男性のヘルスマネジメント 性感染症編⑥ 「かかったかも?」という局面での手順をおさえておこう 2024.5.30(182)

注意しておきたいのは、感染から一定期間を過ぎると、表面的な症状が消え、知らぬ間に進行していく病気です。

近年、患者数が激増している梅毒は、感染後に性器や肛門周辺に無痛性のしこりや潰瘍ができます。しかし、これらはいったん消失するので、ついホッとして受診をやめてしまうのです。ところがそのまま治療しないでいると体内で菌が増殖を続け、数年から十数年という長い経過をたどり、最終段階で脳の障害、手足の麻痺、失明等、重篤な状態に陥るのです。

現在、性感染症の治療法は確立されていて、早期に治療を始めれば、スムーズに解決する事が多いのが実情です。「忙しい」「恥ずかしい」等、気が進まないことは理解できるけれど、治療において「最少の時間・労力」で「最大の成果」を出す秘訣は、早期の受診をおいて、他にないでしょう。

 性感染症の治療を受ける場合に選択する診療科は、男性であれば泌尿器科、女性であれば産婦人科が一般的です。診療科目の名称としては、他に、性病科や感染症科を標榜しているクリニックもあります。

 ただし診療内容、特に、検査に関する方針はクリニックによります。できれば必要充分な検査をおこなってもらえるところを選びたいものです。少し実情をお伝えしましょう。

性行為によって尿道炎になった患者さんのおよそ3割は、非クラミジア・非淋菌性感染症です。聞きなれないと思いますが、主に、マイコプラズマ、ウレアプラズマの感染症です。ところが、これらの検査は国民健康保険がきかないため、ほとんどのクリニックでは通常、行われません。「患者さんの金銭的な負担を軽くしよう」という意図によるものだと思われますが、これが問題を引き起こすことがあるのです。

具体例を挙げると、検査によって淋菌感染症だとわかった場合、当然その治療しか行われませんが、実は非クラミジア・非淋菌感染症にもかかっているケースが少なくないのです。そちらの検査や治療は受けていないので、患者さんは完治しないケースがあります。

こういった場面で、治療の効果をみるための治療後検査がきちんと行われれば、医師は「症状が残っているのはおかしい」「非クラミジア非淋菌性感染症の検査をしよう」という流れになり、適切な治療がおこなわれます。

しかし、治療後検査を実施しないクリニックも多く、また、行われていても通院をやめてしまう患者さんが多いため、治らないままの患者さんが出てしまうことになるのです。
 
 この例に限らず、性感染症には複合感染が非常に多く存在します。そのため、受診前に各クリニックのホームページを見て、必要充分な検査をおこなってくれるかどうか確認した上で選ぶ事が理想的です。

患者さんのほうでも、検査については「医師が必要な項目を選んでくれるだろう」という姿勢が一般的だと思います。しかし、あまり検査に積極的でない医師もいますから、可能であれば、自分から検査の追加を提案する事も検討してみましょう。

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