男性のヘルスマネジメント 性感染症編⑯ 病気の特徴を詳しく知って受診・治療の参考に!④ 2024.6.9(192)

【尖圭コンジローマ】
ヒトパピローマウィルス(HPV)が、性器の粘膜や皮膚の小さな傷口から侵入して感染する。180種類以上あるHPVのうち、ローリスク型の感染によるもの。ハイリスク型のHPVは、子宮頸がん、咽頭がん、陰茎がん、膣がん、肛門がん、外陰がんの発症に強く関連している。HPVは、性交経験がある人のすべてが人生で一度は感染するともいわれている。
〔おもな症状〕性器や肛門、その周囲に、大きさが1~3ミリほどの先が尖っているイボができ、ニワトリのトサカ状、あるいはカリフラワー状に増殖していく。多くの場合、痛みやかゆみはほとんどない。また感染していても無症状のケースがある。
〔感染経路〕セックス、オーラルセックス、アナルセックスなど性行為全般による粘膜、皮膚接触。
〔潜伏期間〕3週間~8か月
〔検査可能な時期〕疑いのある接触から3日以上経過していれば検査可能
〔検査と治療〕綿棒で患部をこすり、ウイルス検査を実施。結果は1週間ほどで判明する。またHIVに感染しているとHPV関連のがんを発症しやすいので、HIVを含むほかの性行為感染症の検査も勧められる。治療はウイルスの活動を抑制する外用薬、液体窒素によるイボの凍結排除、電気・レーザーメスによる焼灼など。また再発率が高く、治療終了後3か月以内に25%が再発。最低3~6か月は観察が必要になる。
〔放置した場合〕感染者の約90%は、2年以内に自然にウイルスが排除されるというデータもあるが、悪化してイボが尿道や肛門に広がってしまうと治療が難しくなる。また妊娠中の女性にうつすと子どもが産道感染するリスクがある。感染した場合は早期の治療を心がけるとともに、男女ともに適切な時期に有効なワクチンを接種して予防することが望まれる。

【梅毒】
トレポネーマパリダムという菌に感染して発症する、非常に感染力が強い疾患。全身に菌が広がるため症状は多彩だが、性器や全身にみられる赤い斑点が特徴的。一度症状が消失した後にも体内で増殖を続けるため、治療をおこなわないと長い経過をたどって重篤な状態になる。近年急増しているため注意が必要。
〔おもな症状〕第1期では性器や肛門、その周辺にできる無痛性のしこり、潰瘍、リンパ節の腫れなど。これらが消失した後、第2期では典型的な症状として手のひらや足の裏をはじめ全身に、左右対称で境界明瞭な赤い皮疹が出る。ほかに口腔内の炎症、脱毛、また約10%の患者には性器や肛門に扁平コンジローマという病変ができる。さらに晩期になると皮膚、筋肉、骨をはじめさまざまな臓器にゴムのような腫瘍ができ、最後は心臓・血管、脳・神経などあらゆる臓器が侵される。
〔感染経路〕セックス、オーラルセックス、アナルセックスなど性行為全般による粘膜、皮膚接触をはじめ、口唇や口腔内、陰部に活動性の病変がある場合は、キスや触れるだけでも感染する可能性がある。
〔潜伏期間〕第1期発症までは平均3週間。比較的ゆるやかに発症する。
〔検査可能な時期〕迅速検査の場合、疑われる接触から3か月以上経過していれば検査可能。精密検査の場合は6週間以上。
〔検査と治療〕検査は血液を採取しておこなう血清検査。迅速検査は15分程度、精密検査は3日程度で結果が判明する。またHIVを含むほかの性感染症と重複感染している可能性があるので、それらの検査も必要になる。治療は抗生物質の内服。
〔放置した場合〕自然治癒はしない。症状が出たり消えたりしながら進行し、入院治療が必要になる。また数年から十数年で脳の障害、手足の麻痺、失明など重篤な状態に陥る可能性があるので早期の治療が重要。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?