誤解される経済現象② 新自由主義とは何か 2024.5.6(158)

2回目の今回は、新自由主義です。

 「新自由主義が日本経済を破壊した」と主張する人がいまだに後を絶ちません。

 ところが、「新自由主義が日本経済を破壊した」という人は、新自由主義とは何かを定義せずに、反新自由主義を唱えています。

 新自由主義を明確に定義したのはミルトン・フリードマンです。フリードマンが定義した新自由主義は、19世紀の自由主義と区別する必要性を感じていたからです。例えば、企業活動の自由は重要ですが、その自由は競争の果てに、寡占や独占をもたらしてしまいました。寡占や独占は自由競争を阻害し、供給を制限し、価格を釣り上げる事によって、消費者から搾取します。それは、消費者が消費から得られる効用を低下させる事を意味しています。

 同様な事は、貧困についてもいえます。自由な競争は、たまたま「人生の宝くじに外れを引いた」人達を貧困にし、そこから脱出する事を困難にします。したがって、貧しい人にはその人の職業や年齢等の属性に関わらず、人道的な立場から補助金を支給する事が必要であるとフリードマンは考えるのです。この考えは、「負の所得税」というアイディアを生み出し、現在では、ベーシック・インカムとか給付付き税額控除と呼ばれています。

 即ち、新自由主義者は、「政府が一切、市場の取引に介入しない」という意味での「市場原理主義者」ではありません。

 どういう人が新自由主義に反対するのでしょうか。資本主義を否定するマルクス主義者、新自由主義を「弱肉強食の競争社会を良しとする考えだ」と誤解する人、若い時にマルクス主義に触れて多少なりとも親近感を覚えた人、自民党が嫌いな人、電力といったインフラの民営化は新自由主義に基づくもので民営化に反対の人、新自由主義になると損失を被る人等、様々です。

 反新自由主義に基づく規制や税制優遇措置は、既得権益を守る事によって、格差の拡大と生産性の低下の要因になる事が明らかになっています。重要なのは、競争による淘汰を受け入れ、福沢諭吉が言ったように「官私を問わず、先ず自己の独立を謀り、余力あらば他人の独立を助け成すべし」という事でしょう。

 ところで、「アベノミクスのような新自由主義は、株価を引き上げただけで、格差を拡大させた」と主張する人も少なくありません。本当のところ、どうなのでしょうか。

 所得の不平等の程度を測る指標にジニ係数があります。ジニ係数は、0~1の数値をとり、0に近づくほど所得格差は小さく、1に近づくほど所得格差は大きくなります。再分配所得(所得再分配後の所得)のジニ係数は、アベノミクス前後で、わずかですが低下しており、所得格差は縮小しているのです。同様に、相対的貧困率は低下しています。

 新自由主義に対する誤解は、マスコミの報道姿勢もあってか、広がっているように感じています。日本維新の会は新自由主義だといわれますが、その内容やメリットについて、説明していく必要があるでしょう。


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