誤解される経済現象④ 金融緩和の是非 2024.5.8(160)

4回目の今回は、金融緩和の是非です。

 日本の債務残高のGDP比は、G7中で突出して高い状況が続いています。日本政府は、2013年4月から、「量的・質的金融緩和」という超金融緩和政策を10年間も続けて、満期が3年以下の国債の金利はマイナスという状況にもかかわらず、日銀が目標とする2%の物価安定を達成できていません。

 このような状況に対する様々な主張があります。具体的には、超金融緩和は短期であればよいが長期になると副作用が累積する、日銀はやがて債務超過に陥りハイパーインフレになる、日銀が国債を買い続けているため財政規律が緩んでいる、もうすぐ財政破綻し金利が暴騰しとめどない円安になる、将来世代に借金のツケを押し付けている等です。

 いずれも根拠のない主張です。実際、超金融緩和を10年間も続けているにもかかわらず、そのような兆候は見られません。

 例えば、「超金融緩和は短期であればよいが長期になると副作用が累積する」と主張する学者の中には、消費税増税の影響を考慮していない人がいるようです。

 「日本は、国債の負担を将来世代に先送りしている」という主張が誤っているというのはびっくりされる方も多いと思います。私もそのように考えていました。

 「経済学の道しるべ」(岩田規久男)では、国債をどの世代が負担するかは、国債発行の結果、どの世代の効用が低下するかで判断すべき問題だと解説しています。

 それでは、どのような場合、国債負担が将来世代に付け回しされるのでしょうか。それは、財政支出を一定として、税を国債発行で置き換えたときに、国債の予想実質金利が上昇する場合だそうです。予想実質金利とは、名目金利から人々の予想インフレ率を引いた値です。量的・質的金融緩和で予想実質金利は低下傾向にあります。これは、投資との対比で貯蓄が旺盛だからです。

 国債の将来世代負担はいつ始まるのでしょうか。そのタイミングは、完全雇用に近くなり、日銀の2%のインフレ目標が安定的に達成されるようになってからです。この時は、量的・質的金融緩和からの出口が開始され、予想実質金利の上昇が始まると考えられるからです。

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