維新が公約として掲げようとしている0歳児投票権について③ 2024.5.20(172)

2013年3月に東京地方裁判所で言い渡された判決では女性の訴えを認め、後見人がつくと一律に選挙権を失うこれまでの法律が憲法に違反すると初めて指摘しました。この判決を受けて、その年の5月に法律(公職選挙法)が改正されて、後見人がついている人も投票できるようになったのです。

 判断能力が十分ではない人達が投票する事によるデメリットはないのでしょうか。

 実際のところ、投票現場の運用は困難を極めているという声もあります。投票用紙に自ら記入できない場合は、記載台で職員が補助する事になりますが、声に出したり、氏名を指し示したりすることで、投票意思を明確に示してもらわなくてはいけません。

 あらかじめ家族が投票したい候補者の名前をすり込む等、第三者の意思が介在している恐れもあると指摘する声もあります。高齢者施設での不在者投票では、職員が入居者の投票用紙に勝手に候補者名を記入する公選法違反事件が頻発しています。

 法改正により、成年被後見人である認知症患者も投票できる制度はできましたが、投票所まで来ても投票できない場合、どうやって意思表示をしてもらい、どこまで手伝うかという実務が決まっていない事が課題となっています。このような事が起こるくらいならば、元に戻すべきではないかと感じてしまいます。ルールを決めて欲しいという声は投票所の職員からも聞かれますが、ルールを細かく決めたところで、自分の意志表示能力のできない人に投票を求めるのは難しいと感じます。

認知症患者や知的障害者は、判断能力が十分ではない人であっても、投票権があるのに、子供は判断能力がないから投票権がないと決めつけるのはおかしいのではないでしょうか。

子供といっても、確かに乳幼児は厳しいかもしれませんが、小学生以上であれば、一定の判断能力はあると思いますし、生徒会選挙も行われていますから、校内で選挙権を行使した事がある子供も少なくないでしょう。子供のほうが、成長とともに判断能力が養われますし、選挙権を持たせる事で、民主主義に関心を持ってもらうといった効果もあるでしょう。正直、家族の名前さえも忘れてしまうような認知症の患者に比べれば、十分な判断能力を持っていると思います。

 このような観点からも、何歳まで認めるかといった議論はあろうかと思いますが、子供の選挙権を認めるという事については、引き続き、議論を深めていきたいと思います。

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