医療維新⑳ 2024.4.6(128)

 「医療維新」には、規制緩和に係る施策がほとんど含まれていないので、追加していくべきだと考えます。

 医療・介護は、とても大きな規制産業ですから、日本医師会等の業界団体が強大な政治力を有しており、なかなか規制緩和が進まない状況にあります。

 例えば、医師を養成する医学部は、新設が30年以上認められず、いわゆる岩盤規制の一つと言われてきました。

 他にも、以下のような規制があります。
・株式会社が医療機関を運営することはできない
・医療法人の理事長や医療機関の管理者は医師のみなれる(理事長は知事の許可があれば医師以外も就任可能)
・混合診療(保険診療と保険外診療の併用)は原則として認められていない
・薬剤師の処方権は認められていない

 規制が緩和すれば、問題が解決するというつもりはありませんが、例えば、医療法人は、非営利原則の下、配当が禁止されています。また、株主からの出資という概念がないため、資金調達の手段が銀行等からの融資に限られてしまうため、財務の安定性確保や戦略的な投資が難しい状況にあります。

 こうした医療経営に係る様々な規制を緩和する事で、経営の合理化を進める事ができる可能性があります。

また、医療・介護分野における人的な生産性の低さは、課題となっています。内閣府のデータによると、2019年の実質労働生産性(1時間あたり)は、全業種5761円に対して、保健衛生・社会事業が3200円となっており、40%以上も乖離しています。経年的にみても、過去30年間で、全産業の実質労働生産性が3割以上成長する中、保健衛生・社会事業はむしろマイナス成長となっているのです。

全産業で人材不足となる中、医療・介護の経済全体に占めるシェアが高まり、生産性の低い医療・介護に人材が集まる事で、全産業の労働生産性が低下することが懸念されます。

 労働生産性を高めるには、既に述べてきた、病院の統廃合といった提供体制の効率化やAI・ICTの活用、他職種へのタスクシフト等が考えられます。規制緩和の観点からは、人員配置規制も生産性向上の足枷になっています。例えば、夜間の病棟において看護師を最低何名配置しなくてはいけないとか、介護施設において入居者に対してケアワーカーを最低何名配置しなくてはいけないとか、様々な細かい規制があります。これでは、配置を減らして、生産性を高める余地がないといえるでしょう。

 医療・介護は労働集約型の産業であるといわれています。例えば、国民医療費に占める人件費の割合は約50%と高くなっています。医療費が45兆円とすれば、医療従事者の人件費は20兆円を超える規模と試算されますが、仮に10%生産性を向上させて、人員配置を10%削減できれば、給与は同じだとすると、約2兆円の医療費抑制効果があるという試算も成り立つのです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?