維新が公約として掲げようとしている0歳児投票権について① 2024.5.18(170)

5月13日、大阪府の吉村洋文知事が、「0歳児選挙権もやったらいいと思う」と話し、話題になっています。0歳児が投票所で候補者の名前を書くのではなく、親が代理となって投票するというものです。

 吉村氏は「世代別人口と投票率の棒グラフ」を引用して「これが日本の人口構成と政治的影響力の現実だ。綺麗事は抜きにして、政治家はどこを向くのか」と投げかけます。続けて「本気で将来世代のことを考えた政治をするか?しているか?今後する見込みはあるか? 社会保障、国の借金、将来世代は明るいか?将来世代に責任を負うのが、今を生きる大人の責任だと思う。0歳児に選挙権を」とつづっています。

吉村知事は、日本維新の会の衆院選マニフェストに組み込みたいとしていますが、背景にあるのが、少子高齢化の中で若い世代の意見を政治に反映させる事で、シルバー民主主義といわれる現状を変えようという考えです。

これに対して、立憲民主党の米山議員は、「このPostこそ欺瞞に満ちてますが、0歳児は選挙権を行使できません。吉村氏が主張しているのは、『0歳児に選挙権を』ではなく『未成年の子供がいる親には複数選挙権を』です。」と投稿しています。

しかし、この提案は、古くから議論されている投票方式であり、米国の人口学者ポール・ドメインが1986年に発表した論文に端を発するいわゆるドメイン投票として知られています。ドメイン投票では、選挙権を与えられていない子の投票権を、選挙権を有する親が子に代わって代理投票する事になります。

現時点でこの投票方式を実際に導入した国はありませんが、欧米を中心に、投票権を割り当てられていない子の権利を擁護するため、日本よりも昔から代理投票制度として真剣に議論されているのです。ちなみに、ドメイン投票の他にも、年齢別選挙区、平均余命投票等、様々な投票方法が提案されています。

2011年に来日したドメイン博士は、日本では有権者比率のために政治家も高齢者にウケのいい政策を優先的に打ち出し、年金等、社会保障制度の抜本的改革が先送りされて、勤労世代の負担増加が続く事で、世代間格差が拡大しているとして、導入を推奨しているのです。

しかし、実際には、親が子供の分を投票するとなると、親が子の嗜好を正しく認識し投票するかは分かりませんし、もし親が間違った政策を支持した事で、子に莫大なツケが残った場合には、子が親の選択ミスの責任を負うことになってしまいます。最も高いハードルは、一人一票の原則に抵触する可能性が高いことでしょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?