男性のヘルスマネジメント 性感染症編② 罹患件数の多い疾患とは 2024.5.26(178)
現在、日本において圧倒的に罹患件数が多い性感染症はクラミジアです。
これは、クラミジア・トラコマチスという菌に感染して起こる病気で、1~2週間の潜伏期間の後、排尿時の痛み、かゆみ、頻尿、尿道からの分泌物等の症状があらわれます。
比較的、予後はよいものの、5%くらいの患者さんは悪化して副睾丸炎(精巣上体炎)を発症し、睾丸に強い痛みや腫れ、発熱等を起こし、場合によっては不妊の原因につながるという指摘もあります。
厚生労働省が公表した医療機関の定点調査によれば、2019年のクラミジア患者数は2万7千件超。女性患者さんのおよそ80%、男性患者さんのおよそ50%が無症状である事を考慮すれば、事実上の感染者数はこの数十倍、100万人程度であると見込まれます。
実際に妊婦検診で必ず行われるクラミジア検査では、3~5%の妊婦さんに感染が発覚しています。罹患数が非常に多いという点で、注意が必要な性感染症といえるでしょう。
性感染症におけるもうひとつのトピックスは「梅毒の流行」です。
これは梅毒トレポネーマという菌の感染症で、3週間から3カ月の潜伏期間の後に、特徴的な症状として、性器や全身に蕁麻疹のような赤い斑点が出てきます。これはいったん自然消失しますが、菌が体内で増殖を続けてしまうため、放置すると数年から十数年をかけて、脳の障害、手足の麻痺、失明等、重篤な状態に進行していくのです。
梅毒の患者数は、厚生労働省によると2019年時点で、約6600人となっています。前述のクラミジアと比べれば少ないものの、2009年からの10年で、約10倍に増えているのです。
激増した原因は不明ですが、「外国人が国内に多く流入した事が一因だ」「性風俗従事者に外国人女性が増えたことが影響しているのではないか」等の説が広まっていますが、それを裏づけるような確たるエビデンスは今のところ存在していません。
微かに減少傾向にあるものの、母数である若年層の人口減少を考慮すると、感染者割合が明らかに下がっているとは言い難く、安心できる状況ではありません。やはり注意を要する病気のひとつといえるでしょう。
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