医療維新⑮ 2024.3.30(121)
2017年に⾏われた「患者の残薬の経験」に関する厚⽣労働省の調査では、定期受診し処⽅されている薬がある患者の内、4割程度の患者が過去1年間に残薬の発⽣を経験していることが分かりました。
また、多剤投与の実態として、⾼齢になるほど薬剤数の多い患者の割合が増加する傾向があり、75歳以上の院外処⽅を受ける患者の約4分の1で7種類以上の薬剤を処⽅されていました。このような⾼齢者に着⽬して、65歳以上で、5種類以上服薬している患者が、1種類減薬した場合の医療費の適正効果は、年間5730億円と推計されています。
多剤投与に関する新たな基準・ガイドラインを設けるとともに、電⼦処⽅箋の導⼊やマイナンバーカードによる処方情報の医療従事者間の共有によって、意図せずして多剤処⽅が増えてしまう現状が改善されることが期待されています。同時に、薬剤数を減らす事に金銭的なインセンティブが発生するような診療報酬の設計も有効でしょう。
五つ目は、湿布薬や花粉症治療薬といった、薬局で購入が可能ないわゆる一般用医薬品については、医療保険適用外としていく事です。
政府は経済的な観点から⼀般⽤医薬品によるセルフメディケーションを促進しています。学者からも、価値の低い医療を保険給付の対象外とする事が提案されています。同提案では、エビデンスに乏しく費⽤対効果の低い医療に関して、医療の選択肢を確保するため承認は維持しつつも保険給付の対象外とする事、同時に、健康作りへの給付として、エビデンスが認められた健康作り活動を給付対象とすることが提案されています。
厚⽣労働省は、一般用医薬品への置き換えによって、計3210億円の医療費削減効果が⾒込まれるとしています。
⼀⽅、一般用医薬品で済む医薬品を処⽅してほしいと考える消費者側の意識についても議論がなされるべきでしょう。よく槍玉にあげられるのが湿布薬です。エビデンスがないと言われているにもかかわらず、公的医療保険において、回数・⽇数制限がないものであると指摘されています。
このように、現在提供されている医療サービスの中で、エビデンスが⼗分でないものや、⾮効率なものを制限する事で、医療費削減に寄与すると考えられるが、⾮効率な診療⾏為と効果的な診療⾏為の線引きは難しいものも多いでしょう。
診療⾏為別に、治療の成果をデータで明らかにする事も考えられます。データの収集と利活⽤に向けたシステムの構築が期待されています。
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