのがなんとも……。
捕まらなかったけど、罪に値する罰が与えられたなと。

石岡くんの探索パート、まるまる無駄足で不要なんだけど、ここが結構好きだったりする。

恐ろしいアゾートに魅了されてしまった人たち。
カピカピのミイラみたいなのがどこかに存在すると信じて探し続けた人がいっぱいいるんだろうな。

トリック、構成、犯人の悲哀、すべてが完璧な作品だと思いました。
読んで良かった。

ここから御手洗シリーズにハマり、斜め屋敷、異邦の騎士と読んでいくのですが、それらの感想は気が向いたら。


いや〜〜〜、フェリーで読んだので怖さが増大しましたね。
(※フェリー自体は綺麗で広く、とってもいい船旅でした)

いい思い出になりました♪


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