みんな「かぐや姫」だった、という話

最近知人が亡くなったんだよね。
うんと年上の人が亡くなるのは慣れてきたけど、まだアラフォーの私にとって同世代の訃報は慣れてなくてさ。みんなそうかもしれないけど。

結構動揺して、動揺したままぼんやりとお風呂に入っていたら「今まで知識として知っていたけど、全然よくわかっていないこと」が急にピーンってなったの。
ピーンとなって、頭の中ぐるぐるしていたものがお腹の中にすっと落ちてったのよ。
これぞまさに腑に落ちるってやつだって、なんか妙に冷静に分析したりしちゃったりして。
うまく説明できないけど、急に心の底から「あ、そういうことだったのか。人間ってみんなかぐや姫なんだ」てなったんだよね。
意味わからんよね、私もよくわからん。でもそのわからん感じを聞いてくれん?

みんな宇宙から地球に降りてきた説

かぐや姫の物語って覚えてる?高畑監督の遺作で、確か2013年とかの映画だった気がするけど、あれ私めっちゃ好きだったんだよね。
絵もいいし、もちろんストーリーもいいし、最後大泣きしたのよく覚えてるんだけど、一個腑に落ちないところがあってさ。サブタイトルが「姫が犯した罪と罰」なのよ。

え、姫って何の罪犯したん?罰って何?て感じなかった?
わざわざこれをサブタイトルに持ってくるまでの強い主張があるにもかかわらずほとんど説明されてないことに対してひっかかっててさ。
疑問に感じつつ、でも疑問は疑問のまま、ずーっと私の頭の中に疑問が残り続けて早10年。
急にシャワー浴びてたら「はッ!姫の犯した罪と罰!!!!!!!!!!」
てなったのよ。すんげーネガティブケイパビリティだと思わん?

もう考察サイトとかで散々いろんな人がいろんなこと言ってるから「何をいまさら」とか言わんといてよ。
だって。私の目で見て、私の経験と私の身体を通って出てきた言葉なんだから。わかってくれなくていいの、聞いてほしいだけだから。そこんとこヨロ。

で本題ね。
姫の犯した罪っていうのは「人間っていいなぁ」「地球行きたいなぁ」って思ったことだとおもうの。

月の世界は感情とかないわけ。というかめっちゃ満たされてて、乱れないわけ感情が。
お迎えに来た時、小さい人たちがめっちゃピーヒャラピーヒャラ笛吹いて太鼓叩きながら牧歌的な雰囲気でお迎え来たじゃん。
多分月ってあーいうところだと思うんだよね。
ずっと牧歌的。ずっとぴーひゃら。
でもさ、姫は「なんか地球行ってみたいんだけど!楽しそうじゃね?一回行ってもここ戻ってきたら地球の記憶消えるっぽいし、地球で遊びたいんだけどマジでー!」
て多分騒ぎ立てて、多分月の他の人たちに「危険だってー、やめなよぉ」とか「下手したら帰ってこれないかもしれないじゃん」とか引き止められて、でもずっとわがまま言うから「そんなら行けや!おらッ!!!」
ってお父さんとかに怒られて竹に入れられちゃったんだよ。
んでそっからはあのお話し通りね。
老夫婦に育てられて、田舎ですくすく育つ。
好きな男の子もできる。みんなやさしい。自然は美しく、かぐや姫だけじゃなくてそこにいる人たちはみんな植物みたいな時間で、自然の一部として生きる。
でもお金や着物がじゃんじゃん届いちゃって、じぃさまはこりゃ高貴な人に違いねってなって成り上がり貴族になる。
ここから姫は苦労する。貴族しんどい。美しい着物も、きれいな建物も、結局全然美しくない。
あご長の帝に触れられて、怒りのデスロード。
「もう嫌、月に帰りたいんですけど」ってなって最後は好きな人とちょっとランデブーして、じぃさまばぁ様と離れたくなくて大泣きして、でも記憶なくして帰るんだよねたしか。うろ覚えだけど。

姫はなんの罰を受けたのか。
一言でいえば地球に降ろされること、なんだけどつまりそれって、「あらゆる感情を経験すること」だと思ったんだよね。
優しい人に触れる。大笑いする。自分と自然の境目がない生活、つまり幼少期は完全にご褒美タイム。だけどこれも感情だよね。
貴族になり、社会のルールを覚え、結婚を迫られる成人期は感情振り乱れまくりなわけじゃん。
つらい、いやっていわないし、めっちゃ楽しくても大きな声で笑ったりもしないの。
嫌、楽しい、と思うことを我慢する。
まぁ現代の大人も多かれ少なかれ感情我慢するよね。ルールを知っちゃうと我慢を覚えるんだなぁ。
桜を見ながら笑った後、ぶつかって平民に謝られるでしょ。それでもう悲しくなっちゃうんだよね。あー、私感情出しただけでこうやって他人傷つけちゃうんだって。
傷つけられる側だった姫は傷つけることも知っちゃった瞬間。

んで最後別れるときは嫌だって大泣きするでしょ。
帰りたいと願ったのは姫なのに。
常に拮抗する感情に最後まで姫は揺さぶられまくって、衣をかけられたらあの無表情ですよ。忘れちゃう、いいことも悪いことも全部忘れちゃう。

本題はここからなんだけど、人間ってみんなかぐや姫と同じルートで地球にやってきて、あらゆる感情を体験して、体験しつくしたら月に帰るんだって腑に落ちたの。

うちら多分めっちゃ満たされた場所にいるのよ生まれてくる前。
ずっとぴーひゃらしてるとこね。
で、「うわー、あの感情味わいたい~」って切望して地球にぽーんときて人間として生まれて人生をスタートさせる。

こうやって書くとさ

「今苦しい思いをしている人がそれを望んでいると言いたいのですか?つまりあなたは自己責任論者のスピってるくそおばさんなんですね。」
とか
「幼くして虐待を受けて亡くなった子供をどう思うのですか?無責任なこと言わないでください。」
とかいう人いるけど、ちょっとごめんその話一回横に置いておいていい?
苦しい人は苦しまないようになってほしいし、虐待なんて世界からなくなってほしいと思ってるんだけど、ピンときた話だけ今させてくれ!

んで、喜怒哀楽味わい尽くして、傷つけ傷つけられ、悟った人はもうそれで人間おしまい。
十分に自分を生き、さらに他人を助けて、それで終わると思うの。
解脱ってやつでしょうか。
まだまだやりたいことがあれば月に戻って、また形を変えて地球に戻ってきちゃうんだって感じたの。
つまりは輪廻転生。

みんな同じところからやってきて、別々の人生を歩んで、そして同じところに帰っていくんだってことをシャワー浴びながら腑に落ちたんだよね。

最後にもう一個言いたいのがさ、あの映画全部素敵だったでしょ。
うれしい時も楽しい時も、結局全部愛があふれた映画だったと感じたんだけど、「あー人生も一緒だ」って思ったの。
最高の瞬間も、くそみたいな瞬間も、ちょっと過酷だと思える時も、全部全部愛おしい。確かにこれは罪で罰かもしれないけど、でも、これらはすべて美しいことだって。高畑監督はそんなことを伝えたかったのかなー
なんて思いましたとさ。

いやー、最後まで聞いてくれてありがとう。
ずいぶんとすっきりしたよ。
また今度なんか重いついたらしゃべっていい?
お茶でも飲みながらさ。






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?