男性のヘルスマネジメント 性感染症編⑤ 性感染症は自然に治る病気ではない 2024.5.29(181)

「かかったかもしれない」、そう気づいてから、どれだけ迅速かつ、適切なアクションをとることができるか――、それが病気の予後をはじめ、ダメージの大きさを左右します。

多くの人はインターネット等を通じて、本当に感染したのか、どのような病気なのかを、自分で調べる事でしょう。その際に、「決して自己判断をしない」事も重要です。

性感染症は、風邪のように、「放っておいても治る病気」ではありません。最初は軽微な症状で始まり、それがいったん治まったり、特に悪くなる様子がみられかったりして、長い時間をかけてゆっくり進行していく病気があります。

感染の可能性が考えられる場合、最善のアクションは「医療機関の受診」、「早期の検査」でしょう。せっかく感染のサインに気づいても、検査・治療のタイミングを、自ら遠ざけてしまっては意味がありません。

年中多忙なビジネスパーソンは、症状が軽いとつい受診を先延ばしにしがちです。しかし放置していると、ある日、急激に悪化することがあります。

最もポピュラーなクラミジア感染症では、初期症状は尿道のかゆみ等軽い場合が多いのですが、炎症が精巣上体まで広がると、突然激しい痛みに襲われ、歩行困難になって仕事や日常生活に多大な影響が及ぶケースがあります。更に精巣上体炎が無精子症を引き起こし、男性不妊症になる事もあるのです。

意外と知られていませんが、カップルで不妊治療を受ける患者さんのうち、男性に原因があるケースは40~50%と半数、この数字は、性感染症を軽視した結果である事が少なくありません。

治療を遅らせると、「重症化して症状が激烈になる」「ほかの器官・臓器に炎症など病
状が広がる」「男性不妊などの後遺症が生じる」「治癒困難になる」「パートナーや家族
にうつしてしまう」「ほかの性感染症にかかりやすくなる」など、ひとつもメリットはな
い。仕事と同じで、問題を先延ばしにするとダメージは拡大する一方だ。

性感染症を放置した場合のデメリットの中で心に留めておきたいのは、他の性感染症にかかるリスクが跳ね上がる点です。

一例を挙げると、クラミジア感染症になると淋菌感染症をはじめ、梅毒、HIVにかかりやすくなることがわかっています。実際に、淋菌感染症の患者さんの検査を行うと、およそ3割はクラミジア感染症にもかかっているのです。同様に、HIVの場合、感染率は通常の3〜4倍にまで膨れ上がるので注意が必要です。

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