維新が公約として掲げようとしている0歳児投票権について② 2024.5.19(171)

ドメイン投票を導入するメリットを考えるうえでの前提は、「若者は、将来世代のための政策に投票するはずだ」「老人達は、自分達の世代のための政策に投票するはずだ」「老人の投票権数を子持ちの親世代の投票権数が上回るはずだ」といったところですが、現実には、真逆の現象が発生しているのです。

 研究によって、将来世代に譲歩的な投票から、自分世代の政策に転向してしまう事、老人達は短期的なメリットだけを考えて投票するわけではない事が確認されています。加えて、人口比率を考えると、子持ちの親が子の投票権を得ても老人の数には届かず、最終的な選挙結果に影響を及ぼさない事が証明されているのです。これは、制度を推進したい人達からは不都合な真実といえるでしょう。

そもそも、投票権は基本的人権の一つですから、0歳児であっても投票権は基本的人権として設定されているはずなのですが、判断力等の関係で権利を行使できないよう制限していると解釈できます。そんな基本的人権を親とはいえ他者に代理で行使させる事の是非は議論が必要でしょう。

しかし、子供は判断力がないから投票権が行使できないという事が成り立つのであれば、認知症患者や知的障害者の投票権はどうなっているのでしょうか。

 2013年まで日本では、認知症や障害等を理由に判断能力が十分でない人に代わって、親族や弁護士等が後見人として財産を管理する成年後見制度があり、後見人がついた人は選挙権を失っていました。

これについて、裁判所から憲法違反とする判決が出されたことで公職選挙法が改正され、成年後見制度に伴う被後見人が選挙権を取り戻したのです。

訴えたのは、ダウン症で知的障害のある女性です。身の回りの事も自分でできて、1人で仕事にも行っていましたが、お金の計算が苦手なため、将来、お金をだまし取られることがないようにと、父親と妹の2人が後見人となりました。

女性はそれまでは欠かさず選挙に行っていたものの、後見人がついた事で、選挙権を失いました。

 2013年3月に東京地方裁判所で言い渡された判決では女性の訴えを認め、後見人がつくと一律に選挙権を失うこれまでの法律が憲法に違反すると初めて指摘しました。

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